2008/09/14(日)CM写真は多ショット

 コマーシャルフォトの現場を見たひとは、そのショット数の多さに驚かされます。一流モデルを使ったポスターの写真ともなると、たった1カットのために数百ショットを費やすことも珍しくありません。

 高校時代に、テレビ番組でCMスタジオの撮影風景を見たある教師が、「篠山紀信かなんか知らないが、あんなにたくさん撮るなら誰だってプロになれる」と授業中に放言したことがあります。
 その一言を聞いて、例の「酸化セリウム」の先生(当時は生徒)は怒りましたね。大論争になって、その授業は潰れてしまっとか・・・
 このころからプロの写真家を目指していたようです。

 当時の学校も荒れていましたが、いまみたいな荒れ方とは一風違ってました。先生方に俗な意味で人間味がありました。
 こわもてタイプの先生で熱烈な巨人ファンがいて、巨人が勝った次の日の授業は、いつも潰れてました。「今日はダメだぞ!」と宣言していても、「先生、昨日の長嶋は・・」という声があがると、もう解説が止まりません。実質的な授業は10分か15分でしたね。(おっと、こちらも話が脱線)

 街の写真館で使うフィルムは、大抵ブローニー1本程度です。6X7判なら10カットです。この中から2~3カットを選んで台紙貼りします。コマーシャルフォトに比べれば、ずいぶん少ないショット数です。
 それだけ撮影内容が濃いといえばそうだし、1ショットにかける集中力が違うといえば、そう言えなくもありません。でも、一番の違いは、写真1枚にかけるお金の桁でしょうね。

 デジタル時代になって、フィルムと現像のコストがなくなりました。さぞかし儲かるようになったと思うのは見当違いです。多くのコマーシャル写真家は、職を失いました。
 多ショット撮影が安く済むようになった反面、確実に結果を出せる写真家はコスト高として敬遠されるようになりました。高校時代の教師が放言したように、誰でも「プロ」になれる時代がきたわけです。

2008/09/13(土)選挙ポスターの写真

 「酸化セリウム」の先生に選挙ポスターの写真撮影を頼みにくるのは、かの代議士だけではありません。地元自治体の首長からも依頼があります。
 候補者が高校時代の同級生ということもあり、広告代理店を通さずに依頼がきます。

 例によって、政治家は「アブラギッシュ」でなければならないと、わざと照りを入れて撮ったのですが、印刷の段階ですべて「きれい」に修整されてしまいました。
 「デザイナーは何もわかっていない!」と息巻いてましたね。撮影は、いつも「お忍び」だから、取り巻きはついてきません。撮影段階で細かな打合せをしていないので、制作側に真意が伝わらなかったようです。

 前回の選挙でも撮影依頼がありました。コマーシャルフォトから足を洗ってしまったので、アシスタントがいません。「フィルムを詰めるやつがいない」とブツブツ言っていました。
 家内は「あのひとプロなんでしょ!フィルムも詰められないの?」と怪訝な顔をしています。そういう意味じゃないんだけどなぁ・・・

 先生の同級生ということは、私の同窓生でもあります。別に親しいひとではないけどね。先生に、「選挙に落ちれば彼もただのひとだ」と言ったら、「選挙で落ちても彼は友達だ」というので、手伝うことにしました。
 選挙で1票を投じるかどうかは別にして、友情は大事にしないとね。対立候補に票を入れないという選択肢もあることだし・・・

 なんだかんだで、1時間半の間にブローニーを30本ほど流して無事終了です。撮り出したらスピードが速いですね。予備のホルダーにフィルムを詰めるのが間に合わないくらいです。
 現役を引退しても、身に染み込んだテンポは変わりませんね。
 

2008/09/12(金)政治家の顔写真

 福田首相の突然の辞任で、総選挙が近そうです。選挙になると需要が発生するのが、選挙ポスターの写真撮影です。
 「酸化セリウム」の先生のところにも、選挙ポスター用の顔写真を頼みにくる政治家がいます。

 ずいぶん前に、若手候補者の顔写真を撮ったときは、かなり手間暇をかけました。一度撮影したあとで原板をチェックしていて、「どうも気に入らない」と、自分から再撮を申し出たそうです。
 写っているのが「ただの若造」にしか見えなかったのが、不満だったと言ってました。

 いろいろ考えた結果、政治家に必要なものは、きちんとしたきれいなメイクではなく、エネルギッシュを感じさせる脂ぎった照りだという結論に達しました。要するに「アブラギッシュ」でなければならないわけです。
 2度の撮影で使ったフィルムは、ブローニーで100本を超えたとか・・・

 選挙ポスターがよかったのか、この若手候補者は国会議員に当選です。
 地方の選挙は別として、国政クラスの選挙ポスターは、電通などの大手広告代理店が請け負うのが普通ですが、このときは違ったそうです。当選経験のない若手の候補者だから、ツテを頼って依頼がきたのだと思います。

 その後、解散総選挙になるたびに、ポスターの撮影依頼が続いています。コマーシャルフォトから足を洗ったので、広告代理店からの仕事はすべて断っていますが、この政治家からの依頼は受けているそうです。
 撮り直しまでやった結果、初当選できたので、意気に感じた以外にゲンを担いでいるのかもしれませんね。
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