鳴り物入りで登場した APS フィルム規格でしたが、わずか 15 年ほどで姿を消すこととなりました。あまり普及しなかったのがフィルム終了の要因です。
では、普及しなかった理由は何でしょうか?
一番の理由は、アナログ式のフィルムだったということでしょうが、それを言ってはおしまいです。当時は、まだフィルム式のカメラが販売の中心でした。
前回紹介したような「APS は扱わない」というカメラ屋もありましたが、理由はそれだけではなさそうです。
マイナス要因のひとつはフォーマットサイズです。135 フルサイズよりもひと回り小さいフィルムサイズで、画質的な魅力はありませんでした。
アナログ式のフィルムは、フォーマットが小さくなれば、粒状性も含めて画質が低下します。135 サイズに優る特徴は、フィルム装填が簡単なことと、途中で巻き戻して再装填できることくらいでした。それもその機能を備えたカメラでの話です。
現像が終わると、カートリッジに収まった状態で戻ってきます。フィルムの画像を直接目で見ることはできませんでした。その代わり、インデックスプリントが必ずついてきます。
フィルムシートと違って、コロコロしたカートリッジを保管するのは難儀でした。専用のカートリッジケースを無料で配ったりしたものの、インデックスプリントの番号とカートリッジナンバーを照合するのも面倒でした。
プリントサイズは、ハイビジョン(H)、クラシック(C)、パノラマ(P)の3種類が選べます。実際にはハイビジョンサイズで撮影され、磁気情報でプリントサイズを記録して、プリント時に判断する仕組です。後からプリントサイズを変更することは可能です。
プリント価格の問題もあり、ほとんどの人がクラシックで撮影していたと思われます。せっかくの新規格が生かされないまま使われていたようです。
旗振り役のコダック・ニコン・ミノルタ(コニカ)は、数年後にはカメラの製造を打ち切りました。デジタルカメラの台頭を受けての判断です。