2025/05/09(金)食料品の消費税ゼロは まやかし

 参院選が近づくと与野党を問わず票目当ての施策案が噴出します。今回は消費税の減税が話題に上っているようですが、減税すれば物価が下がるわけではなさそうです。

 消費税は、物品税に替わる税源としてスタートしました。それまで品目ごとに異なる税率だったのを一律に課税することで、消費者全体に広く浅く負担してもらうというフレコミでした。

 産業・流通の川上から川下に至るまで消費税等が掛かります。預かった消費税等から支払った消費税等を引いた差額を国に納める仕組です。(そこから地方にも配分されるので「等」を付けるのが正式)

 今回、特に目立つのが食料品の消費税をゼロにするという施策です。生活に苦しんでいる消費者の救済策と言いますが、果たしてそうでしょうか?

 結論から言うと、食料品の消費税をゼロにしても末端の消費者が払う金額は、軽減税率の税額どおり 8% 安くなるわけではない、ということです。

 例えば、農家が畑の一部でキャベツを作って近くの道の駅に納めていたとします。生産に掛かる原価は税別で 80 万円、道の駅に納める価格は税別で 100 万円、差額の 20 万円が農家の利益です。

 農家の生産原価には消費税が掛かります。キャベツの種や肥料などの費用は軽減税率の対象ではなく 10% の消費税を払わなければなりません。80 万円の 10% だと8万円で、生産原価は 88 万円です。

 ところが、食料品の消費税がゼロになると納入先や消費者から消費税を預かることができなくなります。道の駅に納めた 100 万円から税込の生産原価 88 万円を引くと、農家の利益は 12 万円に減ってしまいます。

 農家が従来の利益 20 万円を得ようとすると、納入価格を 108 万円にしないと帳尻が合いません。キャベツは非課税品でも生産コストには消費税が含まれているからです。

 もし食料品の売価を従来の税別価格(本体価格)のままにしろというなら、農家か道の駅が生産原価に掛かる消費税を負担するしかないわけです。こんな無茶な道理が通ると思いますか?
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