2012/05/13(日)皆既日食の魔力

 一度でも皆既日食を体験した人は、また見たくなると言います。日食のたびに海外に遠征しているのは、こうした部類の人たちみたいです。皆既日食には、体験した者にしかわからない不思議な魔力があるようです。

 どこが魅力なのか、よく耳にするのは、皆既状態になったときの神秘的な闇と、再び太陽が現れるときの感動だそうです。昼間でも星が見えるというから、神秘的なのは間違いないと思います。
 太陽の光が遮られるから、一時的に気温が下がるでしょう。その場にいないとわからない変化もありそうです。

 昔、日食観測ツアーをやった望遠鏡販売店の人に、後日談を聞いたことがあります。観測ポイントはフィリピンのとある島でした。
 広いグランドの真ん中に日本人ツアー客がいて、その周りを銃で武装した警官隊がグルリ囲んでいたそうです。外国から高価な機材を持ってきた人たちに、万一のことがあってはいけないとの配慮です。そしてその周りを地元住民が取り囲み、3重構造だったとか・・・

 現地の人たちは、日食よりも日本人ツアー客のほうに興味があったのかもしれません。いずれにしても異様な光景だったと言います。いちばん異様に見えたのは、観測機材を必死で操る日本人の一団だったかも?

 今回の日食は、皆既日食ではなくて金環食です。月の周りから太陽の光が漏れるから、暗闇にはなりません。空は明るいままです。下を向いて仕事をしていたら、金環食になっても気がつかないかもしれませんね。

 このあと 11 月 13 日にオーストラリアで皆既日食があります。来年 5 月は金環食。11 月には金環皆既日食という珍しい事象があります。月と太陽の見かけ上の大きさが、ほぼ同じときに見られる現象です。当然、皆既になる時間はかなり短くて、過去にはたったの1秒なんてこともあったとか・・・

2012/05/12(土)日食と月食どちらが珍しい?

 日ごろ天文事象に興味のない人でも、日食と月食のときには、にわか天文ファンになります。皆既月食で、市中の天体望遠鏡が売り切れたこともありました。この際なんでもいいと、地上用のスポッティングスコープまで売り切れたとか・・・
 地上用を買った人は、ある意味では正解でした。倒立逆像の天体望遠鏡と違って、まだ日常での使い道があります。

 日食と月食のどちらが多いかは、事象が起こるたびに話題になります。一般的に日食のほうが頻度が多いとされています。
 日食は、回数が多くても見られる地域が限定されます。その点、月食は、その時間帯が夜であれば、どこからでも見えます。「どちらが珍しい?」という設問なら、文句なしに日食ですね。

 日食は、太陽と地球の間に月が入いる現象です。月の影が地球に落ちれば、そこが日食となります。一方、月食は地球の影に月が入る現象です。このとき月では日食となります。月よりも地球のほうが直径で4倍も大きいから、月食のほうが起こりやすいような気がするのですが・・・
 月の影を投影できる範囲(つまり地球の直径)も広いから、この点では「おあいこ」みたいです。

 実際に 2010 年から 2020 年までの 10 年間に起こる日食と月食の数を調べてみました。部分食まで入れると、日食が 26 回に対し月食は 16 回です。部分食を除いた回数は、日食が 16 回、月食が 10 回でした。いずれも日食のほうが頻度が高いことがわかります。
 ただし、部分食を除く日食の半分は、今回と同じ金環食です。天体観測の対象になる皆既日食は 8 回で、皆既月食の 10 回よりも少ない結果となりました。

2012/05/11(金)日食観賞にススは御法度

 子供のころに日食(部分食)が見られるというので、学校で観賞用のサングラスを作りました。ガラスをローソクであぶり、ススを付ける単純なやり方です。いまでは観賞に不適切な方法とされていますが、当時は学校の理科の授業で教えていたから、隔世の感があります。

 セルロイドの下敷でもよいとされていました。不透明ですが、太陽は透けて見えました。危ない使い方です。とにかく子供が失明してはいけないと、まず裸眼で見ないように説得するのが先だったみたいです。

 写真が趣味の人は、PL(偏光)フィルターや ND フィルターが減光に使えると思いがちですが、効果は期待薄です。太陽観測用に ND400 という濃いフィルターがあります。絞りで8段半ほど暗くできます。これなら大丈夫かというと・・・
 実は濃い赤フィルターなどと組み合わせて使う前提で、わざと露光倍数を抑えてあります。ND400 でも足りないとは、恐るべし太陽。

 PL フィルターを2枚以上重ねて回転させると、どの方向からの光も遮断されて、かなり暗くなる位置があります。これに赤やオレンジのフィルターを併用して紫外線をカットすれば、短時間なら眼視できそうです。
 PL フィルターが1枚しかない場合は、ガラスの反射を利用します。平面性のよいガラスに太陽を映り込ませ、それに偏光をかけます。反射してくる光は振動方向が一定なので、PL フィルターで効率よく反射光の量をコントロールできます。

 いずれの方法も単なる思いつきで万全とは言えません。眼視は短時間(数秒程度)に留めておいたほうがよさそうです。まだ日食グラスが手に入るようなら、そちらをお奨めします。
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