2008/09/11(木)モノクロ写真の印刷

 印画紙でのプリントと印刷では、結果が違って当然です。でも、カラー写真は色がついているので、ある程度の「ごまかし」が効きます。色彩の微妙な違いがわかるひとは少ないですからね。
 ところが、モノクロ写真は、写っている内容以前に「焼き」が評価の対象になる世界です。プリント結果が命といっても過言ではありません。

 「酸化セリウム」の先生が、写真集の仕上りで印刷屋とひと悶着やったのは、この世界の話です。
 モノクロ写真は、「黒の締まりと白の抜け」といわれるように、トーンとコントラストのバランスが重要です。プリント原稿にできるだけ近い結果を出すようにするのが、印刷屋の腕の見せ所です。刷った直後とインクが乾いた後とで結果が変わります。

 今回の騒動は、この読み違いも関係しているようです。
 モノクロ印刷は、刷った時点ではトーンが沈みがちです。紙にインクが馴染んで乾燥すると、反射率が変わって明るくなります。その分を見越して濃い目に印刷したのがアダになったみたいです。
 経費をケチって、本刷りと別の機械でテスト刷りしたのも影響したようですが・・・

 モノクロ写真に精通した本職のプロが撮影した場合は、かなり綿密な打合せが必要です。会報などの記録写真ならある程度ラフに扱っても問題ありませんが、作品として提出された写真は、本人が納得できる結果でないとクレーム問題に発展します。

 予算とコストの関係で、ややもすると手抜きが生じます。経費を抑えるのもテクニックのひとつですが、結果が悪ければ手抜きといわれても仕方ありません。
 窓口になった担当者が、写真家と知り合いだったのが、かえって中途半端な結果を招いたのかもしれません。プロの仕事に甘えは禁物です。

2008/09/10(水)能楽堂の色温度

 「酸化セリウム」の先生が、狂言師の写真集をモノクロ印刷にしたのには、いろいろ理由があります。
 能楽堂は照明が普通の舞台と違うので、カラー写真に不向きな被写体です。狂言師の好みによって、タングステン光の照明を暗く落とすことが多いからです。

 照明を暗くするには、通常スライダックで電圧を落とします。狂言師によっては60Vか65Vまで下げることがあるそうです。当然、色温度も下がります。
 狂言や能は、焚き木程度の明かりで見ると雰囲気が出ます。2000K台の照明下でフィルム撮影は、ちょっと厳しいですね。デジタルカメラの出番です。

 ところが、この先生はアナログ人間なので、撮りはじめのころはフィルムで撮影していました。色温度変換フィルターをかけておいて、足りない分をプリント時に再補正するやり方です。
 そのうち、色の濁りが解消しきれないカラー写真よりも、モノクロのほうが雰囲気があって狂言に向いていると判断したようです。自分で現像・プリントできるから、仕上りもいいしね。

 デジタルカメラは、Finepix S2proを持っていたので、デジタルのカラーデータもたくさんありました。こちらもモノクロに変換して使いました。
 御曹司が、モノクロのデジタル写真を研究していたのが役に立ったようです。印刷屋に渡したデータは、完全原稿だったとか。

 それが全く違う濃度の刷り上りになったもんだから、先生は「大噴火」です。テスト刷りは良かったのに、製本前の本刷りはかなり濃かったみたいですね。
 「あれはあくまでもテスト刷りだから・・」というのが印刷屋の言い分ですが、「何のためのテストだ!」と怒りが収まりません。経費節減のために本刷りとは別の機械でテスト刷りしたのが原因かも?

2008/09/09(火)白黒印刷の写真集

 先日、久しぶりに「酸化セリウム」の先生のところに行ってきました。イルフォードから、SFX200という赤外のモノクロフィルムが出るという話をしたら、「それはありがたい」と喜んでました。知らなかったようです。

 写真業界が崩壊して、そういう情報が入りにくくなっているみたいです。いま出入りしている商社の営業マンでは、ホットな情報は提供できないようですね。
 頼まれた材料を納めて、月末に集金に来るだけだそうです。まぁ、それが普通なのかもしれませんね。

 赤外フィルムを使った作品でそのうち個展をやると聞いてましたが、どうやら御曹司に先を越されたようです。東京のコニカミノルタプラザで11月下旬から写真展をやるとの案内状が届いてました。
 御曹司は、赤外フィルムではなくてデジタル写真です。インクジェットプリンターを使ったモノクロ写真で、紙に表面加工して独特のテクスチャーを出しています。若い世代は自由で独創的ですね。

 親の先生は、ちょっと前まで狂言師の写真集を作っていて、そちらに掛かりきりだったそうです。テスト印刷(色校)と刷り上りが違っていて、印刷屋とスッタモンダしたとか。
 モノクロ印刷ですが、カラーよりもモノクロのほうが仕上りにシビアです。白と黒しかないので、濃度やコントラストのちょっとした違いが、作品の品位を左右します。ガンマ1違ったらもうダメだ!と息巻いてました。

 狂言師の写真集は、何百部か刷るそうです。狂言の会の会員に配るために作ったもので、非売品です。
 撮影者の名前が出る以上は、納得できない印刷物を渡すわけにはいかないとか。その気持ち、よくわかりますね。
OK キャンセル 確認 その他