2008/04/05(土)ストロボの色補正2

 ストロボにフィルターをかけるという発想は、普通はないですね。レンズの前につけるのが一般的な使い方です。

 手元にあるcokin(コッキン)のフィルターのなかに、ストロボ用とレンズ用がセットになっているものがあります。現在ケンコーが販売している83mm角ではなく、ひとまわり小さい古いタイプのものです。
 レンズ用の色と逆の色(補色)がセットになっていて、一方をストロボにつけることで、面白い表現が可能になります。

 夕焼けを強調するためにオレンジ色のフィルターをレンズの前につけたとします。当然、画面全体がオレンジ色になります。もし、近くに人物がいたら、人物もオレンジ色になってしまいます。
 補色のフィルター(シアングリーン)をストロボにつけて撮ると、ストロボ光が届く人物だけはオレンジ色と相殺されて、普通の発色になります。結果として、遠景はオレンジ色、人物は普通の色になるわけです。

 実際には、この理屈どおりにはいきません。ストロボ光の効き具合によって微妙に発色が変わります。完全に一致して普通の色になるよりは、少しオレンジ側にズレたほうが自然な感じですね。

 コマーシャル系のプロは、こうしたテクニックをよく使うようです。cokinみたいな濃いフィルターを使うことは稀で、5%かせいぜい10%程度の淡い色が多いですね。
 植物の緑を強調するために05GのCCフィルターをレンズにつけ、ストロボに補色の05Mをつけて人物だけに当てる・・なんて使い方をするわけです。
 問題は、ストロボの影になる部分に05Gのグリーンが残ることです。これを打ち消すために、影の部分にマゼンタがのるフィルム(例えばVelvia)を使って、現像時の増減感をいくつにするか、というところまで計算するそうです。

 お金が取れる写真というのは、相当な手間暇とテクニックが要りますね。

2008/04/04(金)ストロボの色補正

 ストロボは、夜桜の撮影にもよく使われます。

 うんと絞り込んでおいて、シャッターが開いている間に何発か光らせる方法もあります。カメラ位置からではなく、桜の木の近くで場所を変えながら手動で発光させるわけです。助手が要るけどね。

 ライトの光は定常光なので、風が吹くと枝がブレて写ります。ストロボ光は瞬間光なので、ブレません。両方ミックスすると、動きのある写真が撮れます。
 このとき問題になるのは、ライトアップの照明とストロボの色温度が違うことです。小型ストロボの色温度は太陽光と同じか、やや高めです。ライトアップの照明はタングステン光が多いので、発色が異なるわけです。

 フィルムでの撮影は、使うフィルムによって色温度が決まります。一般的なものはデーライトタイプです。太陽光やストロボ光を基準にしています。(注:前回紹介したCDUⅡはタングステンタイプです。)
 デーライトタイプは、ストロボの光が基準になるので、色温度変換フィルターを使うのは無理が生じます。ライトアップの黄色っぽい光が混ざった画像を狙うしかありません。

 デジタルカメラは、色温度が変えられるので、少し事情が変わります。ホワイトバランスをタングステン(電球)モードにすれば、ライトアップの照明を基準にすることができます。
 このモードでストロボを使うと、青い発色になるので、ストロボの前に色温度変換フィルター(LBA12)をかけて、ライトの光と色温度を合わせます。

 実際にこのやり方で撮影すると、少し違和感のある写真になります。周りの状況は夜なのに、桜だけが昼間の発色になるからです。
 やはり夜桜は、ちょっと暖かみのある色目がないと雰囲気が出ないようです。デーライトモードにしておいて、ストロボの前に10%か20%くらいのマゼンタ色のフィルターをかけるくらいが、よいのかもしれませんね。
 

2008/04/03(木)夜桜とCDUⅡ

 バタバタしていて、ふと気がつくと桜が満開です。毎年、桜の季節になると、変なフィルムが売れるようです。FUJIFILMのCDUⅡというフィルムです。

 このフィルムは、スライド原板を複写するのが本来の使い道です。主に使っているのはプロラボで、一般の写真屋さんには置いてありません。名前すら知らないお店が多いと思います。
 FUJIFILMのホームページを見ると、「写真撮影には向きません」と書かれています。風景を撮影するフィルムではありません。

 フィルムは、白と黒の間のダイナミックレンジが、自然界よりも狭いので、複写を重ねるとコントラストが上がり過ぎて、元の原板とは似ても似つかぬレリーフのような描写になります。
 デュープ(複写)用のフィルムは、ダイナミックレンジが広い代わりにコントラストがありません。一般撮影に使うと、ポヤーンとしたメリハリのないフラットな描写になります。

 このCDUⅡは、タングステンタイプです。しかも、シアンとイエローのフィルターで色補正する必要があります。確か15%だったと思います。シアンとイエローを足すとグリーンです。つまり、ノーフィルターで撮ると、グリーンの補色であるマゼンタがかった発色になります。

 この特異な特性が、夜桜の撮影に威力を発揮します。夜桜の照明は大抵タングステン照明です。点光源ですから、コントラストが高く、明暗差が強い照明です。マゼンタがかった発色は、淡いピンクの桜にピッタリです。
 この点だけ見れば、CDUⅡは夜桜の撮影に最適のように思えますが・・・

 最大の欠点は、感度が低いことです。ISO感度表示はありませんが、実写では1桁台に近いようです。EI(露光指数)は、ISO換算で8から16程度だと思います。
 タングステン光源以外(例えば水銀灯など)だと、実効感度は低下します。発色も予期せぬ仕上がりになるので、電球照明の夜桜以外には不向きです。

 もっと早く聞いていれば使ったのに・・というかたもおいでになるでしょう。いまから写真屋さんに取り寄せてもらっても、満開の時期は過ぎてますからね。
 でも、いままでCDUⅡを使って、きちんと撮影できたひとには、ほとんどお目にかかったことがありません。夜景の撮影に実効感度が1桁台のフィルムを使うというのは、アマチュアの既成概念を超えています。
 プロでも何人が写ってますかね。
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