2008/11/13(木)地域差がある女紋

 家紋(男紋)とは別に女紋を用いるのは、西日本の風習といわれています。東日本では、女紋を使う風習がなかったせいか、違う家紋を使うことに抵抗があるとか・・・

 女紋は、母親から継承する「母系紋」が主流で、通い婚の風習があった関西に根強く残るのはうなずけます。源氏物語の世界です。
 一方、女性が独自の紋章を使う習慣は、関東が発祥の地という説もあります。関西から嫁いできたひとの風習が定着したケースもあり、複雑な地域模様になっています。

 家紋が権威の象徴だったのは、封建時代の公家や武家社会の話です。婚礼調度品に実家の紋章や女紋を入れて、嫁ぎ先が用意したものと区別する風習がありました。
 男尊女卑の封建社会でも、女性の持ち物に対する所有権は確立していました。たとえ主であっても、奥方の持ち物を勝手に処分することは、ご法度で固く禁じられています。
 財産を持たない一般庶民には、女紋は無用です。家紋も自由には使えませんでした。

 一般庶民に家紋や女紋が普及したのは、明治維新以降です。武家が没落したあとで、「著作権フリー」になった家紋は、誰でも勝手に使えるようになりました。
 勝手に使えるわけだから、何でもいいわけです。(花びらが16枚の十六八重菊の御紋章は天皇家だけですが・・)

 冠婚葬祭で知ったかぶりして家紋を云々するのは、よほどの旧家でもない限りナンセンスですね。母親から継承した女紋を持たないのに、五三桐や蔦は貸衣装そうろうだとか・・・

 家紋の歴史と風習に関するWEBサイトはたくさんあります。女紋については、大宮華紋・森本氏の「女紋研究サイト」で詳しく紹介しています。興味のあるかたは、一度ご覧になるといいでしょう。

女紋研究サイトはコチラから   http://www.omiyakamon.co.jp/onna-mon/index.html

2008/11/12(水)貸衣装の女紋

 和装離れで、結婚式のきもの衣裳をレンタルで済ますひとが増えてきました。いまどき留袖を自前で持っているのは、もともと着物好きか、格式を重んじる家のひとでしょうね。

 FOTO JAPANに資料・情報を提供してくれているドレスショップ(FUGA)では、最近になって留袖のレンタルも始めました。いままで和装のレンタルはしていなかったのですが、要望が多いので母親用の黒留袖だけ置くことにしたそうです。
 仕立てあがった黒留袖を見せてもらいました。裾柄は以前なら40代が着るくらいハデ目です。たとえ自前で持っていたとしても、最新の柄をレンタルしたほうがよさそうですね。

 家紋はまだ入っていませんでした。普通は仕立てる前に染めるのですが、利用が決まってから入れるとか。
 染め抜きだと一旦「背縫い」を外さないといけません。背中の紋だけは、真中が縫い目になっています。レンタル用だから家紋を指定できるわけではないのに・・・
 でも、最初に借りるひとは、新品だから気分がいいでしょうね。

 どうしても自分の家紋にしたい場合は、「張紋」という方法があります。正絹のはぶたいに家紋を染め抜いたシールを使います。
 この店では、張紋は勧めないそうです。正装は染め抜きが原則だし、張紋は厚みがあって違和感があるといいます。紋を貼り直すと数千円かかることだし・・・

 利用日が決まったら、家紋は五三桐で染めるとのこと。最もポピュラーで無難な女紋です。中部から西日本は、豊臣秀吉が桐の紋を家臣にばら撒いたこともあって、広く使われている紋様です。

 蔦(つた)は、繁殖力にあやかって花嫁の紋章によく使われますが、ほかの木に絡みつくことから商売人や遊女が好んで使ったとか・・・
 揚羽蝶(あげはちょう)も代表的な女紋です。さなぎから蝶に変身する姿を嫁ぐ身に重ねたともいわれています。どちらかというと、花嫁向きですね。

 やはり母親の留袖の紋様は、五三桐が一番無難のようです。

2008/11/11(火)留袖の家紋と女紋

 以前にも話題にしましたが、結婚式に登場するマークに「家紋」があります。
 和婚が減ったので、紋付姿は少なくなったものの、ご婦人方は和装が多いですね。家紋の入った留袖です。

 留袖は、慶事の礼装として昔から使われてきました。親族の既婚女性は黒留袖、未婚女性は色留袖というのが一般的な使い分けです。(若い娘なら振袖でも礼装になります)
 五つ紋の黒留袖が最高礼装です。色留袖でも五つ紋なら同格とされていますが、母親は黒留袖が圧倒的に多いですね。

 地方の地主の息子が結婚したときには、新郎側親族の女性全員が黒留袖、新婦側親族の女性全員が色留袖だったそうです。
 その土地の習慣なのか、事前に話し合ってそう決めたのかはわかりません。新郎側を立てるために、新婦側は色留袖にして一歩引いたのかもしれませんね。

 留袖の家紋は、家の家紋とは限りません。普通「家紋」というのは男紋で、女紋は別の場合があります。
 もうひとつ、貸衣裳で済ましていたら、家紋が合っているかどうかわかりません。最近では、和装離れでレンタル衣裳を利用するひとが増えています。

 貸衣裳の留袖によく使われる家紋があります。代表的なものは五三桐(ごさんのきり)です。中央の花が五つ、両脇の花が三つの桐の紋様です。
 鳳凰がとまる木とされる桐の紋様は、朝廷の菊の御紋に代わる替紋(五七桐)で、古くから将軍家に下賜されてきました。織田信長は室町幕府の足利家から、豊臣秀吉は朝廷と信長から拝領しています。(徳川家康は下賜を断ったとか)

 簡略形の五三桐の留袖は、親族や知人の間で貸し借りしてもよいことになっています。ほかにもその土地で習慣的に使われてきた家紋があります。
 早とちりして、留袖の家紋をアップで・・なんてのは、やめといたほうがよさそうですね。
OK キャンセル 確認 その他