2012/08/10(金)規格の乱立と撤退の繰り返し

 昔から、新しい規格が出ては敗退して、世の中からすぐに姿を消す失態を繰り返してきました。誰も初めから失敗すると思ってやっているわけではないから、罪がないといえばそれまでです。
 せめて、ある程度の期間持ちこたえてくれれば、諦めもつくでしょうが、出てすぐに敗北宣言では、購入したユーザーは踏んだり蹴ったりです。

 音楽用テープのエルカセットは、新規格で失敗した代表格のように言われていますが、それまでのカセットテープに比べて音質がよく、決して悪い規格ではなかったと思います。
 ただし、オープンリールテープの最低速と同じレベルだったので、音質を重視するオーディオマニアや業務用途には向きませんでした。要するに中途半端だったわけです。エンドレステープの8トラックのほうが寿命が長かったのは、それなりの需要があったからでしょう。

 ポラロイド社のインスタント映画システム「ポラビジョン」も短命でした。撮影機と映写機がセットで売られていました。発売時期がビデオカメラの普及とオーバーラップしたのが敗退の要因です。撮ってすぐに見られる特権が奪われた形です。
 銀塩素材は有効期限があるから、エルカセットと違って買いだめができません。日本国内では、本体を回収するような話をどこかのカメラ屋で聞いた記憶がありますが、実際にどうだったかは知りません。

 8ミリ映画のフィルムは、シングル8がまだ手に入るし現像もできます。製造打切りの話が出たものの、継続要望の声に押されて延期されました。メーカーが健在だからこそできることです。
 その FUJIFILM もラピッドフィルムでは手痛い失敗をしています。コダックのインスタマチックに対抗して、独アグファが提唱したカートリッジ式に相乗りしたのですが、短命に終わりました。本体を回収して終息を図ったと聞いています。

2012/08/09(木)xDカードが消えた理由

 2002 年に FUJIFILM と OLYMPUS が共同開発して導入した xD ピクチャーカードは、10 周年を迎えることなく市場から姿を消しました。敗因は色々言われていますが、一言でいえば、開かれた規格ではなかった、ということでしょう。
 当時シェアを握っていた2大メーカーにすれば、著作権保護機能を省略してコストダウンを図れば、収益アップにつながると踏んでいたはずです。それが裏目に出た形です。

 SD カードはケータイに使われているし、メモリースティックは音楽プレーヤーやビデオカメラにも使われています。それに対して xD カードはデジカメだけです。しかもフジとオリの2社しか採用しませんでした。
 それとライセンス契約を要求されるのを嫌って、xD カードに対応しない周辺機器が多かったのもマイナス材料でした。読み取りエラーなどトラブルの中には、こうした部分が含まれていたかもしれません。

 スマートメディアであれだけ苦労したのに、接続端子は剥き出しのままでした。小さくなっただけで何も改善されていない、そう感じたユーザーは多いはずです。
 それを言えば SD カードも端子は剥き出しです。xD カードだけ非難されるのは変なのですが、一度ミソをつけると不信感を拭い去るのは大変です。

 xD に切り替えてから、フジとオリはシェアを落としました。コンパクトフラッシュを採用していたニコキャノのコンデジが、SD カードに切り替わったことも影響しました。それ以上に影響したのは、カメラ付ケータイの記録メディアにマイクロ SD が使われたことです。アダプターで SD カードと共用できます。
 ソニーもケータイを作っていたから、自社製にはメモリースティックを採用しました。音楽プレーヤーやビデオカメラのメディアとしても使われました。独自規格でも踏ん張れたのは、これが大きかったと思います。

 xD を採用した2社は、デジタルカメラで使うことしか考えていなかったようです。最大の敗因は、ここなのかもしれません。フィルムに代わる利益源にしようなんて欲を出さずに、規格をオープンにしていたら、少しは様子が違っていた可能性はあります。

2012/08/08(水)画像記録メモリーの推移

 初期の電子カメラは、いまのデジカメとはずいぶん違っていて、電子スチルビデオでした。テレビに静止画を表示するためのカメラです。記録方式はビデオと同じ NTSC です。記録メディアは、3.5 インチや 2 インチのフロッピーディスクが使われていました。

 デジカメの体裁になったのは、パソコンのモニター画面で表示するようになってからです。記録メディアは PC カードでした。容量はギガではなくメガの単位で、バイトではなくビットで表示していたメーカーもありました。バイトとビットでは8倍違います。8Mbit は 1MB です。こんなのが何万円もしていました。

 一般向けのデジカメは、2MB 程度の内臓メモリーで済ませていましたが、スマートメディアはこのころ早くも登場しています。コンパクトフラッシュ(CF)がそれに続きました。CF は PC カードを小型化したもので、PC カードとは互換性があります。ハードディスクタイプのマイクロドライブ(MD)は CF と同サイズです。

 FUJIFILM と OLYMPUS がスマートメディア、Nikon と Canon がコンパクトフラッシュを採用していました。ソニーはフロッピーディスクを使うマビカで押していましたが、1.44MB しかないのでメモリースティックを独自に開発します。Panasonic は 120MB のスーパーディスクから SD カードに乗り換えました。
 2000 年ごろには、ほぼこの陣容ができあがったと記憶しています。このうち、比較的シェアを握っていたスマートメディアが最初に姿を消します。

 スマメの性能的な限界が見えていたこともありますが、理由のひとつは、データの破損です。スマメは端子が剥き出しになっていて、静電気などの影響を受けやすい構造でした。デジタル写真の一番の心配事は、データが消えてしまうことです。これが致命傷になりました。
 シェアを握っていた FUJIFILM と OLYMPUS は、SD カードではなく、独自の xD ピクチャーカードを採用しました。力で押し切れると踏んでいたようです。これが誤算でした。
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