2010/08/10(火)星座の写真は撮り尽くされている

 数万円の投資をして、星野写真儀(ポタ赤)を手に入れたとしても、夜空の星は既に撮り尽くされた被写体です。いまさら撮ったところで、新しい発見はなさそうです。
 忍野の川縁で夜明けの富士山を撮っていたほうが、まだマシかも・・・

 実際には、そうでもありません。天文事象にはハプニングがつきものです。代表的なものは、突然現われる流星です。
 流星は、地球の大気圏に突入した粒子が、摩擦熱で発火する現象です。大気圏内だから、比較的地表に近い天文事象です。毎年決まった時期に現われる流星群のときに撮影すれば、ゲットできる確率が上がります。

 流星は、いつどこで現われるか、掴み所がないように思えるものの、その出現には一定の傾向があります。夜明け前が多いことは一般常識ですが、そのほかに、流星群の時期には「輻射点」(放射点)といって、出現する方向がある場所に集中します。

 ペルセウス座流星群なら、ペルセウス座の方向から、流星が出現してくるように見えます。このポイントを押さえておけば、出現場所をある程度予測することができます。
 流星群の大半は、彗星などが残したチリが地球の引力に引かれて来たものです。年によって当たり外れがあります。あとは月齢ですね。満月の前後は、観測には不利となります。

 仮に、流星の写真が運よく撮れたとして、「それが何なの?」という疑問が頭をよぎります。火球クラスの巨大な流星ならともかく、チョロッと流れた流星では、記録する意味がないような・・・
 流星の写真は、その1枚だけでは、学術的な意味はほとんどありません。別の場所で他の人が同じ流星を撮影したときに、初めて価値が出ます。チャンスは距離にして数十キロ程度ですかね。

 2枚の写真を比較検討することで、流星が発光した高度や距離・角度が判定できます。運よく「痕」が残るような大きな流星なら、大気圏の様子もわかります。
 流星が現われたときは、出現日時を記録しておくようにお奨めします。

2010/08/09(月)北極星は少しズレている

 赤道儀を据えるときは、赤経軸を天の北極に向けます。北緯 35 度なら、真北に仰角 35 度です。目印は北極星ですね。
 ところが、北極星は天の北極から少しズレています。角度にして約 0.6 度です。1度未満だから、眼視観測なら無視してもいい誤差ですが、星野写真の撮影となると、不都合が生じます。

 星野写真儀には、極軸望遠鏡というものが内蔵されています。赤緯軸の中心が小型の望遠鏡になっていて、中心から少しずらしたところに北極星を持ってくる構造です。
 北極星は1日に約1回転するから、日時から方角を割り出します。専用の目盛環がないタイプだと、この時角計算が結構やっかいです。付近の暗い星までマークしたレチクルを極軸望遠鏡の中に表示して、実物と重ね合わせる方式もありますが、空が暗い場所でないと使えません。

 極軸望遠鏡が普及する前は、別の方法で天の北極を探していました。
 まず、水平に設置した望遠鏡の赤緯を 90 度に固定し、北極星が視野内に入るように赤経軸の仰角を合わせます。これで大雑把ですが真北を向いたことになります。
 次に、南天中空の明るい星を視野内に入れ、南北どちらにズレるかを見ます。上(実際には南)にズレるようなら西方向へ、下(実際には北)にズレるようなら東方向へ修整します。(逆は誤差が増大するのですぐ気がつきます)

 これを繰り返すことで、かなり正確に真北に合わせることができます。方位磁石を併用すれば、北極星が見えない場所でも天の北極に合わせることが可能です。

 赤緯(緯度)の微調整は少しやっかいです。自動追尾のモーターが装備されていれば、南東か南西の星を使って、ズレる方向で修整します。手動ではある程度勘に頼ることになります。
 ズレる方向は東西です。クラッチ機能がなく微動装置が使えない場合は、きっちり合わせておく必要があります。

 星の写真撮影は、たかが星、されど星ですね。

2010/08/08(日)ポータブル赤道儀

 天体写真の中でも、星雲などの微小天体をアップで撮影するのは大変です。大口径の望遠鏡にカメラを直付けして、長時間にわたって日周運動を追尾する必要があります。
 しかも、科学雑誌に載っているような感動的で立派な写真は撮れません。職業天文台のようにはいかないわけです。

 この分野の写真は、機材に大きく左右されます。口径が何メートルもある望遠鏡と勝負しようというのは、もろドンキホーテです。
 アマチュアが星の写真を撮るなら、天体星野写真が一番向いています。手元にあるカメラで撮影できるし、目で見るよりも暗い星が写せます。

 地球は自転しているので、星は日周運動で少しずつ動いています。1日に約 361 °回転します。三脚にカメラを固定するやり方では、20 ~ 30 秒以上露光すると、星は点ではなく線として写ります。
 赤道儀にカメラを載せ、日周運動に沿って追尾すれば、長時間露光しても星は点で写ります。これ専用の赤道儀が市販されています。

 天体望遠鏡用の赤道儀と違うのは、赤緯軸がないことです。モーター駆動の赤経軸さえあれば、方向は自由雲台で変えられます。重量を抑えた設計になっています。
 こうした小型軽量のものを「星野写真儀」とか、「ポータプル赤道儀」とか言います。通称「ポタ赤」です。

 昔は、五藤光学のスカイグラフが有名でした。プラネタリウムでは世界的に有名なメーカーですが、現在はアマチュア向けの製品は扱いをやめています。
 いまでもビクセン・高橋製作所・ケンコーなどから、ポタ赤が数万円で市販されています。カバンに入れて持ち歩くことは可能ですが、丈夫な三脚が別途必要です。

 地上の建物や風景と一緒に撮る場合は、日周運動を追尾すると地上の物体が流れて写ります。あまり長時間の露光はお奨めできません。
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