2012/08/25(土)パノラマ写真とレンズの収差

 デジタル画像処理でパノラマ合成が簡単になったとはいえ、つなぎ目が自然で違和感のない写真にするにはコツが要ります。パノラマだから超広角レンズというのは、安易な発想です。確かに超広角のほうが広い範囲を少ないコマ数でカバーできますが、レンズの収差が大きいのと、パースペクティブの問題があって、つなぎめが不自然になりがちです。

 一般的に超広角レンズは、周辺光量が不足ぎみで、樽型の歪曲収差があります。縁にいくほど物の形が引っ張られて長くなったり歪んだりします。集合写真を撮るときは、画面の縁に人を立たせないように、山型か台形に配置するのがセオリーです。結婚式場の写真室で撮った集合写真は、必ずそうなっているはずです。写真室は狭くて引きがないからね。
 つまり、せっかく広い画角を持ちながら、周辺部は使えないことになります。パノラマ合成写真には、収差の少ない標準レンズのほうが向いています。天地の写角が足りないときは、縦位置にします。コマ数が増えますが、収差の影響が少ない長辺側でつなぐので、仕上がりはいいはずです。

 カメラを縦か横に振ると、自動的にパノラマ合成する機能があります。「スイングパノラマ」は、ソニー独自の呼称です。スイングする間に百ショット以上撮影して、カメラ内部で自動的に合成するというスグレモノで、画のつながりが自然なのが特徴です。
 一種のスリットカメラみたいなものだと思います。動くものには向かない方式ですが、最近の機種ではかなり自然な描写が得られるようになりました。合成する枚数が増えたからですかね。

 初期のモデルは、左右のワイドサイズで最大 256°までだそうです。それでも魚眼レンズよりも幅の広い範囲が写せます。今年になって 360°をグルリ撮影できる機種が登場しました。大きなプリントにしないなら、パノラマ専用のスリットカメラの出番はなさそうです。
 テレビやモニターで観賞できるよう、画質はハイビジョンを基準にしています。全体表示のほかに撮影方向にスクロールして見ることもできます。ハイビジョンの動画を1枚の静止画に合成したと思えばいいでしょう。動画機能は要らないという人でも、その恩恵は受けているわけです。

2012/08/24(金)本物のパノラマ写真

 フィルム式の一眼レフには、パノラマサイズの切り替えがついた機種があります。さすがにフラッグシップ機にはついていませんでしたが、中級機にはありました。パノラマモードにすると、フィルム面の上下に遮光板が入り、ファインダーに表示が出ます。

 個人的には、パノラマモードは使ったことがほとんどありませんでした。わざわざ遮光しなくても、中央部分だけトリミングすれば済む話です。行きつけの写真屋さんで、「このコマをパノラマで」と言えば、そのようにプリントしてくれます。パノラマ画面で撮っておけば、L 判で同時プリントするときに自動判断でパスされるだけのことです。

 トリミングが中央基準だけでなくて、上下にシフトできるといいのですが、プリンターの機構上、そういうわけにはいかないようです。パノラマでプリントするつもりだと、そのような構図で撮るから、L 判のプリントはたいてい無駄になります。同プリの L 判を自動的にパスする仕組みは、全く無意味というわけではないかもしれません。

 レンズをスイングさせて広い範囲を撮影するパノラマ専用機がありました。カメラ全体を回転させるわけではないので、角度的には 150°くらいが限度ですが、こちらはれっきとしたパノラマ写真です。
 ただし、この原板はミニラボ機には掛かりません。フルサイズよりも送り幅が長いからです。中判用の引伸機を使って手焼きすることになります。

 現在はデジタル画像処理で、水平方向に何枚か撮り分けた画像を簡単につなぎ合わせることができます。それをカメラが自動的にこなす「スイングパノラマ」という機能も現れました。カメラを水平方向に振るだけで、自動的にパノラマ写真が撮影できます。
 カメラの持つ写角よりも広い範囲が写せるから、上下遮光の簡易式と違い、本格的なパノラマです。

2012/08/23(木)パノラマプリントのサイズ

 使い切りカメラに端を発したパノラマ写真ブームは、沈静化しなからも APS(IX240)まで引き継がれます。APS フィルムのパノラマは、上下を遮光するのではなく、磁器情報で識別します。後から情報を書き換えることで、H 判、C 判、パノラマのいずれにでも変更可能です。
 それでも H 判のプリントと長編の写角は同じです。上下がカットされるぶん、写っている面積が狭くなるのは 35mm 判パノラマと同じでした。「広大な」という意味ではインチキパノラマです。

 簡易型のパノラマ写真は、原板の上下をカットしたものを横に2倍引伸ばします。ちょうど L 判の写真を横に2枚つなげた大きさです。89x256mm だから、長辺は六つ切と同じです。六つ切に伸ばしたプリントの中央を 89mm 幅でカットした勘定です。
 画質的には、ポケットカメラの L 判プリントと同等ですが、画質や粒状性を云々する声は、ほとんど聞かれませんでした。プリントの迫力のほうが勝ったからでしょう。

 銀塩プリンターでプリントする場合は、89mm 幅のロールペーパーを 254mm 送るか、254mm 幅を 89mm 送ります。89mm 幅は L 判・APS と兼用、256mm 幅は六つ切・四つ切・ワイド四つと兼用です。
 パノラマ未対応の古いプリンターだと、254mm まで送ることができず変則サイズになります。元々インチキパノラマなのに、プリントまでインチキサイズでは、画面の広さはますます狭くなります。新しい規格が登場すると、それに対応するための設備投資が必要になりますが、パノラマ対応はミニラボが普及し始めてから最初に現れたハードルでした。

 出始めのころは、パノラマ専用のアルバムがありました。パノラマ専用の使い切りカメラだとフィルム1本すべてがパノラマです。普及促進のための必須アイテムでした。
 一般的な3段式ポケットアルバムだと、縦にして1枚収納できるよう、切り込みが入っています。効率は悪いものの L 判と一緒にファイルできるのは便利です。こうした業界の努力がなければ、パノラマプリントは普及しなかったかもしれません。
OK キャンセル 確認 その他