2012/09/27(木)スタジオ撮影のワイヤレス化

 転送エラーやセキュリティーに不安を抱えながらも、スタジオ撮影で無線 LAN が使われるケースが増えています。とくに個人相手の子供写真館やブライダルフォトのスタジオでは、設備化が進んでいるようです。
 撮影後にすぐプレゼンして写真をセレクトするので、パソコン側でリアルタイムで画像を編集できるメリットは大きいと思います。選ばれる可能性のない目つぶりなどの失敗カットを事前に除外するだけでも、プレゼンの効率化が図れます。

 こども写真館は、撮影後のプレゼンで売上が大きく左右されます。「鉄は熱いうちに打て」で、撮ったその場でセレクトさせるのが鉄則です。時間が経って熱が冷めてしまうと、売上も落ちる傾向があるからです。
 追加しようか迷っていると、「おじいちゃんが出してあげる」と、祖父母が援助してくれるケースが多いと言います。「子供には財布が6つある」と言われる所以です。最近は、裕福な年寄りが減ってきたのが痛いと、嘆く声もあるようですが・・・

 一方、コマーシャルフォトのスタジオでは、作業効率化のためにパソコンと直結するのが常態化しています。カット数が多いので、撮ったその場で大容量の記憶装置に保存するやり方が定着しました。有線 LAN や USB 接続のほうが確実ですが、ケーブルの引き回しがネックです。大勢のスタッフが動き回り、撮影現場に不慣れなクライアントがいる状況では、ケーブルを引っ掛ける危険性があります。
 USB 接続する場合は、ストレートケーブルを直結せずに、カメラ側に巻取り式のケーブルを継ぎ足すなど、安全対策を施します。万一ケーブルを引っ掛けたときでもケーブルが延びて、カメラへのダメージを軽減できるからです。

 最近では、無線 LAN を採用するところが増えているそうです。画像のセキュリティー問題よりも、機材の安全性のほうが重要視されているからでしょう。絶対的な機密性が要求される撮影は、そんなに多くないのかもしれません。
 撮影結果がその場で確認できたほうが、クライアントの評判がいいという事情もあるようです。それを利用して撮影現場でセレクトまでできれば、後の作業が楽になります。お互いメリットがあるわけです。

2012/09/26(水)スタジオ写真とWi-Fi

 こども写真館などでは、撮影後にすぐプレゼンする必要があるので、撮った端からパソコンにデータを送ることができれば、準備の時間が短縮できます。ユーザーにお気に入りのコマを選ばせるので、目つぶりや類似カットを事前に除外する作業は重要です。セレクトの時間短縮につながるからです。

 パソコンにデータを送るのには LAN が使われます。有線と無線がありますが、いずれも一長一短です。有線は転送速度が速く、情報が外に漏れる可能性が低くなります。一方、無線 LAN はケーブルを引きずらなくて済む代わりに、セキュリティーに不安が残ります。有線に比べて転送エラーの確率も高くなります。
 無線 LAN を使う場合は、カメラ本体のメモリーカードにも同時記録したほうが無難です。それなら、撮影後に引き抜いて、パソコンの読取装置に入れるのと変わらないように思いますが、読み取りに時間が掛かるのと、事前に粗選りしておくことでセレクトの時間が短縮できる利点がなくなります。同時記録は、万一のトラブルに備えた保険みたいなもんです。

 スタジオ撮影での無線 LAN 方式は、キヤノンが力を入れているように見受けられます。何年か前にライティングの相談に乗ったことのある呉服店は、キヤノンの無線 LAN システムを採用していました。メーカーの人に勧められたんだそうです。
 個人的には、肖像権が絡む人物写真に無線 LAN を使うのは、ちょっとが不安があります。設定がラフだと画像がよそへ漏洩する危険があるからです。もしこれが企業が開発した未発表の商品写真だったら、クライアントは無線 LAN での撮影を認めないと思います。個人だからいいだろうというのは、肖像権を軽く見た考え方です。

 フォトキナで開発発表されたフルサイズ一眼レフの EOS 6D は、Wi-Fi と GPS 機能が搭載されるそうです。メーカーの WEB サイトでは、仕様の中のインターフェースで「Eye-Fi カード:対応」「無線 LAN :可能」となっているだけで、特長として挙げた 10 項目の中にその記載はありませんでした。
 スタジオ撮影向きではないということか、無線 LAN 方式を推す方向性に変化が出たのか、ちょっと気になりました。

2012/09/25(火)スタジオ写真のデータ転送

 写真スタジオでの撮影では、撮ったその場でパソコンにデータを保存する方法がよく使われます。古くは IEEE1394 での接続も見受けられましたが、最近では USB や無線 LAN が主流のようです。カット数の多い商品撮影は、パソコンのハードディスクに直接保存するのが便利です。

 「酸化セリウム」の先生が試験的に S2pro を導入したときは、IEEE1394 でノートパソコンとつなぐ方式を採用しました。というか、これしか実用的な方法がなかったように記憶しています。ケーブル長の制限など、LAN ケーブルでつなぐのとは勝手が違う問題もありました。
 実際に S2pro でコマーシャルフォトを撮ることは、ほとんどなかったようです。それでもこれがきっかけで、先生はコマーシャルフォトから足を洗うことになります。「我々の時代は終わった」というのが、先生が出した結論でした。

 あの程度の画質では、まだ銀塩式の中判・大判に対抗できないのは自明でしたが、来たるべき時代の臭いを嗅ぎ取ったんでしょうね。カメラマンの地位が凋落し、画像処理を担当するオペレーターが写真全般の仕事をこなすようになると予言していました。見事にアタリです。
 先生の信条は、後処理や加工が要らないレベルまで、撮影段階で追い込むことです。「すべての問題を解決してからシャッターを押す」というのが口癖でした。デジタル化で、写真家の腕の見せ所が少なくなりました。

 撮影時にパソコンにデータを取込むのはいいとして、それをどう扱うかで戸惑いを感じたようです。フィルムの扱いかたには慣れていましたが、デジタル画像データのほうは、一から覚えないといけません。事務所に MAC を入れて勉強を始めたものの、アナログ人間にはハードルが高かったようです。
 出入りしていた印刷屋の若いオペレーターは、いとも簡単に MAC を使いこなしていました。それを見て嫌になったんでしょうね。

 写真撮影の基本ができていない者が画像をいじることに、かなりの抵抗感があったみたいです。パソコンでセレクトしたデータをコピーして、印刷屋のオペレーターに渡したらそれで終わりでは、写真家の存在価値がないとボヤいていました。
 撮影した画像がパソコンに自動的に転送されるようになった時点で、先生の心の中に、自分の時代が終わる予感が芽生えたのではないかと推察します。
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