2008/11/16(日)父親のモーニング

 和装の結婚式が減って、いまではウェディングドレスが主流です。バージンロードを花嫁と一緒に歩く父親は、モーニングコートというのが相場です。教会式の正装ですね。

 前回、モーニングのベストの色を話題にしたのは、実は協力先のドレスショップ(FUGA)のウケウリです。
 モーニングコートを注文する際に、シルバーグレーのベストとタイで指定したそうです。ウェディングドレス専門店だから、葬祭は関係ありません。黒ベストに白襟は、両方を扱う総合貸衣裳店のやり方です。こだわってますね。

 日本国内なら白襟つきの黒ベストでも何ら問題はありません。グレーベストにしたのは、海外挙式のときに不都合があるからだそうです。
 たとえ白襟つきでも、海外で黒ベストは葬祭用です。この点をはっきり謳っているレンタルショップは少ないように思います。

 モーニングコートは午前中だけ(?)と誤解するひとがいます。確かに日本語訳は「朝」ですが、陽のある日中に着用する衣装と考えればいいでしょう。
 夕刻からの行事には、テールコート(燕尾服)が正装となります。日本でわざわざ着替えるひとは、ほとんどいませんが・・・

 イギリスの結婚式では、ほとんどの男性がモーニングコート姿・・というのが多いそうです。新郎もゲストも皆モーニング姿だから、誰が新郎なのか区別がつかないとか・・・
 挙式本番のときに花嫁の右側にいるのが新郎、ということになります。

 日本の結婚式では、新郎とゲストが紛れるのを嫌います。多分に衣裳店の営業トークが反映しているからかもしれません。モーニングのレンタル料金は安いですからね。売上が上がりません。
 父親と紛れるのを嫌うのか、ゲストでモーニング姿というのもあまり見かけませんね。

2008/11/15(土)親族衣裳の今昔

 映画「男はつらいよ」の1作目に結婚式の場面が出てきます。寅さんの妹さくらの結婚式です。
 映画版の第1作は1969年の封切りだから、40年近く前の世相を反映しています。

 新郎新婦の衣裳は、もちろん和装です。寅さんはじめ、「おいちゃん」やタコ社長も羽織袴姿でした。葛飾柴又の土地柄かもしれませんが、これが当時の結婚式によくある風景だったと思います。

 そんななかで、志村喬が演じた新郎の父親だけが、モーニング姿でした。8年間、親子の断絶が続いて、結婚式の場で再会・・というシナリオです。
 慶事に湧くゲストのなかにポツンとひとり孤立する、父親役の志村喬を際立たせるのに、モーニング姿は実に有効でした。いまなら衣裳は逆でしょうが・・・

 慶事に着るモーニングのベストは、シルバーグレーで、タイもシルバーグレーが正装とされています。
 志村喬が着ていたモーニングのベストは、ブラックでした。黒のベストに白襟をつけた略式です。タイはグレーの縞模様でした。

 白襟つきの黒ベストは、日本独自の礼装です。海外では黒ベストは葬祭用になります。もののない時代に、冠婚葬祭どちらでも使えるようにと、冠婚には白襟をつけて代用したのが始まりといわれています。
 北海大学の名誉教授という設定ですが、衣裳は一般庶民の礼装ですね。

 映画に出てくる衣装や小道具は、時代考証がしっかりとされています。
 山田洋次監督が衣裳の設定にどこまでこだわったかはわかりませんが、あえて正装のグレーベストにしなかったのなら、さすが!と言うべきでしょう。
 和装であれ洋装であれ、寅さんの世界は庶民的なのが一番しっくりきます。

2008/11/14(金)家紋入り婚礼グッズ

 冠婚葬祭に使用する小物には、家紋入りのものがあります。一番ポピュラーなのは、ネクタイですね。

 家紋入りネクタイは、大抵2~3本のセットになっています。用途別に結婚式は白、葬式は黒、法事はグレーです。
 結婚式の集合写真で、白はノーネクタイに見えるのでよくない・・という話題をとりあげたことがあります。でも、家紋入りネクタイの慶事用は、版で押したように白ばかりです。
 白トビしても家紋が残るからいい・・という問題ではないと思います。家紋は自由に選べるのに、素材の色や柄が選べないのは残念です。

 家紋が自由に選べるというものの、既製品もあります。「丸に違い鷹羽」が多いですね。武家らしくて格好がいいからでしょうか?
 とくに自分の家紋がない場合は、既製品で済ますのも手ですが、あえて家紋入りにする意味はないように思います。

 ネクタイ以外にタイピンやカフスボタンにも家紋入りがあります。そこまでそろえるのは、よほど家柄にこだわるひとでしょうね。
 どうせなら、こだわりついでに「ふくさ」も家紋入りにしないと・・ 手土産を包む風呂敷も家紋入りにしたりして・・・

 そういえば、家紋入りの指輪というのもありますね。石のはまっていない彫金の指輪です。いつの時代でも金は富の象徴だから、資産のひとつとして代々継承していくには、いいかもしれません。
 家紋が入っていれば、売り払われる可能性は低そうだし・・・

 映画「男はつらいよ」の寅さんは、「寅」の字を彫りこんだ指輪をしていました。ハンコの代わりです。映画の小道具のなかでは一番小さい部類のものですが、大事なアイテムです。
 寅さんにとっては、家紋の代わりなんでしょうね。いわゆる「私紋」です。
OK キャンセル 確認 その他