2019/06/22(土)古い不動産の名義変更は大変 2

 遺産相続で、不動産以外にこれといった財産がないときは困りものです。分けようがないからです。相続人全員が登記することは可能ですが、年月が経つと売るに売れない状態に陥る可能性が大です。一般的に不動産を複数の人で共有するのは、田んぼを分けるのと同じく「たわけ」たやり方です。

 不動産を一人取得した者がお金を用意して相続人に分配するやり方を「代償相続」と言い、法律で正式な相続方法のひとつと認められています。不動産を取得した人には相続税の全額、代償金をもらった人には贈与税が掛からないようにするためでしょうね。被相続人の財産でないお金のやり取りは、税務署から贈与とみなされる可能性があるからです。

 では、代償金が払えない場合はどうでしょう。相続人全員で遺産分割協議を行い、誰か一人に無償で相続させることで合意が得られれば、お金のやりとりなしで名義変更することができます。法定割合は、相続でもめた場合に裁判所が基準にするもので、全員の合意があれば法定割合どおりでなくても構わないことになっています。母親の実家も祖父が亡くなったときにこの合意が成立していればよかったんだけどね。

 祖父が亡くなったとき母親といちばん上の姉さんは、嫁に出ているからと相続放棄をしたそうです。裁判所で正式に手続きしたそうだから、その時点で相続人ではなくなっています。ところが、相続権のある祖母(配偶者)が亡くなったときに相続放棄をしなかったので、母親といちばん上の姉さんは相続人として復活することになりました。さらに祖母の連れ子も相続人となりました。

 異母兄弟のほかに異父兄弟までが相続人になり、しかも亡くなった方の子孫が代襲相続人となって、人数は増えるばかりです。それでも全員の所在がわかって連絡がついたというから驚きです。古い家はどこかでつながってるんですね。

 50 余年の歳月が経つうちに、この家に住むのは母親のすぐ上の姉さん一人になりました。結婚もせず祖母の面倒を見、一人で実家を守ってきました。この家の主がこの伯母さんであることに異論を唱える人はいないと思います。遺産分割協議は成立するかに見えましたが、とんだところで落とし穴が待ち受けていました。(続く)

2019/06/21(金)古い不動産の名義変更は大変

 亡くなった方の名義のままになっている不動産は、思っていたより多いみたいで、所有者不明の土地を全部足すと九州くらいになるんだとか。わが家も危うくそうなるところでした。以前住んでた分譲マンションの共有地は全部で4筆あるのですが、そのうちの3筆が亡くなった義父の名義のままになっていました。

 家内が相続したときに漏れがあったようです。相続当時に遡って訂正しないと、私が相続できません。普通は当時の相続人全員の承諾を得る必要がありますが、たまたま家内が一人っ子で、他に相続人がいなかったので、私と子供たちだけで申請することができました。

 法務局の手続きには戸籍のほかに住民票が必要です。ところが義父の除票が入手できませんでした。何十年も前に亡くなっているから、もう役所に残ってないんだそうです。戸籍と違って住民票の除票は比較的短期間(短いところだと数年)で廃棄されてしまいます。

 それがないと義父本人だという証明ができません。世の中には同姓同名の人もいるしね。そういう場合は、相続人全員が署名押印した「上申書」を提出して、法務局に認めてもらう必要があります。役所に代わって相続人全員が義父本人に間違いないことを上申するわけです。今回はこのやり方で無事に手続を終えることができました。

 不動産の名義変更が放置されたままのケースは身近にもあって、母親の実家がモロそうでした。名義人の祖父が亡くなったのは 50 年以上も前のことです。お祖母さんの名義にしようとしましたが、土地建物以外に財産がなく、先妻の子供たちとの遺産分割協議がうまくいかなかったようです。お祖母さんが亡くなった時も同様で、そのまま放置されてしまいました。

 親子の相続関係は、孫・ひ孫・玄孫と未来永劫に続きます。このまま放置しておくと、法律が変わらない限り収拾がつかなくなります。いまは独身の伯母さんが一人で住んでいて、まだ元気なうちにケリをつけるよう、何度か進言しておきました。本人もその気になったのですが… 

 遺産分割協議のやり方を間違えたために、不成立の結果となりました。(その経緯は次回に)

2019/06/16(日)古い不動産の購入価格を調べる

 以前住んでたマンションは築 50 年以上の築古物件です。家内が父親から相続し、昨年、私が相続しました。売却に伴い譲渡所得税の問題が発生します。5年以上所有する不動産だと住民税と復興特別所得税を合わせて 20.315% 掛かります。5年未満だと課税率は 39.63% です。相続の場合は被相続人が所有してからの期間なので、遡って 50 年以上所有していたことになります。

 5年未満じゃなくて助かったと思うのはぬか喜びです。課税所得は、売却価格から不動産屋の媒介手数料などの諸経費を引き、さらに不動産の取得にかかった費用を差し引いた金額です。家屋の部分は減価償却後の金額ですが、土地の部分はそのまま差し引けます。ただし、それを証明する資料があればの話です。

 ウチの場合は、断捨離だか何だか知らないけど、家中どこを探しても義父が購入した時の書類が見つかりませんでした。家内が相続したときの権利書は残っていますが、そこに書かれている金額はまったく無意味です。その金額を払って取得したわけではないからです。

 先祖伝来の土地など、貨幣価値が全く異なる時代の物件や購入価格が不明な場合は、売却価格の5%を仕入価格とみなして差し引くことができます。古い土地ならそのほうが有利ですが、新しい土地ではかなり不利です。昭和 27 年あたりが境目になるみたいです。義父が購入したのは昭和 41 年だから、5%しか引けないのでは大損です。

 自分の土地でなくても近隣でそのころ売買された資料が入手できれば、それが仕入原価の根拠になります。マンションの場合は、購入時のパンフレットや同じ住宅内での売買実績を調べることで、疑似的に購入価格を想定することが可能です。不動産の売買に詳しい税理士だと、そのあたりに精通していそうな気がしますが…

 先日、銀行系不動産会社で売買契約を済ませたあと、担当者から関連資料が入った紙袋を渡されました。かなり重たい資料です。家に帰って中身を見てみると、住宅全体の共有部分の全事項証明書でした。200 戸以上の共有地だから全部となるとその量はハンパじゃありません。A4 サイズの書類の束で、厚さは 6cm 以上あります。

 3万㎡以上ある敷地は4筆に分かれています。家内が義父から相続した時に登記漏れがあって、それを直すのに往生した話を担当者には伝えてあります。この不動産会社は同じ住宅の物件を何件か取り扱った実績があったので、媒介した物件に登記漏れがあっては大変と、すぐに遡って調べたそうです。分厚い資料の束を持ってました。これですね。

 登記事務がコンピュータ化されたのは、昭和 63 年の法改正以降です。古い記録は省略されているみたいですが、20 年以上の長期住宅ローンを組んでいたら電子取得した資料にも引き継がれているはずです。古い帳簿からその人の謄本が入手できれば、購入時価格を証明する資料に使えるかもしれません。

 暇を見てこの分厚い資料をチェックしてみたいと思います。低価格の築古物件だったから媒介手数料は知れてるのに、親身にしてくれて、ありがとね。(と、担当者に感謝)
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