2008/02/02(土)フォーマットと画素数の関係

 デジタルカメラの高画素化が進んでいます。ケータイでも500万画素のカメラ機能を搭載した機種が現れました。手元にあるコニカミノルタのα7デジタルは、600万画素ですから、図体はデカいのに100万画素しか違いません。画素数はどこまで上がるんでしょうか。

 一般ユーザーがデジカメの性能を比較するときに、画素数を基準にしているケースは多いと思います。一番とっつきやすい数字ですから、無理もありません。でも、写した画像の良し悪しを決めるのは、画素数だけではないんですね。
 画像を取り込む撮像板(CCDやCMOS)のフォーマット(大きさ)が、大事な要素であることを知っているひとは、意外と少ないようです。同じ1000万画素でも、コンパクトカメラに搭載されている小さな撮像板と、一眼レフに搭載されている大きな撮像板では、写りが違います。
 大きな撮像板なら、1画素あたりの面積を大きく取ることができます。受ける光の情報量が多いわけです。情報量が多ければ、無理なく感度を上げられます。ハイライト(白)からシャドー(黒)までのダイナミックレンジ(再現能力)が広く取れます。白トビしにくいわけです。

 話題の500万画素ケータイのCCDがどのくらいのフォーマットかは、ソフトバンクのWEBページを見ても載っていませんが、コンパクト型デジカメの半分かそれ以下であることは想像できます。デジタル一眼レフのCCDとは比較にならないくらい小さいわけです。当然写りも違います。

 出始めの30万画素の時代から、撮像板の大きさはそれほど大きくなっていません。大きくすると基板のシリコンセルの歩留まりが悪くなるからだ、といわれています。技術開発は、面積を大きくしないで画素数を増加することに向けられました。
 その結果、ある程度まで大きく引き伸ばしても画面が乱れなくなった反面、ダイナミックレンジをフィルム並に上げるところまではいきませんでした。いくら高画素でも、小さなプリントだとデータを間引きして印刷することになります。画素数は、そのまま引き伸ばしたときに、どこまで大きくしたら画像に乱れ(ジャギー)が現れるかを判断する材料でしかありません。

 現在、最も普及している市販品のプリンタの印刷サイズは、A4サイズ程度です。解像度が300dpiとして、A4サイズで870万画素となります。1000万画素のデジカメなら十分対応できます。(プリンタのカタログに載っている2400dpiとかいう数字は、インクカートリッジ1個あたりの話で、インクの数で割ると300dpiくらいになるはずです)
 ちょっと凝ってるひとは、A3サイズのプリンタを使っているかもしれませんが、こういうひとは一眼レフの愛用者とダブるはずですから、ハイエンド機の画素数は、まだ上がるかもしれませんね。コンパクトカメラ用の撮像板を大きくすれば、一眼レフの画素数は今すぐにでも上げられるはずです。そうしないのは、ダイナミックレンジなど画質に関る問題があるからだと思います。

2008/02/01(金)デジタル用レンズ

 カメラにかなり詳しいひとでも、フィルムで使えたレンズがデジタルで使えない!という原理を理解しているひとは少ないようです。焦点深度や周辺減光など光学理論に関る問題です。

 「被写界深度」という言葉は、少し写真を勉強したひとなら耳にしたことがあると思います。ピントを合わせた面の前後に、あたかもピントが合っているように見える許容範囲があります。このことです。
 被写界深度は、ワイドレンズは深く(広く)、望遠レンズは浅く(狭く)なっています。また、絞りを絞り込むほど深くなる性質を持っています。これは被写体側の話です。

 一方、フィルム面(撮像面)側のピントの許容量を「焦点深度」といいます。プロでも間違えて被写界深度と混同して使うひとがいますが、まったく別のものです。
 焦点深度は、被写界深度と逆で、ワイドレンズは浅く、望遠レンズは深くなります。望遠レンズは、多少のガタつきがあっても写りますが、ワイドレンズでガタがあると、片ボケしたり画面のどこにもピントが合っていない写真になることがあります。

 フィルムには厚みがあります。厚みといっても全体の厚さではなく、乳剤といわれる感光層の話です。カラーフィルムなら青感層・緑感層・赤感層の3層構造になっています。実際には第4層やフィルター層など十数層あるそうです。この厚みのどこかにピントがくれば良いことになります。
 デジタルカメラの撮像板(CCDやCMOS)には、フィルムのような厚みはありません。受光面はただの平面です。ここに正確にピントがこないとピンボケになってしまいます。
 ワイドレンズは焦点深度が浅いので、このギャップが顕著に出ます。フィルム全盛時代に作られたレンズは、デジタル式の撮像板など想定外ですから、どこにもピントが合っていない写真になる可能性があります。

 もうひとつは周辺減光の問題です。レンズの性質で画面中心部よりも周辺部のほうが暗くなります。絞りを絞ると改善されるので、普段は気づくことはありません。
 フィルムは乳剤に厚みがあり、光を透過しますから、斜めからの光でも感光します。ところが、デジタルの撮像板はただの平面で、受光素子はすべて正面を向いています。周辺の斜めからの光は感知しません。周辺減光(周辺光量の低下)が顕著に出ます。

 他にもいくつかありますが、以上のような理由で、フィルムで使えたレンズでもデジタル式だと不都合が生じるわけです。
 デジタル一眼レフが普及し始めのころには、「最近目が悪くなったのかピントが合わない」という話をよく聞きました。目が悪くなったのではなく、もともとピントが合わないレンズを使ったわけで、レンズを換えるしか手の打ちようがありません。
 被写界深度が深いワイド系のレンズを絞り込んで使ったのになぜ? というプロも結構いましたね。焦点深度の原理を知っているひとは、プロでもそれほど多くはありませんから・・・
 そのことをいいことに、フィルム時代のレンズをダンマリでデジタル対応にそそくさと切り替えたメーカーは、ズルイというか商売上手というか・・・ これが食料品なら「偽装」問題でしょうね。

2008/01/31(木)ニコンがトップに

 少し前に、デジタル一眼レフ市場でニコンがキヤノンを抜いてトップに踊り出た、というニュースが流れていました。キヤノン派にしてみれば暗い話ですが、ニコン党にとっては明るいニュースです。

 一眼レフユーザーがメーカーの党派に分かれるのは、銀塩時代から変わりませんね。要因はいろいろありますが、一番大きな要素はカメラマウントだと思います。
 ご存知のとおり、メーカーによって使えるレンズのマウントが違います。ニコンのカメラにキヤノンのレンズは装着できません。虫メガネと違ってカメラのレンズは高価ですから、一旦買い揃えてしまうと、簡単に他社へ乗り換えできません。ボディーを買い増したり買い換えたりする場合は、どうしても同じメーカーの機種を選ぶことになります。

 実は、ニコンが一眼レフ市場でトップのシェアを取ったことは、いままで一度もなかったと思います。昭和40年代はペンタックス、その後キヤノンがトップに立ち、世界初のオートフォーカスでミノルタが大逆転しました。その後はミノルタとキヤノンが抜きつ抜かれつで、最後はキヤノンが制しました。
 デジタル一眼レフが一般大衆に売れはじめる前から、キヤノンがトップシェアを握っていましたから、市中に出回っていたEFレンズは、莫大な数量だったと思います。レンズにつられてデジタル一眼レフの売れ行きもキヤノンが先行しました。ニコンは、いつの時代も二番手か三番手だったわけです。高級機で鳴らしたメーカーですから、当然といえば当然なのかもしれませんね。

 同じメーカー同士ならレンズは装着できます。ただし、完全な互換性があるかどうかは疑問です。どのメーカーも黙っていましたが、フィルムとデジタルではレンズに要求されるスペックが異なります。フィルムではキレイに写っていたのに、デジタルボディーに付けた途端、ピントが合わない、周辺が乱れる・・・といったトラブルが相次ぎました。
 黙って新設計のレンズにせっせと切り替えていたメーカーは、ズルイですね。知らずに特価処分の旧レンズを握らされたユーザーは多いと思います。手持のレンズできちんと写らないなら、別のメーカーの機種でもよかったわけだし・・・
 その点、「頭が固い」ニコンのレンズ(ニッコール)は、デジタルで使えないものは少なかったですね。プロの連中は、デジタルボディーがくるとすぐに全交換レンズをテストしてましたが、かなり古いワイド系でもクリアしてました。

 最近は、35ミリフルサイズのデジタル一眼レフが何機種が登場しています。フォーマットが大きくなると、使えるレンズが限られてくるので注意が必要です。APS-Cサイズ専用のレンズはもちろん使えませんが、フィルムできちんと撮れていたレンズでも、デジタルには不向きのものがありますから・・・
OK キャンセル 確認 その他