2011/09/06(火)NDグラデーション

 風景写真が趣味のアマチュアカメラマンに必携なのが、三脚です。被写界深度を稼ぐために絞り込むのと、偏光フィルターを多用するので、シャッター速度が遅くなります。
 フィルム時代には、中判以上のラージフォーマットが定番だったことも理由のひとつです。

 もうひとつ欠かせないアイテムが、グラデーションのかかった ND フィルターです。山の写真では、朝日は山頂から順番にあたります。地上にはまだ陽があたらないので、露光不足になります。その差を補正するために ND グラデーションを使います。
 フィルム時代には、この方法しかありませんでした。グラデの ND を持っているかどうかが、ベテランと初心者の違いと見られていたようです。

 今では LEE や Cokin などの輸入物が市販されていますが、昔はこの手のスクエアフィルターは、プロ機材の扱いでした。ケンコーから出ていたハーフ ND は、透明部分との境い目がハッキリしていて、平坦な地平線や水平線にしか使えませんでした。しかも正方形で、ND 部分の境い目が真ん中です。

 プロが実用したのは、照明ムラの補正です。1灯でライティングすると、ライトに近い側と遠い側で照度が変わります。ソーラースポットをかなり離して使っても差が出ます。絵画を複写するときには不都合でした。
 それを ND グラデーションをかけて均一に補正するわけです。そういう用途だから、グラデーションの足が長いのが特徴でした。風景写真には使い辛いタイプです。

 デジタル写真の場合は、画像処理で代用することも可能ですが、手間とテクニックが必要です。そこで初心者向けに、自動的に明暗差を補正する機能がついたカメラが登場しました。
 バッグの中にグラデーションフィルターが入っているかどうかで、ベテランと初心者を見分けるのは、いまでも同じのようですね。

2011/09/05(月)PLフィルターと木々の緑

 目で見るとキラキラ輝いてきれいな葉っぱも、静止画の写真にすると白っぽく写ります。反射光を除去する PL フィルターは、葉っぱの反射を抑えて木々の緑を表現するのにも使います。

 前回テーマにした空の色をコントロールするのと同じで、あまり目一杯 PL を効かすと、木々の緑は出るものの、全体にベタっとしたメリハリのない写真になりがちです。太陽光の反射を少し抑える程度にして、キラキラ感を残すのが上手な使い方です。

 マクロレンズを使ったクローズアップ撮影でも有効です。反射光を完全にカットするか、少し残すかは、ケースバイケースです。
 PL を使うとかなり暗くなります。近接撮影で露光倍数が上がるのと、被写界深度を稼ぐために絞り込むので、シャッター速度が遅くなるのが難点です。一番の大敵は風ですね。
 風除け対策をしてまで PL を使うかどうかは迷うところです。割り箸と輪ゴムで茎を固定する程度で済めばいいのですが・・・

 新緑の緑は、順光よりも逆光のほうが向いています。葉っぱから抜けてくる光でないと、黄緑色の新緑を表現できないことがあるからです。
 逆光の状態では、PL フィルターは何の効果も期待できないので使いません。暗くなるぶん光をロスするだけです。

 池に映る新緑は、PL で消してしまったのでは絵になりません。逆に強調したいくらいですが、反射光が透過するよう角度を合わせても、地上の景色との露光差は残ったままです。
 水面に映る景色は、1~2絞り分暗くなります。これを補正するのは、グラデーションのついた ND フィルターの役目です。水辺の境が直線的ならハーフ ND でもいいでしょう。補正しすぎないよう露光倍数が2~3倍程度の薄いものがお奨めです。

2011/09/04(日)PLフィルターと空の色

 アナログかデジタルかを問わず、役に立つ PL フィルターですが、上手に使うには少々コツが要ります。偏光膜の原理と特性を知ることが大事です。

 偏光膜は、目に見えない細かい簾(すだれ)のような構造になっています。自然の光は、あらゆる振動方向のものが混ざっていますが、偏光膜を通すと一定方向の光だけが通過します。
 ガラスに反射して見える像は、振動が一定方向に揃っているので、偏光膜のスリットと平行なら通過し、直角に交わる角度なら完全にカットされます。ガラスや水面の反射をカットするには、この原理を使います。

 偏光膜を通過するのは、振動が一定方向の光だけです。反射光以外の光もカットされるので、通過する光は少なくなります。PL フィルターを通すと、かなり暗くなるのはこのせいです。
 この性格を利用し、ND フィルターの代わりに使うこともできますが、まったく同じとは言えません。ND フィルターは、その名のとおりニュートラル・デンシティーです。すべての振動方向の可視光を均等にカットします。偏光フィルターは、色に偏りが出ることがあります。

 空からの光は、太陽に近い場所はあらゆる振動方向の光が混ざっています。PL をかけてもほとんど変化はありません。反対側の空は、反射光を多く含んでいます。PL をかけると反射光がカットされて暗くなります。
 よく「偏光フィルターをかけると空の青さが増す」という表現を使いますが、空の青い反射光がカットされるので、正しくは「空が暗くなる」です。

 標高の高い山で PL を目一杯かけると、青空が宇宙の色になってしまいます。景色は昼なのに、まるで夜空です。特殊表現が目的ならいいのですが、自然に見せたい場合は、あまり PL を強くかけないほうがいいでしょう。
 標高千メートル以上なら、ND フィルターのほうが自然に写ります。目に見えない紫外線を完全にカットして、空が白っぽくなるのを防いでくれるからです。可視光をカットするくらいだから、UV フィルターよりも効果は強力です。
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