2012/08/19(日)解像度と画素数の関係

 前回、A2 サイズのプリントが約 3480 万画素と書いたのは、解像度を 300dpi で計算した場合の話です。観賞距離が離れるぶん解像度を下げてもいいと判断すれば、もっと少ない画素数で済みます。A2 くらいのプリントだと、近くに寄って見る人もいるだろうと、人間の眼の解像度にしたまでです。

 肉眼の解像度が 300dpi 程度というのには異論があって、200dpi という説もあれば、500dpi という説もあります。どれもそれなりの根拠があります。要するにプリントされた画像の内容によって変わるわけです。
 デジタル露光の銀塩プリンターで、300dpi と 500dpi を切り替えられる機種がありました。風景写真はどちらも同じように見えますが、細かい文字の部分を見ると 500dpi でプリントしたほうが明らかに鮮明です。500dpi はポストカード用ですね。

 白地に黒い文字、あるいは黒地に白い文字の文書は、300dpi では足りないと言われています。文書を複製することが多いコピー機は、600dpi を基準にしている機種が多いはずです。 
 ということは、星の写真なんかは 300dpi では足りないわけで、なるべく解像度の高いプリンターで出力したほうがいいでしょう。都市空間のように直線が多く窓が規則的に並んでいる被写体も同様です。

 一方、自然の風景を写した写真は、一般的にそれほど高い解像度でなくても十分観賞できます。キメの細かさよりも全体のメリハリのほうが大事な要素です。A2 を小型プリントと同じ 300dpi で出力するというのは、かなり贅沢な設定と言えます。
 例えば、200dpi で A1 に出力した場合は、約 3000 万画素。半分の A2 を 300dpi で出力したときよりも少ない画素数で済む計算です。プリントサイズが大きくなるぶん、観賞距離が離れると考えれば、一定のところで高画素化は収まると予測します。

 A4 と A1 を同一の画像データで出力しているようでは、解像度や画素数を云々する以前の話です。デジタル画像データは、出力サイズごとに設定を変えるのが基本です。アナログ式のフィルムでもフォーマットサイズによって乳剤の特性を変えていました。デジタルカメラには機種ごとに想定された出力サイズがあるはずです。現像テクニックや後処理がものを言うのは、銀塩時代と同じです。

2012/08/18(土)デジカメの高画素化はどこまで?

 ライン型センサーを利用すれば、1億画素を超えるデジタルカメラが低価格でできます。スキャン方式なので露光に時間が掛かるのが難点ですが、動かない被写体には有効な方法です。ここまでの高画素を求めるのは、やはり出力サイズだと思います。学術的な記録だと、等倍以上に拡大できる細密さが要求されます。

 高画素の新製品が発表されるたびに、「こんな画素数は必要ない」という声が上がります。一般的な記念写真なら 1000 万画素もあれば十分です。それでもまだ高画素化に歯止めが掛からないのは、それを求める層がいることのほかにメーカー側の事情があります。
 高画素イコール高画質という誤解に便乗して、メーカーがコストダウンに利用してきた側面があります。コンデジは高画素化の結果、レンズの解像力が相対的に甘くなり、ローパスフィルターを省略できました。

 風景写真を大型プリントにして写真展に出品するアドアマ層は、現在のフルサイズ機では満足できないかもしれません。金額的に手が届かないとしても PENTAX 645D の画質は魅力です。
 手軽に撮影できる 135SLR タイプで、4000 万画素超のものが発売されれば、大歓迎だと思います。中判カメラのシステムを持たないニコン・キヤノンにとっては、フルサイズの高画素化をやめるわけにはいかないでしょう。

 高画素化で大サイズのプリントが得られるとしても、画像データの肥大化など弊害もあります。どこまでが実用範囲か、見極める必要があります。フィルム時代の大型プリントはせいぜい全紙まででした。フィルムには粒状性の問題があります。ライカ判で全紙は、ちょっと無理した感じでした。
 アマチュアが個人レベルで所有できるプリンターは A2 までだと思います。印画紙の全紙とほぼ同じサイズです。300dpi で出力した場合は、約 3480 万画素となります。

 看板屋が扱う写真画像は、一般のプリントとずいぶん異なります。普通の写真画質だと、離れて見たときにぼやけてしまいます。観賞距離が違うからです。近くに寄って見ると、ブツブツでザラザラの粗い画になっています。
 そういう意味では、A2 サイズを 300dpi でプリントする必要はないかもしれません。でも、写真展では作品に近づいて鑑賞することが可能です。縦横比の違いもあるからゆとりをみて、4000 万画素あれば十分だと思います。近いうちにフルサイズで実現できそうな数字です。

2012/08/17(金)スキャナーカメラの自作

 普通のデジタルカメラに使われている撮像センサーは、面積のある長方形です。それに対してスキャナーの撮像センサーは一次元のライン型です。センサーを動かすか、被写体を動かして面積のある二次元の画像にします。
 センサーを直線上に並べたシンプルな構造なので、大型センサーに比べてコスト的に安く済みます。市販のフラットベッドスキャナーは、ミラーを使って A4 サイズ短編が読めるセンサーを使っていますが、価格はそんなに高くありません。1万円台の機種もあります。8x10 インチサイズの撮像センサーを作ろうとしたら、とんでもない話です。

 フラットベッドスキャナーを使って、立体物が撮影できる大型カメラを作った人がいます。基本的な原理は、8x10 インチのビューカメラのバックフレームが、スキャナーになったと思えばいいでしょう。ただし、これでは外に持ち出して使うのには不便です。フィルム式のバイテンでも大ごとなのに・・・
 そこで、中判一眼レフのフィルムバックをスキャン方式のデジタルバックにして、屋外での撮影ができるよう改造を試みる人が現れました。ここまでくると市販品の単純な流用は難しく、基盤からムーブメント、制御ソフトまで自前で作ることになります。

 初期の業務用デジタルバックは、この方式を使っていました。RGB の3回露光だったから物撮り用です。いまでもまだ使われていると思いますが、露光に時間が掛かるのが難点です。1回露光で済む3ライン CCD で、お払い箱になったジャンク品があれば、それを利用するのがよさそうですが、スタジオ撮影が前提だったから外での使用には向かないかも?

 スキャン方式の特長は、高画素が低コストで手に入ることです。1億画素を超えるものも珍しくありません。D800 や 645D もビックリです。ベイヤー配列の撮像素子と違って偽色の心配がないのも特長のひとつです。

 欠点は、スキャンする時間が長いことです。RGB が同時に取り込める3ライン CCD でも、最低1回はスキャニングが必要です。長時間露光みたいなもんですね。
 動く被写体は撮れないし、画面上に動くものがあるとノイズのような痕跡が残ります。海や川のある風景写真には向いていない方式です。風で動く木々も同様です。そういう意味では、645D の出番がなくなることはないでしょう。
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