2009/09/15(火)銀塩の終焉はムービーから

 小型映画用のフィルムで現在でも入手可能なのは、Kodakのスーパー8と、FUJIFILMのシングル8です。16mmフィルムは、入手が難しくなりました。

 シングル8は、すでに製造も現像も打ち切られているはずでしたが、熱心な愛好家の訴えが実って、かろうじて延長されました。Kodakのスーパー8は、コダクロームの供給と現像を打ち切っています。(エクタクロームは入手可能)
 いずれにしても、なくなるのは時間の問題です。

 小型映画のカメラは、一部の機種で1コマ撮りができたので、アニメや粘土キャラの撮影に使われていました。最近では、パソコンでコマ編集ができるようになって、その優位性はなくなりました。
 フィルムを使ったムービーの特徴は、銀塩独特の味を云々するくらいです。

 アマチュア相手の写真教室で、「フィルムで写真を撮るなんて いいご趣味ですね・・と言われる日がすぐに来る」という話をしたのは、まだ6年ほど前です。皆さん「まさか?」という顔をしていました。
 600万画素のAPSCデジイチが登場したころでしたが、風景写真の「作品」を撮るには、不満足な画質でした。作品志向ならまだフィルムに優位性があった時代でした。
 あのときのメンバーで、いまでもフィルムで撮影している人は、何人いるでしょうか?

 一時とりざたされた、銀塩の「2010年終焉説」が本当だとすると、もう来年の話です。これは FUJIFILMに限った噂ですが、火のないところに何とやら・・根拠のない話ではなかったように思います。
 多少のズレはあるものの、銀塩素材の供給が止まるのは、そんなに先のことではないと予測します。値上げして収支バランスをとるとしても、受け入れられる価格には限度があります。

 デジイチを買うならどの機種に・・なんてことを考える前に、手持ちの機材を活用して、銀塩フィルムを堪能することに徹したほうが、人生を有意義に過ごせる気がしてきました。いまのうちです。
 8mm映画の人は、一足先に往くことになるかもしれません。待っててね、すぐにあとで行くから・・・

2009/09/14(月)映画の撮影用はネガフィルム

 135フィルムは、ライカが 35mm幅の映画フィルムを流用したことに由来するのは、有名な話です。35mm映画(24x17mm)の2コマ分を使って、24x36mmで使いました。

 映画用のフィルムはリバーサル(透明陽画)だと思い込んでいる人がいますが、実は撮影用の映画フィルムはネガです。ネガ原板から転写して、映写用の透明陽画フィルムを量産していました。
 すぐに結果を見るために、簡易に透明陽画にすることを「ラッシュにかける」と言います。実際に映写するフィルムよりも安価なラッシュフィルムを転写に使いました。

 メーカー系総合ラボが全盛の時代に、135ネガからラッシュフィルムに転写するサービスがありました。現像に出すと、ネガとポジが同時に手に入ります。プリントしなくても画像が確認できるだけで、リバーサルフィルムで撮影するのとは画質が違います。現像料が割高なこともあって、すぐに姿を消しました。

 一般ユーザーがラッシュフィルムを目にする機会があるとしたら、香港など観光地で土産物として売られていたスライド写真です。ネガ原板から大量に複製できるから、値段は安かったですね。リバーサル原板からデュープリケーティングフィルムで複製したら、高いものにつきます。

 小型映画フィルムには 16mm幅もあります。16mm映画フィルムを利用したのは、ミノルタ16などの豆カメラだけではありません。ダブルエイト(W8)と呼ばれた小型映画用カメラにも使われました。(16mmとW8ではパーフォレーションが異なります)
 短く切ってリールに巻かれた16mmフィルムを暗室で装填します。片側半分を使って撮り切ったら、暗室で反転させて残りの片側半分を撮ります。現像に出すと真っ二つに裁断してつないでくれます。8mm映画として映写しました。25フィート×2で 50フィート、約4分です。

 16mmフィルムは、そのほとんどが製造中止になりました。業務用のムービーがビデオシステムに替わってしまったからです。W8はスーパー8やシングル8よりも前の規格で、すでに需要はありませんでした。
 最後までW8カメラを使っていたのは、自動織機など高速で動く機械のムーブメントを点検する会社くらいです。中古を探しては使い続けていたようですが、フィルムがなくなっては、どうしようもありません。(欧州で供給しているメーカーがあるらしいですが・・)

2009/09/13(日)銀塩写真は化学の世界

 フィルム全盛時代に暗室にこもっていた人でも、処理液を自分で調合したことは、まずないと思います。当時は、いろんなメーカーから既製品の現像処理剤が供給されていました。

 基本になったのは、コダックの処方箋です。フィルム現像用のD-76、印画紙現像用のD-72など、ほとんどの処理剤は、薬品の組成が公表されていました。
 例え製造中止になったとしても、単薬を買い集めれば再現することは可能です。上皿天秤などの必需品は要りますが・・・

 手元に写大の「HANDBOOK '75」があります。誰かにもらったんだと思います。軟調現像液として、Levy氏処方のPOTA処理が載っていました。
 1リットルあたりフェニドン 1.5g、無水亜硫酸ナトリウム 30gというのは一緒です。「コピーフィルムに対し、SS級と同等に軟調現像され、被写体光域の極大なるものに適す。e・g 20度C 4~5分でガンマ0.6~0.8 ASA2~6相当」とあります。

 POTA処理は、組成は同じでも現像時間や露光指数は人それぞれです。作画の目的が違うからです。ASAという感度表記は時代を感じさせますね。当時のコピーフィルムは、現在のHRⅡよりも感度が低めだったと思います。いまは、ISO 2~6よりは高くなっているはずです。

 「酸化セリウム」の先生のところには、コダックの処方が書かれた教本があります。先生の宝物みたいな本で、暇なときにはいつもペラペラめくりながら、「メトール2gにハイドロキノン5gか・・」とブツブツ言っています。
 数字を見るだけで、現像結果が想像できるんですかね。

 モノクロ写真の処理に関する本のほとんどは、この先生に預けてあります。自宅に暗室はもうないから、もしやるとしたら先生の暗室を借りるしかありません。「人質」として、暗室タイマーや全紙のバットも預けてあります。

 この先生、もっぱら興味は赤外フィルムにあるようで、ミニコピーは眼中にないみたいです。超微粒子や高解像力であることと、よい写真とは別モノという考え方です。
 キメの細かさや高画質を重要視するのは、デジタルにかぶれている証しなのかもしれませんね。
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