2025/05/10(土)消費税とインボイス制度

 前回、食料品の消費税がゼロになっても消費者が払う金額は 8% 安くなるわけではない、と指摘しました。農家など生産者の原材料費には消費税が含まれているからです。

 納入先から消費税を預かることができなければ、原価に掛かった消費税を上乗せしないと利益が減ってしまいます。結果として物価はそれほど下がらない、という予測です。

 生産者が課税業者の場合は、確定申告で過払い分の消費税が戻ってくるので、生産原価に掛かる消費税を上乗せする必要はない、との意見もあります。減税分は国が負担するかたちです。

 食料品全体に占める零細業者の金額的な比率はわずかです。営業規模が小さくてもインボイス制度(適格請求書等保存方式)に登録している業者もいます。小規模の非課税業者は、従来から販売価格に原価分の消費税を織り込んでいるので、もともと影響がないと言えなくもありません。

 農家が自家栽培の野菜を使った食堂や民宿を経営していたり、食料品以外のもの(花卉や植木など)を生産したりしていた場合は、消費税を預かる立場のままです。課税業者として払い過ぎた消費税は戻ってきます。食料品の非課税化を気にする必要はないでしょう。

 消費税を最終的に負担するのは消費者です。生産者や中間流通業者は利益分の消費税を納めているにすぎません。食料品の非課税化で零細農家が末端の消費者と同じ立場になったとき、果たして戻税を受けられるかは微妙です。

 今回の食料品非課税化の流れを受けて、インボイス制度に登録申請する小規模零細農家が増えるかもしれません。税務署が非課税品しか扱っていない生産者に登録を認めるかどうかは疑問ですが……

 それよりも、面倒な計算や手続を嫌って、高齢者の農家が廃業してしまわないか、そちらのほうが心配です。しわ寄せはいつも弱い立場の人にいくからね。
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