2010/08/07(土)星の写真で大敵は夜露
レンズが曇らないように、フードに保温加工をするのは必須です。ハンダゴテのヒーターをフードの外側に巻き、乾電池で低電圧をかけると、ほどよい効果が得られます。(100V だと燃えてしまう)
保温対策を怠ったり、うっかり電池を切らしたりした場合は、せっかく撮った星がソフトフィルターをかけたようにボケてしまいます。北極星を中心にして、同心円状に日周運動を撮影するときは、一晩に何枚も撮れないので、万全の対策が必要です。
8月中旬にペルセウス座流星群の撮影をしたときは、フィルムが結露して、ダメにしてしまいました。晴天の夜は、放射冷却でカメラ自体が冷えて結露します。タオルで包んだり、保温装置をつけたりして、防止するのですが、操作に支障をきたすのが難点でした。
そこで、パトローネの軸に吸湿材を入れたらどうかと考えました。
巻き戻しノブの側には入れられないので、反対側の軸の中に、シリカゲルをティッシュで包んで仕込みます。わずかな量ですが、効果はありました。カメラをタオルで包めば万全です。
ニュートン式の反射望遠鏡は、鏡筒の前が開いているので、空気の乱れで画像が揺らぎます。外気温と鏡筒内部の温度が同じになるように、ウチワで扇いだりして馴染ませます。
あまり冷やしすぎて、反射鏡が結露してもいけないし、お守りが大変でした。
その点、密閉型のシュミットカセグレンは、内部の空気を乾燥させておけば管理が楽です。前面の補正板が結露しないように気をつけるだけで済みます。
12.5cm のシュミカセは、長めのフードが欲しかったので自作しました。材料は、宇宙食が入っていた缶詰の空き缶です。内側に艶消しの黒いフェルトを貼って使いました。
星の観測や撮影には、長めのフードは必需品です。
2010/08/06(金)レンズの収差と星像
赤道儀を持っていなかったときには、三脚にカメラを固定して撮影していました。地球は自転しているので、あまり長い時間露光していると、星が動いて線になります。
赤緯にもよりますが、標準レンズで 20~30 秒が限度です。より暗い星を写すために、レンズの絞りは開放にします。
ところが、画面の周辺では、星が点になりません。明るい星だと蝶が羽を広げたように変形して写ります。非点収差やコマ収差です。色がにじんでいるのは色収差です。
絞りを絞れば緩和されますが、それでは暗い星が写らないというジレンマに陥ります。せっかく明るいレンズを買ったのに・・・
使っていたのは、タクマー 50mm F1.4 です。F1.8 と迷いましたが、先輩の勧めでこちらにしました。この先輩は、カメラについてはエキスパートでしたが、星については門外漢です。周りに天体写真をやっている人がいなかったのは不運でした。
星の写真を撮るなら、50mm F1.4 ではなくて、F1.8 や F1.7 のほうが向いています。当時の Nikkor なら F2 ですね。F1.2 はクソ高いだけで、ほとんど役に立たないというのが定説です。
赤道儀を手に入れてからは、F2.8~F4 程度に絞り、日周運動に合わせて長時間露光して撮影しました。収差が修まり、周辺光量の低下も緩和されて、画面の隅まできちんと写ります。
写真部の連中は、どうやったら撮れるのか不思議でならなかったみたいです。星は開放で撮るものと思い込んでいたからでしょう。
2010/08/05(木)始まりは天体写真から
最初に手に入れたのは、口径 5cm の屈折式望遠鏡でした。学校の斡旋で購入した教材です。塩ビのパイプに1群2枚の凸レンズがついた簡単なものでした。
三脚も架台もない唯の鏡筒です。花瓶を置く木製の台を改造して、三脚代わりにしました。5cm の口径でも 50 倍程度に倍率を上げれば、土星の輪が見えます。
ガリレオの時代には、この程度の望遠鏡しかありませんでしたが、それでも新しい発見がありました。(木星の4大衛星は双眼鏡でも見えます)
次に、それまで貯めていたお年玉をはたいて、10cm の反射式赤道儀を買いました。アストロ光学製です。一丁前にピラー式でした。
当時は、口径 15cm もあれば、天文雑誌の愛機コーナーに紹介記事が載った時代です。反射式の市販品は大半が口径 8cm でした。
デパートに注文したら、自宅まで届けにきて、大の大人が二人がかりで組み立てていきました。やったことがないのか、なかなかスンナリとはいきません。(自分でやるからいいのに・・)
やっとのことで組み上がり、「いやー、立派なもんですなぁ」と、感嘆しきりでした。(壊されなくてよかった)
赤道儀が手に入ったら、今度は天体写真に没頭です。モータードライブなんてのはないから、手動追尾です。アイピースに十字線を張り、星像を少しボカして、センターから外れないように微動ハンドルを動かします。
設置場所が屋根上の物干台だったこともあり、標準レンズで数分から 10 分が限度でした。(市街地は夜空が明るいし)
撮った写真は、自分で現像してプリントしました。そのころに学んだ基礎知識が、その後 役に立ちました。写真は、記録であると同時に科学でもあります。