2012/02/17(金)懐かしのカコストロボ

 展示会で会ったプロペットの人は、シリーズカット調光をカコストロボの技術だと言ってました。Kako は一時、アマチュア用ストロボでは国内トップブランドでした。倒産後に日立コンデンサの系列になりましたが、日立がその後ストロボ事業から撤退したため、いまはもうありません。

 TTL 自動調光方式の登場でストロボが専用化され、カメラメーカーから供給されるようになったのが、撤退の一因です。コンパクトカメラにストロボが内蔵されたのも追い討ちとなりました。
 東芝は写真事業から早々に撤退しています。国内家電ブランドで残ったストロボは、ウエスト電気が前身のパナソニックだけです。

 プロペットの前身は、カコプロ機材です。カコストロボの中でもスタジオ機材は別部門でした。日立コンデンサがストロボ事業から撤退するときに、社員の大半は日立グループに分散して配属されました。プロペットを立ち上げたとき、日立家電を辞めて馳せ参じた人もいたそうです。

 カコストロボの話が出たのは、私がこうしたいきさつを知っていると思ったからでしょう。コメットやフォトナよりプロペットのほうが身近だったのは、カコストロボの関係です。スタジオ用は買いませんでしたが、いまでもグリップ式など何台か手元に残っています。

 昆虫写真家・栗林慧氏の依頼で、高速発光の大型ストロボを最初に作ったのは、確かカコストロボだったと思います。昆虫の羽ばたきを静止状態で撮るためです。
 アマチュア用の小型ストロボでは、高速発光させたたときにパワー不足になります。大光量の業務用ストロボをシリーズカットの技術で高速化したのではないかと推察します。発光したときの音から「ポコ」という愛称で呼ばれていたそうです。

2012/02/16(木)超高速のストロボ

 昔からカメラの性能を語るとき、最高シャッター速度が何分の1かがよく問題にされました。メカニカルシャッターの一眼レフでは、上位機種が 1/1000 秒、普及機が 1/500 秒としたものです。
 ニコン F2 が登場したときは、最高速度 1/2000 秒がモノを言いました。いかにもフラッグシップ機といったスペックです。当時の一眼レフは、1/1000 秒どまりでした。

 最高速度だけでなく、1秒以上のスローシャッターが切れたのも高級機らしい特長です。セルフタイマーと併用して2秒から最長 10 秒まで露光時間がセットできました。
 電子式シャッターが登場してからは、なんてことはないスペックですが、機械式シャッターの時代には画期的なことでした。

 時代が進んでも、カメラ側で制御できるのは、1/8000 秒程度です。しかもフォーカルプレーンシャッターは、スリットが通り過ぎる時間でしかありません。 それ以上の高速を得る場合はストロボの光を使います。
 小型のオートストロボは、最も少ない光量で発光するときの閃光時間が 1/20000 秒くらいだと言われています。落とした滴が王冠形になるミルククラウンの写真は、ストロボで撮影しています。

 では、スタジオ用のストロボでも光量を絞ればミルククラウンが撮れるかというと、答えはノーです。電圧制御方式のストロボは、光量を落としても閃光時間は同じです。
 コンデンサー制御のストロボは、閃光時間が短くなりますが、小型ストロボほど速くはなりません。小型ストロボは全力発光でも 1/1000 秒くらいの高速で光ります。業務用のストロボは、閃光のピークが 1/300 秒程度で、実際にはこの3倍くらい長く光り続けているみたいです。

 業務用ストロボで、ミルククラウンが撮れる可能性があるのは、シリーズカット調光を採用している機種に限られます。コマーシャルフォトでは、水槽に商品を落とした瞬間の静止画像が使われました。
 そこまでの高速を要求しないとしても、踊っているモデルや動き回る子供の撮影で、被写体ブレが防げるのは、シリーズカット調光の利点です。

2012/02/15(水)シリーズカット調光のモノブロック

 プロペットのブースは、「ハイライトバックグラウンド」という名前の平べったいソフトボックスでした。白バックの代わりになるもので、左右の穴からストロボヘッドを突っ込み、ディフューザーでできた背景を光らせる仕組です。バックを白抜きにするには、場所をとらず便利なアイテムです。

 ディフューザーの素材に厚みがあったので、「色温度はどのくらい落ちるの?」と聞いたら、この状態で 5200 ケルビン出ているそうです。「ヘェー」と言ったら、ストロボ自体が 5500K あるんだとか・・・

 見たら SQ シリーズのモノブロックストロボを使っていました。このモデルは、シリーズカット調光を採用しています。アマチュア用のオートストロボに使われている調光方式と同じです。
 小型ストロボの調光方式には、直列制御と並列制御があって、シリーズカットは直列制御の別称です。発光量が少ないときは、間髪入れず次の発光ができるのが特長です。並列制御(バイパス式)は残った電気を捨ててしまうので、常に一定のチャージ時間が掛かります。

 電圧制御方式のストロボで光量を絞ると、色温度が低くなります。シリーズカット方式は、逆に色温度が高くなる傾向があります。この性質を利用して、両方の方式を併用したものも開発されていますが、筐体が大きくなるのとコスト高になるのが難点でした。
 白バック用の照明なら、色温度はあまり関係ありません。わざと白トビさせるからです。バックグラウンドの光が何ケルビンかを質問したのは野暮でしたね。

 光量を絞った状態だと連写が可能です。「出力 1/16 では閃光時間 1/5000 秒、秒間 10 コマ、1/64 では 1/10000 秒、秒間 20 コマの連続撮影が可能」と、カタログに書いてありました。
 デジタルカメラでしかできない撮影方法がありそうです。
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