2019/06/25(火)古い不動産の名義変更は大変 5

 今月初めに伯母さんちへ行って、私の母親は「姉が生きて住んでいるうちは弟の名義にするのは反対」と言っている、と伝えてあります。わからずやの叔父も同席してました。母親あての書類を送るとか言ってましたが、ちっとも送ってきませんね。問い合わせ先が弁護士事務所になってるとかいう書類です。

 送ってきたら、その弁護士事務所に問い合わせてみるつもりでしたが、よく考えたら送ってくるはずがないわね。遺産分割協議が成立する前に作った書類なんて、ただの紙切れです。いや、紙切れというよりは、間違ったやり方で事を進めようとした証拠の品です。そんな書類を弁護士事務所が送らせるわけがありません。

 この弁護士事務所は、税金のことにはあまり詳しくないみたいです。母親の実家は 50 年以上前に祖父が亡くなってから、代襲相続人が次々増えて、現在十名以上の共有物となっています。仮に誰かの名義に変更できたとして、その土地を売却した時に譲渡所得税と住民税が掛からないのは、いま住んでいる伯母さんだけです。マイホームだからね。

 将来、重度の介護が必要になって施設に移ったとき、引越してから3年以内に売却すれば 3,000 万円までは非課税です。叔父の名義だと約 20% 課税されます。弁護士事務所からこのあたりの説明は伯母さんにはなかったそうです。常識的に数百万円の差が出るのに説明しないのは、たぶん知らないからでしょう。弁護士は税理士じゃないからね。

 伯母さんが自分の名義にしたくないのは、家の補修など後々の面倒をみたくないからだと言います。弟の名義なら弟がするだろう、といった単純な発想です。譲渡所得税の話をしても、「数百万円の話か…」といった反応。独身貴族でしっかり貯めこんでるんでしょうね。

 おいおい、そんなに大金持ちなら、代償金を用意して相続人全員に分配してあげてよ。母親はたぶん受け取らないけど、喜んで受け取る人のほうが多いと思うよ。このやり方なら金銭でもめることはないしね。

 ただし、末っ子の弟の名義にする話になると、税金の問題が発生します。叔父はそんなお金は持ってないから伯母さんから借りる形になります。そうでないと贈与税の対象になります。仮に借りた形にして贈与税を回避したとしても、伯母さんが亡くなったときに相続財産(債権)として扱われます。10 人以上の相続人に債権の相続権が移ります。

 返す気がなければ、遡って贈与税が掛かります。贈与税の時効は贈与が発生した翌年の3月 16 日から7年です。九十の伯母さんが百まで生きてくれればいいけど、こればかりは保証はありません。先に叔父さんが死ぬかもしれないし…

 やはりこの家は伯母さんの名義にするしか道はなさそうです。伯母さんが生きてる間に弟に譲りたければ贈与すればいいけど、叔父に贈与税が掛かります。この人、そんなお金はないから、私が言うように遺言書を書いてもらって相続するしかないでしょう。相続人はいっぱいいるから相続税は非課税です。

2019/06/24(月)古い不動産の名義変更は大変 4

 遺産分割協議がまとまらなかったときはどうすればいいのでしょう。このままだと次の世代まで相続問題を引きずることになりそうです。いまさら法的な相続放棄はできないし、何としてもそれだけは避けたいところです。

 家庭裁判所に遺産分割調停事件として申し立てるしかないようです。相続人だけで話がまとまらないときは、家庭裁判所の調停委員が代わって調停を進めます。調停で話がつかなかったときは、自動的に審判手続が開始され、裁判官が審判を下します。地方裁判所の判決に相当するものです。

 家庭裁判所に調停を申し立てるのは相続人の誰でもできます。全員が順次裁判所に呼ばれ、意向聴取と話し合いが行われるので、「言いつけっびが得」ということはありません。では、今回の母親の実家の場合はどうでしょうか?

 遺産分割協議は全員参加、全員一致が原則です。誰かを除外したり、一部の者だけで勝手に協議を進めたりしてはいけないことになっています。もちろん一人でも反対者がいれば、遺産分割協議は不成立です。

 後妻の末っ子にあたる叔父さんは、何とか自分の名義にしようと必死です。ただし遺産分割協議の原則がまったくわかっていません。議会制民主主義の多数決でもなければ、株主総会の議決権とも違う、ということが理解できないみたいです。

 自分はほかの人と相続割合がこんなに違うとか、8割の人からハンコをもらったなど、意味不明の言い分に終始しています。代償金がまったくないのに相続割合を持ち出しても無意味です。遺産分割協議が成立してないのに「8割集めた」って、それ何の書類? もし遺産分割協議書なら無効です。(あるはずのない書類だから)

 この叔父が家庭裁判所に調停を申し立てても、すんなり意見が通ることはないでしょう。実家を取得する人が代償金を用意できるか、代償金を満額用意できないときは誰が相続するか、現在一人で住んでいる伯母の名義にするなら全員が納得するか、などが話し合いの論点になると思われます。

 最後は家庭裁判所で審判が出るから、時間が解決してくれるかもしれません。ただし誰かが調停を申し立てたらの話です。50 年以上も放置されてきた相続です。みんなほっかぶりでそのままになる可能性が大です。(それも困るなぁ)

 頑張れ!叔父き。自分が勝てると勘違いして、裁判所に調停を申し立てておくれ!

2019/06/23(日)古い不動産の名義変更は大変 3

 あと少しのところで頓挫したのは、伯母さんが末っ子の弟の名義にしたいと言い出したからです。しかも遺産分割協議をこの弟に任せてしまったことで、まとまりかけていた話がご破算になってしまいました。この叔父はプライドばかり高くて、遺産分割協議がどういうものか、まったくわかっていません。しかも弁護士事務所に頼んだというから最悪です。

 相続財産に不動産が含まれる場合は、法務局の登記資格のある司法書士に依頼するのが一般的なやり方です。司法書士の報酬は5千円1万円、高くて2万3万の世界です。いっぽう弁護士は5万 10 万、その上は 30 万 50 万が相場の世界で生きてる人たちです。戸籍謄本などの資料集めと登記業務だけなら司法書士に丸投げして終わりのところもあります。

 母親は「弟は弁護士まで立てて…」と息巻いてました。この年代の人は「弁護士」と言うだけで十分脅し文句に聞こえるみたいです。脅してハンコを押させるのは、遺産分割協議では御法度です。そして「ハンコを押さないのはあんた一人」という嘘もね。

 母親が反対するのは、すぐ上の姉が一人で住んでいるからです。まだ生きて住んでいる者がいるのに自分のものにするとは何事!と怒ってました。いずれ姉は家を追われる…そういう心配をしているみたいです。さもありなん、です。

 伯母さんは結婚もせず一人で気ままに生きてきたせいか、少し自分勝手なところがあります。「この家は私のもの」→「私が弟に譲ると言ってるのだから…」 この論理の飛躍が忘れかけていた先妻と後妻の子孫の確執に火をつけたようです。先妻の子孫にとって、伯母さんの弟は「後妻さんの末っ子」でしかないからです。

 最後の最後に独り身の年寄りのわがままが裏目に出ましたね。伯母さんの名義にすると言えば反対する人は誰もいなかっただろうに、判断ミスでした。弟に譲りたければ一旦自分の名義にしておいて、遺言書を作れば済む話です。自分が死んだら全財産を弟が相続する、とね。

 一人に全財産なんて遺言書を書くと、「遺留分に配慮してない」なんて声が聞こえてきそうです。伯母さんの相続人は兄弟姉妹とその代襲相続人です。兄弟間の相続に限って遺留分はありません。誰にも遺留分減殺請求する権利がないわけです。

 叔父さんもこのほうが得だと思うけど、ひとの話に耳を貸さないんだわね、この人。
OK キャンセル 確認 その他