2012/09/25(火)スタジオ写真のデータ転送

 写真スタジオでの撮影では、撮ったその場でパソコンにデータを保存する方法がよく使われます。古くは IEEE1394 での接続も見受けられましたが、最近では USB や無線 LAN が主流のようです。カット数の多い商品撮影は、パソコンのハードディスクに直接保存するのが便利です。

 「酸化セリウム」の先生が試験的に S2pro を導入したときは、IEEE1394 でノートパソコンとつなぐ方式を採用しました。というか、これしか実用的な方法がなかったように記憶しています。ケーブル長の制限など、LAN ケーブルでつなぐのとは勝手が違う問題もありました。
 実際に S2pro でコマーシャルフォトを撮ることは、ほとんどなかったようです。それでもこれがきっかけで、先生はコマーシャルフォトから足を洗うことになります。「我々の時代は終わった」というのが、先生が出した結論でした。

 あの程度の画質では、まだ銀塩式の中判・大判に対抗できないのは自明でしたが、来たるべき時代の臭いを嗅ぎ取ったんでしょうね。カメラマンの地位が凋落し、画像処理を担当するオペレーターが写真全般の仕事をこなすようになると予言していました。見事にアタリです。
 先生の信条は、後処理や加工が要らないレベルまで、撮影段階で追い込むことです。「すべての問題を解決してからシャッターを押す」というのが口癖でした。デジタル化で、写真家の腕の見せ所が少なくなりました。

 撮影時にパソコンにデータを取込むのはいいとして、それをどう扱うかで戸惑いを感じたようです。フィルムの扱いかたには慣れていましたが、デジタル画像データのほうは、一から覚えないといけません。事務所に MAC を入れて勉強を始めたものの、アナログ人間にはハードルが高かったようです。
 出入りしていた印刷屋の若いオペレーターは、いとも簡単に MAC を使いこなしていました。それを見て嫌になったんでしょうね。

 写真撮影の基本ができていない者が画像をいじることに、かなりの抵抗感があったみたいです。パソコンでセレクトしたデータをコピーして、印刷屋のオペレーターに渡したらそれで終わりでは、写真家の存在価値がないとボヤいていました。
 撮影した画像がパソコンに自動的に転送されるようになった時点で、先生の心の中に、自分の時代が終わる予感が芽生えたのではないかと推察します。
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