2012/09/03(月)F値の暗い高性能レンズ

 レンズ設計は、F 値が暗いほうが楽だと言われています。収差が少ないぶん、補正のための余分なレンズが要らないからです。天体望遠鏡でも同じです。屈折式では、口径が小さく、焦点距離が長いほうが、見え味がよく低コストで作れます。

 高校時代に友人が持っていた望遠レンズは、低価格で高性能でした。いまはなきソリゴールレンズの 400mm F8 です。レンズ構成は確か1群2枚だったと思います。アクロマートの望遠鏡みたいな設計でした。絞りは自動絞りでもプリセット式でもない普通絞りでした。聞いた値段は1万円以下だったような記憶が・・・

 カメラメーカーの交換レンズと比べると、ずいぶんチープな作りです。400mm F8 ということは、対物レンズの口径は 50mm と小ぶりです。焦点距離に近い鏡筒だから、やたらとひょろ長いレンズでした。ヘリコイドの繰り出し量が少ないので、最短撮影距離は 10m でした。遠景専用です。
 無理のない設計だから、価格は安くても写りはよかったみたいです。カラーフィルムが普及する前からあったので、コーティングはモノクロ用の単層だったと思います。発色はあまりよくなかったかもしれません。ファインダーを覗かせてもらったら、やたらと暗かったですね。ミラー切れで画面の上部がケラレていました。

 中小零細メーカーが群雄割拠していた時代は、こうこう面白いキワモノがありました。360°魚眼のコンバージョンレンズなんてのもありましたね。(いまでもあるか・・)
 ソリゴールをバカにしていたわけではないけれど、高校生の分際で、200mm F4 にテレコンのほうが実用性が高い、なんて贅沢なことを考えていました。タクマー 135mm F3.5 を持っていて、次は 200mm かワイドレンズを狙っていたころです。

 別の友人が持っていたのは、ミノルタ用の 21mm F4 です。後ろ玉が突き出ていて、ミラーアップして使う設計でした。ビオゴンタイプのワイドレンズです。外付けのファインダーでフレーミングします。F4.5 もあったみたいですが、見せてもらったのは F4 のほうでした。
 せっかく一眼レフに装着してもミラー式の光学ファインダーで見えないのは、いかにも理不尽です。当時はビオゴンタイプの価値など知らなかったので、旧タイプのレンズくらいにしか思いませんでした。友人もすぐに手放してしまったみたいです。もったいないことをしましたね。

2012/09/02(日)大口径レンズは重くて高い

 CONTAX 用の交換レンズで、欲しくても買わなかったレンズが何本かあります。「買えなかった」と言ったほうが正解のレンズもありました。ミロターなんかはその代表格です。反射式の 500mm F4.5 が 217 万円もしました。重量も 4.5kg とヘビー級です。
 このレンズの注文が入ったときは、納品から集金まで、ヤシカの人が代行すると聞きました。もしキャンセルになったり、代金が回収不能になったりしたら、街のカメラ店だと経営的にダメージが大きすぎるからだそうです。

 このレンズに触発されたのか、タムロンから特殊光学系の反射式レンズ SP 500mm F8(55B)が開発されました。こちらは掌サイズで、価格は 79,500 円。1絞り半違うだけで、大きさも価格も桁違いです。性能的にはミロターが上だったみたいですが、500mm の次点はこのレンズとの評判でした。もし売れなかったら会社の存亡にかかわるくらいの開発費だったとか・・・
 各社から発売された小型の反射式レンズは、これが原型です。

 ゾナー 180mm F2.8 も欲しいレンズのひとつでしたが、タムロン SP 180mm F2.5 の出物の話があって、そちらを買ってしまいました。望遠系の単焦点は使用頻度がそれほど多くないので、1本あれば十分です。
 マクロプラナー 60mm F2.8 は、いつか買うつもりでした。マクロレンズは何本か手元に転がっていたので、それで済ませてしまい機会を逸しました。
 ワイド系は、ディスタゴン 25mm F2.8 をよく使いました。このレンズはちょっとクセが強くて、発色もほかのレンズと違います。ツァイスは 28mm と 35mm は F2.8 のほかに明るいレンズを供給していましたが、24mm クラスはこの1本だけでした。しかも古い設計です。

 28mm F2 には興味が湧きませんでした。28mm の画角になじめなかったからだと思います。数ある 135SLR 用の交換レンズで単焦点の 28mm はタムロンの F2.5 があるだけです。星空用ですね。
 いまではソニーからディスタゴン 24mm F2 が出ていますが、フィルター径 72mm、重さは 555g もあります。PENTAX FA24mm F2 よりも大きくて重いのが難点です。ツァイスで目方のことを言うのは野暮ですが・・・

 CONTAX G シリーズでは、24mm クラスのレンズは出ませんでした。ビオゴン 28mm F2.8 の次は 21mm F2.8 です。21mm は外付けファインダーでした。あまり出番がなかったのは、一眼レフでなかったのと、ワイドレンズの焦点距離のせいかもしれません。
 ティアラみたいに、使っていればそのうち慣れるんでしょうけどね。

2012/09/01(土)大口径レンズの魅力

 わずかな明るさの違いのために、高いお金を出す必要はないと思いつつ、実際に購入する段になると、ついつい明るいレンズに惹かれてしまうのは、カメラ好きの嵯峨みたいなもんですね。
 プラナー 50mm F1.4 を買ったときは、別の理由がありました。当時扱っていたヤシカの人に、F1.4 がいいと薦められたからです。暗部の描写が F1.7 よりもいいと言ってました。要するに F1.4 のほうがコントラストが高いとの評価です。「あんたならわかる」というのが殺し文句になりました。

 当時の標準レンズは、F1.7 クラスが約2万円、F1.4 が約3万円が相場です。ニッコール 50mm F1.4 でも 36,000 円でした。それに対して、プラナー 50mm F1.7 は 29,000 円、F1.4 は 43,000 円もします。メーカーにプロ用デモ機の申請をするときに、「イチナナのほうでいいから」と言ったら、先ほどのコメントが返ってきました。
 さらに、ニッコールの F1.4 は最短撮影距離が 60cm、プラナーの F1.4 は 45cm、この差が中間リング分で 7,000 円だと思えば、けっして高くないとの言い分です。ちなみにプラナーの F1.7 は、最短撮影距離が 60cm でした。うーむ、やっぱりイチヨンか・・・

 カールツァイスのレンズは、大口径レンズが魅力です。歴史に名を残すレンズが何本かあります。そのうちの1本がプラナー 85mm F1.4 でした。このレンズを使うために CONTAX のボディーを買ってもいいと言われたレンズです。もちろん真っ先に買いました。
 当時 CONTAX の宣伝で「F1.4 の砲列」というのがありました。85mm F1.4、50mm F1.4、35mm F1.4 です。レンズを装着して3台並んだ姿は壮観でした。このうち 35mm F1.4 は買いませんでした。165,200 円の価格もさることながら、540g というのは 85mm F1.4 に近い目方です。スナップ用の 35mm にしては重すぎます。手元にあったニッコールの F1.4 は、そんなに重くありませんでした。
 「酸化セリウム」の先生は、昔 CONTAX を使っていて、35mm F1.4 付を首から下げて飛び降りたら衝撃でレンズマウントが壊れたとか言ってました。首の骨が折れなくてよかったですね。

 当時のツァイスレンズはマニュアルフォーカスです。精度の問題で AF 化には消極的でした。AF 化されたのは 645 システムと互換性を持たせた N システムからです。超音波モーター内臓の太くて大きなレンズでした。
 ツァイスの単焦点レンズは、マニュアルフォーカスで使うものだと、個人的には思っています。
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