2008/09/20(土)掌サイズの反射式望遠

 タムロンのSP500mm F8は、写りがよいだけでなく、近接撮影能力が高いレンズでした。最短撮影距離は1.7mです。500mmで1.7mというのは驚異的でした。
 マクロ比率でいうと1:3に相当します。1.7mの距離で人物を撮影すると、口元だけがアップで撮れる計算になります。

 このカタディオプトリー系のレンズは、もし売れなかったら会社が潰れる!くらいの開発費が掛かったそうです。幸いヒットしてよかったですね。
 のちにライバルのトキナーからも500mm F8の反射式望遠レンズが発売になります。サイズはタムロンよりも、やや小ぶりでした。最短撮影距離は確か1.5mだったかな。後発ですが意欲的な設計です。

 タムロンのひとに感想を聞いたら、煮え切らない返事です。どうやら開発者を引き抜かれたみたいで、批判すれば「天に唾」ということのようです。
 コンパクト化した代わりに、最短撮影距離の実効F値がかなり落ちるということだけは、指摘してました。写りは悪くないとの評価です。

 タムロンからは、SP500mm F8のほかにSP350mm F5.6という反射式望遠レンズも発売されました。数があまり売れなかったのと、後玉に傷がつきやすい構造だったため、まともなレンズは中古市場を探してもなかなか見つかりません。
 発売当時に買っておけばよかったかナ? いまは昔の話ですが・・・

 ミノルタから250mm F5.6という掌サイズの反射式レンズが出てました。いまのアルファマウントではなく、MDマウントのレンズです。
 このレンズはあまり売れなかったように思います。250mmというのが中途半端だったからですかね。250mmにしてはF値も暗かったし・・・
 しかし、数が売れなかったということは、中古市場では人気が上がる要素です。一時は現役時代の定価よりも高値で取引されていたようです。

2008/09/19(金)カタディオプトリー系

 反射式のレンズは、焦点距離が比較的長い望遠レンズに採用されました。500mmとか1000mmとかの超望遠レンズです。
 光路を折り返す構造なので、レンズの鏡筒を短くすることができます。

 反射式レンズを大きく発展させたのは、カタディオプトリータイプ(特殊光学系)の登場です。タムロンが開発したSP500mm F8は画期的なレンズでした。
 マンギンミラーという裏面コートの反射鏡を使っています。反射鏡そのものが屈折レンズの役割を持っていて、屈折-反射-屈折を1枚の鏡で行なうタイプです。
 収差の補整と全長の短縮が一石二鳥でできるようになり、掌サイズの超望遠レンズが実現しました。

 このレンズは、ただ小さくて軽いだけでなく、写りも抜群でした。副鏡の回折による画像の乱れが少なく、実にシャープな画像です。完全にボケたらリング状のボケになるのは、他の反射式レンズと同じですが、反射式特有のボケ味の汚さは感じません。

 当時、世界で最高峰の反射式レンズは、カールツァイスのミロター500mm F4.5でした。カタディオプトリー系のレンズで、価格は約270万円しました。
 タムロンのSP500mm F8は、その次にランクされていました。数万円で買えたから、庶民の感覚でいえばこちらが一番です。

 発売当初のモデル(55B)は、レンズ基部に着脱式の三脚座がついていました。ところが、すぐに55BBにマイナーチェンジです。
 ミラーショックもシャッターショックも、ボディー側で発生します。あまりに軽いレンズだったので、カメラボディーのほうを雲台に固定したほうがブレにくいという理由からでした。

 55BBからは三脚座をやめて、ボディーに下駄を履かせるスペーサーが添付されました。レンズとボディー底面の高さを調節して、レンズの底面が雲台に当たらないようにするためです。

2008/09/18(木)反射式望遠レンズ

 光学ガラスを使ったレンズには、色収差があります。光の波長によって焦点を結ぶ位置が違うので、色ズレが生じます。焦点距離が長い望遠レンズほど、この色ズレが大きくなります。

 撮影用のレンズは、屈折率の違うガラスを組み合わせて、この色収差を補整しています。
 天体望遠鏡でも同じです。赤と青の合焦位置をあわせたものを「アクロマート」、赤青緑の合焦位置をあわせものを「アポクロマート」といいます。交換レンズに「アポ」や「アポテレ」という名前がついているのは後者のタイプです。

 一方、反射鏡を使った望遠レンズには色収差がありません。屈折と違って、光の反射には色ズレがないからです。前面に副鏡を固定している補整レンズがあるから、色収差がまったくないわけではありませんが、すべてガラスでできた望遠レンズに比べれば微々たるものです。

 反射鏡は球面鏡なので球面収差があります。それを補整するために前面に補整レンズを使います。この補整レンズの中央に副鏡をはめこんで、集めた光を再度反射させてカメラに誘導する仕組みになっています。
 天体望遠鏡でいうシュミットカセグレン式と同じ構造です。ニュートン式は放物面鏡だけど、90°横が写るレンズでは実用性がありません。

 反射鏡の表面メッキには、銀メッキとアルミメッキがあります。一眼レフのミラーやペンタプリズムにも、同じようにメッキが施されています。真空蒸着という技法です。
 銀メッキのほうが反射率がいいのですが、劣化が早いという欠点があります。

 現在のように表面コートの技術が発達していなかった時代に作られた反射式レンズは、メッキが蒸発したり錆びたりして、反射率が落ちている可能性があります。
 中古のレンズを買うときは、型式と製造年を確認したほうがよさそうです。
OK キャンセル 確認 その他