2012/03/10(土)3層構造センサーの解像度

 昨年、発売時の価格があまりに高くて話題になった SIGMA SD1 が、大幅にプライスダウンしました。本来なら APSC サイズの FOVEON 3層構造センサーに関心が集まるはずなのに、70 万円という価格のほうが話題の中心になったのは皮肉な結果でした。

 今回の大幅プライスダウンは、量産効果によるもので、実売価格は 20 万円程度だそうです。お詫びのしるしに既存ユーザーには、シグマ製品 40 万円分のクーポンを進呈するとか・・・
 買う人ぞ買うというか、ほとんどの人が買えない価格帯だったから、出荷台数は少なかったと思います。多分に宣伝費の要素が含まれているとしても、大枚はたいて買ったユーザーには朗報です。

 SD1 に搭載されている3層構造センサーは、23.5×15.7mm の APSC サイズで、4800×3200 ピクセルです。普通なら 1536 万画素と表示するところですが、3層構造なので3倍の 4600 万画素と謳っています。
 この表示には賛否両論あります。FOVEON 以外のセンサーはほぼすべてベイヤー配列で、仕組がまったく違うから、一概にどうとは言えないと思います。少なくとも 1500 万画素クラスのベイヤー配列と比べて、情報量が格段に多いのは確かでしょう。

 前回まで話題にしてきた解像度で言うと、SD1 は 4800×3200 の 1536 万画素が基準になります。RGB が縦に3層重なっているからです。解像度は約 102 本/mm となります。この数値はニコン D800 とほぼ同じです。
 D800 はフルサイズなので、面積では2倍強有利です。SD1 は RGB 3層構造だから、情報量ではいい勝負かもしれません。

 発売時に 20 万円だったら売れたのに D800 が発表された後では・・との声もあるようです。SD1 が発売されたのは、まだ9ヶ月前のことです。たったそれだけの期間で商品の魅力が褪せてしまうというのは、虚しい気がします。「70 万円」で大騒ぎしていたころが、花だったのかもしれませんね。

 SD1 は、ベイヤー配列のセンサーとはひと味違う写りが魅力です。コストダウンで、フルサイズの3層構造センサーが現実味を帯びてきました。もうひと花咲かせる可能性は十分あると思います。

2012/03/09(金)撮像素子の解像度

 この間 Nikon D800E を基準に、分解能や解像力を試算してきました。135 フルサイズでは現時点で最も高画素で、注目度も高いからですが、ほかにも理由があります。まだ未発売で、現実味のある仮想のカメラという点です。実際に試したら違う!と文句を言われないので、仮定の話にはもってこいです。

 高画素だから撮像素子の解像度が一番高いかというと、それは違います。センサーサイズが大きいからです。現時点で最も解像度が高いのは、コンデジなどの小型センサーを搭載したカメラです。
 1/2.3 インチの撮像センサーのサイズは、6.2×4.6mm です。135 フルサイズの 1/30 の面積しかありません。そのくせ 1600 万画素もある機種が出ています。撮像センサーの解像度は 370 本/mm 以上になります。

 ここまでくると、カメラの解像度のほうが、レンズの解像力をはるかに超えてしまいます。レンズが投影する像が相対的に十分甘くなるので、ローパスフィルターは不要です。
 そういう意味ではコストダウンに貢献しているのかもしれませんが、意味のない数字をウリ文句にするのは、天体望遠鏡の高倍率と同じですね。某一流メーカーの 1600 万画素コンデジが、通販サイトで1万円以下で売られていました。インチキ望遠鏡みたいな扱いです。

 このクラスのフォーマットサイズで使えそうなカメラに PENTAX Q があります。レンズ交換ができるミラーレス機です。1/2.3 インチで 1240 万画素と、ちょっと無理していますが、写りはまあまあです。解像度は約 320 本/mm 。解像力の高いレンズとローパスレスで、なんとかバランスをとっているみたいです。
 普通のコンデジでこのくらい写るカメラがあればいいのですが、なかなかそうはいかないようです。コスト的な問題でしょうか? レンズが外れない Q でいいんだけどね。

 えっ? 1/2.3 インチで 1800 万画素が出た!? 裏面照射型センサーらしいけど、そんな高画素にせずに高感度画質のアップを図ればいいのに・・・
 「高画素=高画質」という消費者が、まだ大勢いるんでしょうね。ツァイスのバリオ・テッサー内臓と聞いて、もったいないことをしたなぁと思いました。

2012/03/08(木)レンズの解像力の話

 市販品の焦点距離より長い超望遠レンズについて、他愛もない話をしました。単純計算どおりにならないのは百も承知ですが、長焦点レンズにはそれに見合った口径が必要だと、再確認したかっただけです。
 天体望遠鏡を持っている人なら、簡単に超望遠レンズが作れます。実際に試してみて、分解能の限界を確めてみるのもいい体験です。

 解像力という概念があります。チャートに書かれた細かい線を 1mm あたり何本読み取れるか測ります。撮像センサーの場合は、素子が整然と並んでいるので、計算で割り出した数値を解像度と呼んで区別しているようです。
 ニコン D800E の撮像素子は 135 フルサイズで 7360×4912 ピクセルだから、1mm あたり約 204 ピクセルです。2ピクセルで1本の線を識別できると考えると、102 本/mm の解像度となります。これはリバーサルフィルムの解像力とほぼ同等です。

 FUJIFILM のデータシートによれば、ベルビア(ISO50)の解像力は、低コントラストチャートで 80 本/mm 、高コントラストチャートで 160 本/mm です。プロビア 100F は同様に 60 本/mm 、140 本/mm となっています。
 フィルムと撮像素子では特性が違うし、ローパスフィルターの有無も絡んでくるから、単純に比較はできないとしても、高感度に強いぶんデジタルが優位に立ったのは間違いないでしょう。

 このくらいの解像度になると、レンズの解像力が問題になりそうです。写真工業 1979 年 12 月号に載っていた「50mm F2 クラスの解像力テスト」を紹介しているサイトがありました。ニッコール S 50mm F2 は、開放の平均値 122 本/mm 、F5.6 の平均値 131 本/mm でした。Nikon F 時代のレンズです。
 当時はモノクロフィルムも使われていたので、標準レンズの解像力はそこそこあったと思います。カラーよりモノクロのほうが、乳剤層が薄いぶん解像力が高いこともあり、レンズ性能の評価は解像力至上主義の時代でした。

 単焦点レンズはいいとして、ズームレンズの中にはアラが目立つものがありそうです。フィルム時代にも「ズームは甘い」と、よく言われたものです。ベス単みたいにソフトがウリのレンズもあるから、解像力だけがすべてではありませんが・・・
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