2012/11/24(土)ズームレンズの焦点系列

 ニッコールレンズ読本・第3集に載っている短焦点域を含むズームは、43-86mm F3.5 だけです。当時ヨンサン・ハチロクと呼ばれたこのレンズは、50mm よりも短い焦点距離から中望遠域までカバーする貴重な存在でした。レンズ読本では「標準レンズよりも広角の 43mm」という微妙な表現です。
 50mm の標準レンズよりも広角には違いないけど、ライカ判の対角線と同じ 43mm を広角レンズというのは無理があります。ちなみに GN 45mm F2.8 は標準レンズの括りに入れています。

 現在では、ワイド専門のズームもあれば、広角から望遠までカバーするものもあります。広角側が 28mm でよければ、高倍率ズームレンズ1本で済ますことも可能です。先鞭をつけたのは、サードパーティーと呼ばれるレンズ専門メーカーのタムロンです。高性能の高倍率ズームがアマチュアの手が届く低価格で供給されるようになりました。
 フルサイズ換算で、ワイド側は 28mm から望遠側は 300~400mm までを1本でこなします。超ワイドズームと組み合わせれば、通常撮影するほとんどすべてのシーンをカバーできます。

 24mm から中望遠までの標準ズームと、中望遠(70~80mm)から望遠(200~300mm)までの望遠系ズームとの2本という組み合わせもあります。 ワイド側が 28mm では物足りない向きには人気がありますが、肝心の 24mm 側が単焦点レンズより見劣りすることもあるようです。価格も高めです。

 ワイドズーム・標準ズーム・望遠ズームの3本を揃えれば、隙間なく埋めることができます。ただし費用がかさみます。フォーマットサイズの小さいカメラなら、レンズの製造コストが抑えられるので負担は少なくなりますが・・・
 とくに拘りがなければ、キットレンズのダブルズームで済ましておいて、必要なら超ワイドだけ単焦点というのが、賢明な選択かもしれません。

 個人的には、ワイド側はなるべく単焦点レンズを使いたいと考えています。歪曲収差や周辺光量不足がズームよりも少ないからです。被写体との距離はフットワークで調節できます。
 一方、望遠系のズームは歪曲収差が目立たず、ポートレート撮影などシャープネスを求めない被写体もあります。それと望遠側はフットワークでカバーできない場合が多いので、ズームレンズが有利です。できれば1本で済ませたいところです。(望遠レンズは長くて重いからね)

2012/11/23(金)単焦点レンズのミリ数系列

 ズームレンズがまだ特殊レンズの扱いだった時代は、交換レンズといえば単焦点でした。一眼レフは標準レンズとセットで売られていました。焦点距離が 50・52・55mm、開放 F 値が F1.4・1.8・2 が一般的でしたが、現在のようにセットレンズがタダ同然、ということはなかったですね。
 標準レンズという概念はライカ判特有のもので、中判や大判にはないそうです。標準レンズという表現をする場合は、ライカ判に換算すると・・・といった程度の意味のようです。

 ニッコールレンズ読本(第3集)には、「焦点距離には少なくとも2倍近い差がないと、実用上あるいは作画上大した効果は期待できない」とあります。「焦点距離がほぼ倍々になるシリーズを選ぶのが賢明 」として、「たとえば 20、35、85、135、300、600、1200」、「あるいは 15、24、50、105、200、400、800、などの組み合わせが考えられる」としています。

 望遠系は、持ち運びのことを考えるとお説のとおりでもいいとして、ワイド系は少々乱暴な言い分のように思います。個人的には、広角系は標準レンズの 0.7 倍、望遠系は2倍を基準にしています。
 50mm を基準にすると、17、24、35、50、100、200、400mm という系列です。ワイド系をもう少し粗くして、20、28、50mm という選択もアリです。足で距離が稼ぎにくい望遠系を細かくして、50、85、135、200、300mm も選択肢のひとつです。

 当時、ニッコールで揃えたのは、標準レンズが 55mm F3.5 マクロ、ワイド側がひとつ跳んで 24mm F2.8、望遠側は 105mm F2.5 です。後から 200mm F4 を追加しましたが、35mm は懐の都合で買わずじまいでした。これが後々作画に大きな影響を及ぼします。24mm の感覚がワイド系の「標準レンズ」になってしまいました。人間は、なければないで、なんとかなるよう工夫するものです。

 どういう系列で揃えても個人の自由ですが、レンズ本数が増えるほど、持ち運ぶ機材の総重量が増えることになります。と同時に、投資金額もかさみます。当時の売れ筋は、ワイドレンズが 28mm、望遠レンズは 135mm でした。標準レンズと合わせて3本持っていれば、写真愛好家の仲間入りです。
 いまならズームレンズ1本でカバーできる領域です。追加の交換レンズが売れないはずですね。

2012/11/22(木)ニッコールレンズ読本の話_2

 手元にあるニッコールレンズ読本は第3集です。Nikon F2 の購入者に無料配布されたものです。価格改定に備えてか、レンズのメーカー希望価格は、綴じ込みの一覧表にも見当たりません。220°の魚眼レンズ 6mm F2.8は、いくらしたんでしょうね。
 価格は載っていませんでしたが、スペックは細かく記載されています。鏡筒の直径が 236mm、重さが 5.2kg となっています。化け物みたいなレンズです。

 こんな特殊なレンズを設計できるのに、ズームレンズはまだ開発途上でした。39 本のうちズームはたったの4本です。スペックを見てみると・・・
 43-86mm F3.5 重量 410g
 80-200mm F4.5 重量 830g
 50-300mm F4.5 重量 2270g
 200-600mm F9.5 重量 2300g

 ニコンの露出計は開放測光できるのが F5.6 までだったので、200-600mm は絞込み測光になります。開放値は暗くても望遠系はなんとか揃っていましたが、ワイド系がないですね。43mm はライカ判の対角線だから、ワイドとは言えないでしょう。
 当時、日本光学の人が「28mm から望遠領域までカバーできるズームがあればいいけど、それは夢物語」と言っていたのを覚えています。あのころはまさに夢でした。ヨンサン・ハチロクが精一杯だったみたいです。

 そのころのズームレンズは、重い・暗い・高いの三拍子が揃っていました。買えたのはよほどのお金持ちか、予算のある企業の業務用途くらいです。写りも単焦点レンズと比べて満足のいくものではなかったと思います。
 レンズ読本では、超望遠レンズの次に「ズームレンズのはなし」として紹介されています。まだ特殊レンズの扱いでした。

 ワイド系のズームは 1975 年発売のニューニッコール 28-45mm F3.5、ワイドから望遠は 1977 年発売の Ai ニッコール 35-70mm F3.5 からです。初期の 35-70mm はフィルター系が 72mm の大きなレンズでした。のちの Ai-S 35-70mm F3.5 はフィルター径が 62mm。F3.5-4.5S はフィルター径が 52mm とコンパクトです。
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