2008/10/01(水)写真家とテクニック

 すでに亡くなられましたが、写真家の林忠彦氏(愛称チューさん)に、ストロボを離して使うテクニックの写真を見せてもらったことがあります。写真集のために長崎でロケしたときの写真です。

 夜の外人墓地で、十字架の墓標をストロボで照明していました。シャッターを開けっ放しにしておいて、次から次へと墓標を照らしていきます。ストロボは、もちろん助手が焚いてます。

 シュールでなかなかいい写真でしたが、写真集「長崎・海と十字架」には載せませんでした。苦労して撮ったのに、もったいない感じです。
 理由を聞いたら、「あまりテクニックに走ると、緑川洋一の写真みたいになるからなぁ」との返事。敢えて外したんだそうです。

 緑川洋一氏は、地元岡山を中心に活躍した写真家(兼歯科医師)です。RGBフィルターを使って三色分解した瀬戸内海の写真は有名です。
 仲のいいライバル同士でしたが、変なところで意地を張ったようですね。

 林忠彦氏の写真集「長崎・・」には、定番の石畳の写真が載っています。雨にしっとり濡れた石畳です。
 緑川洋一氏が長崎を訪れたときは、あいにく(?)晴天で石畳は乾いていたそうです。でもやはり石畳は雨に濡れていないと・・と、坂の上から下へと水を撒いていきました。撮影位置に戻ってきたときには、石畳は乾いていたとか・・・

 「緑川はすぐに小細工をするからなぁ」とチューさん。自分の写真は、雨が降るまで待って撮ったそうです。テクニックだけでは自然に勝てない、というスタンスです。
 二人ともすでに鬼籍に入られましたが、テクニックに対する考え方の違いが、それぞれ作品に現れています。「オレ流」を貫いた写真家でした。
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