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2012年08月30日の記事

2012/08/30(木)大口径レンズの収差

 焦点距離 50mm 前後の単焦点レンズが、標準レンズとして一眼レフにセット化されていた時代から、開放 F 値の小さい明るいレンズが重用されてきました。F1.8 や F2 よりも F1.4 のほうが、高級でよいレンズという捉え方です。
 F1.7~F2 クラスが2万円とすると、F1.4 は3万円くらいしていました。値段でいうと確かに「高級」ですが、写りがよいかというとちょっと疑問でした。明るいレンズほど収差が大きく、補正するのにコストが掛かります。絞り開放での描写は、一般的に暗いレンズのほうが優秀でした。

 中学生のころは、星の写真をよく撮りました。三脚に固定して長時間露光します。長時間といっても日周運動で星が流れないようにするから、30 秒以内の露光です。
 先輩の勧めで PENTAX SP の 50mm F1.4 付を買ったのですが、これは失敗でした。絞り開放で撮ると、画面の周辺部では明るい星が点になりません。鳥が飛んでるような形に写ります。非点収差やコマ収差の影響です。

 55mm F1.8 にしておけばよかったですね。少しでも明るいほうがいいかと、無理して F1.4 にしたのがアダでした。先輩は星の写真など撮ったことがないから、レンズの収差がこれほど影響するのを知らなかったみたいです。
 風景など普通の被写体を撮るぶんには、全く問題のないレンズです。ファインダーは明るく見えるし、暗いところでは少しでも明るいレンズが有利でした。

 1絞り絞って F2 にすると改善されますが、まだ収差が目立ちます。F4 まで絞ると、ようやく使えるレベルになりました。ただし、三脚固定では暗い星まで写りません。そこで赤道儀式の望遠鏡に載せて、ガイド撮影することにしました。

 アイピースに十字線を張り、星を少しぼかして十字線から外れないように微動装置を動かします。開放から3段絞っているので、息をこらして 10 分以上ガイドします。当時は自動追尾するモータードライブのことを「運転時計」と呼んでいましたが、中学生ごときが買える代物ではなかったと記憶しています。

 天文班の連中は固定式で撮っていたので、ガイド撮影した写真を見てビックリしていました。目に見えない暗い星まで鮮明に写っていたからです。絞らないと使い物にならないレンズだったのが怪我の功名で、ガイド撮影のテクニックが身につきました。そういう意味では F1.4 にして正解だったかもしれません。
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