2012/03/04(日)虫の眼レンズの自作

 昆虫写真家・栗林慧氏が考案した「虫の眼レンズ」は、光学理論としては前からあったものでした。それを自作し実際に使ったのが功績です。高速発光の大型ストロボといい、虫の眼レンズといい、昆虫写真にかける情熱の賜物です。

 カメラメーカーやレンズメーカーから、1本くらいは製品版が供給されてもおかしくないレンズですが、あってもコンデジ用の魚眼あるいは超広角コンバージョンレンズくらいです。
 フォーマットサイズの小さいデジカメに超広角レンズをつけて絞り込めば、かなり被写界深度の深い画像が得られます。レンズ交換のできない機種でもコンバージョンレンズが使えます。魚露目8号という魚眼のフロントコンバーターもあります。

 撮像センサーがコンデジ並みの PENTAX-Q には、魚眼の交換レンズが用意されています。撮像面から 9cm までの近接撮影が可能です。背景に何が写っているか識別できるくらい被写界深度が深いので、虫の眼レンズに近い画像が得られます。
 ただし、栗林氏の作品のようにはいきません。それと魚眼レンズは1万円もしませんが、そのために本体を買うとなると、かなりの出費になります。

 虫の眼レンズは、天体観測機材を制作している光映舎が、完成品の斡旋販売をしています。ただし価格は業務用途レベルです。
 かくなるうえは自作しかない・・・と覚悟を決めたものの、特殊な光学系なので雲を掴むような話です。ネットで情報を拾い集めていたら、実際に自作した人がいました。自身が運営するサイトで公開しています。要点をきちんと掴んでいて、一般のアマチュアにもわかりやすい説明でした。
(自作はもちろん自己責任で)
http://tu4477.web.fc2.com/index.html%3c/a

2012/03/03(土)超深度の広角マクロ

 焦点距離の短いワイド系のマクロレンズは、被写体の近くに寄って等倍以上に拡大するのに向いています。RMS マウントのベローズ専用レンズは、拡大率だけでなく被写界深度が深いのが特徴です。
 深度が深いといってもマクロ撮影だから、ピントが合うのは狭い範囲に限られます。学術研究用で、レンズの被写界深度部分に真横からレーザー光線を照射し、被写体を前後方向に動かして長時間露光する装置がありました。パンフォーカスのマクロ写真を撮るためです。

 昆虫の写真でそういうのを見た!という人がいるかもしれませんが、写真展や写真集で見たのなら別の方法で撮った写真です。昆虫写真家の栗林慧さんの作品ですね。別名「虫の眼レンズ」という自作の特殊レンズを使っています。
 バッタの向こうの空に雲がハッキリ写っている画像は、普通の広角マクロでは撮れない世界です。いくら絞り込んでもああはなりません。

 焦点距離が短く開口径の小さいレンズほど被写界深度は深くなります。撮像センサーの小さいコンデジで、背景をボカすのが難しいのは、被写界深度が深いからです。
 その映像を大きく拡大できれば、近くの虫にピントを合わせても、中景の建物や遠景の山や空が識別できる程度のボケ具合に収まると考えたのが、虫の眼レンズ誕生のきっかけでした。

 まず短焦点・小口径の対物レンズを用意します。監視カメラなどに使うボードレンズでいいでしょう。それだけでは小さな結像しか得られません。その空中像を拡大して投影するレンズが必要です。こちらはマクロレンズやリバースした一般撮影用のレンズで代用できそうです。

 実際の撮影風景をテレビで見たときは、やたらと筒が長いレンズを使っていました。拡大投影用のレンズとカメラボディーとの間に距離があるからだと思います。
 天体望遠鏡を扱う企業が完成品を斡旋していますが、やはりこのタイプです。気になる人は自作を試みては?

2012/03/02(金)顕微鏡のレンズで撮る?

 リバースアダプターでワイドレンズを前後逆にし、マクロ撮影に利用するのは、昔からよく知られた方法です。もうひとつ、拡大専用レンズを使うやり方があります。
 以前「顕微鏡対物レンズ用アダプター K」というのが、PENTAX から出ていました。デジタル一眼レフが発売されてからしばらくは、カタログに載っていた記憶がありますが、現在は製造中止のようです。安いパーツだから買っておけばよかったですね。

 規格は一般的な顕微鏡用の RMS マウントです。口径 20.32mm(4/5 インチ)、ねじピッチ 0.706mm(1/36 インチ)、同焦距離 45mm 。「同焦(点)距離」とは、顕微鏡に装着した場合、対物レンズの胴付き面(カメラでいうフランジ面)から対象物(カバーガラス)までの距離を表わします。倍率変更でターレットを回したときに、合焦位置が大きくズレないよう規格を統一したわけです。

 顕微鏡にカメラを取り付ければいいように思われますが、拡大率が大きすぎるのと、透過光での撮影になるので、使用目的が違ってきます。対物レンズでの撮影は、等倍よりやや大きい拡大撮影を想定しています。
 VTR カメラの C マウントに変換するアダプターは、現在でも入手できるみたいです。PENTAX 以外のメーカーは、RMS アダプターという言い方をしています。

 実はマクロ撮影用のレンズが RMS マウントで市販されていました。ベローズ専用の拡大レンズです。ツァイス・ライカ・ニコン・キヤノン・オリンパス・ミノルタ等々。ペンタックスは RMS マウントのマクロレンズを出していなかったので、「顕微鏡対物レンズ用」という言い方をしたみたいです。
 顕微鏡の対物レンズは、普及品はあくまで眼視用です。写真撮影に使うなら、ベローズ用の拡大レンズが間違いないでしょう。イメージサークルが大きいし・・・

 ニコンのマクロレンズの呼称は、マイクロ・ニッコールですが、RMS マウントの拡大レンズは「マクロ」ニッコールです。意味があって使い分けているんですね。残念ながらマクロのほうは、すでに製造を打ち切っています。
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