2008/06/15(日)色つきの白黒印画紙
画像は黒ですが、印画紙のベースが着色されていて、白地の部分がシルバーとかブルーになっています。ピンクなんてのもありましたね。特殊な表現をするための印画紙です。
セピア調色やブルー調色が、黒の画像に着色するのと逆の発想ですね。いまでは、入手不能だと思います。
ギルミノ・カラードペーパーは、デジタル画像処理で近い表現をすることができます。ベースの色と黒の画像を合成するわけです。
耐久性はともかく、ベースの色を自由に選べるので、デジタル加工のほうが表現の幅が広くなります。この手の印画紙が復刻することはないでしょうね。
デジタル時代のモノクロ写真は、白と黒である必要はありません。ベースの色と画像の色を自由に組み合わせて作ることができます。ピンクをベースにブルーの画像で表現することも可能です。
モノクロ写真が色をなくすことで得た独自の世界を1色か2色、色を加えることで別のイメージに変えることができます。
写真の模倣からスタートしたデジタル写真の新しいジャンルとして、シングルカラーのモノクロ写真に注目したいと思います。
デジタル写真が登場して間もないころは、主要な被写体だけカラーにして、残りの部分をモノクロにする…という技法がよく使われました。いまでも、ビールのCMなんかに使われてますよね。
主要被写体を強調したいときには、簡易で便利な手法です。
アマチュアの「作品」で、満開の桜の下を歩く舞妓さんだけをカラーにして、背景をモノクロ処理したものがありました。作者に「舞妓さんだけじゃなくて桜の花びらもカラーにしたほうが良かったのでは?」といったら、「そんな手間はとてもかけられない」との返事です。
アマチュアなら時間はいくらでもあるでしょうに・・・ プロならきっとやったと思います。
2008/06/14(土)暗室処理とデジタル
「腕のいい暗室マン」出身のひとりに森山大道(もりやまだいどう)という写真家がいます。教科書どおりの写真技法から踏み出した「アレ・ブレ・ボケ」の写真は、1960年代後半の写真界に衝撃を与えました。
保守勢力からは、「写真の本質を知らない若造が!」と揶揄されていましたが、岩宮武二や細江英公の助手を務めたくらいだから、並みの男じゃありません。
「酸化セリウム」の先生も森山大道の写真とプリント技術を高く評価しています。暗室にこもって印画紙と悪戦苦闘した人間にしかわからない、独特の味があるからでしょう。
ドキュメンタリータッチの描写なので、ブライダル向けではないけどね。
いま、東京都写真美術館で「森山大道展」をやってます。6月29日までです。参考までに・・・
東京都写真美術館・森山大道展はコチラから
デジタル時代になって、新しいモノクロ写真の表現方法が模索されています。40年の歳月を経て、デジタル技術を駆使した「第2の森山大道」が、そろそろ表われそうな予感がします。
2008/06/13(金)セピア色の調色
セピア色=古い写真・・という発想から、レトロな雰囲気を出すためにわざとセピア調にすることがあります。水洗処理が不完全で、経年変化で茶色くなったプリントが、いかに多いかがわかりますね。
デジタルカメラにセピアモードがついている機種があります。デジタルでレトロ調を楽しもうという遊び心です。
銀塩の白黒印画紙には、諧調のほかに色調があります。純黒調・冷黒調・温黒調など、同じ「黒」でも微妙に色調が違います。人物写真には、温黒調が好んで使われました。
さらに温かみのある色調にするために、セピア調色という技法も使われました。一旦プリントしたモノクロ写真を減力剤を使って薄くしてから、セピア調色剤で着色する方法です。仕上りの時点でセピア色になっていたので、変色して茶色っぽくなったのとは違います。
前から疑問に思っていたのですが、「本当のセピア色」とは一体どんな色調だったんでしょう。復活して世の中にあふれている現在のセピア色には、ずいぶん色目に幅があります。
きちんと処理されたセピア調色の写真でも、ある程度の退色はあるでしょうから、何十年か前の写真を引っぱり出してきて、これが本物のセピアだ!というのも少々無理があるように思います。
デジタル写真のセピア色は、一旦色彩をクリアした状態で色をつけているので、黄色っぽくもできるし、赤っぽくもできます。赤茶色を採用していることが多いようですね。
デジタル時代のセピア色は、あくまでイメージカラーとして、自分の好きな色目を自由に選べばよいのかもしれません。