2011/11/30(水)ISO800のカラーフィルム

 カラーフィルムの高感度化は、新しい商品も生み出しました。レンズ付フィルム「写ルンです」は、135 サイズの高感度フィルムとの組み合わせがなければ、あれほどヒットしなかったでしょう。

 最初に発売されたのは、ポケットサイズ(110)のフィルムを使ったものでした。135 サイズの 1/4 の面積では、お世辞にもきれいなプリントとは言えませんでした。鳴り物入りで登場した割には、不発に終わります。
 世の中に受け入れられたのは、ISO400 の 135 サイズを使うようになってからです。その年のうちにストロボ内蔵タイプも発売されました。1987 年の話です。

 1993 年には、ISO800 の高感度タイプも登場します。ドル箱の「写ルンです」だけに使用し、フィルム単体の市販はしないとのアナウンスでした。
 その年の6月に行なわれた皇太子殿下と雅子さまの御成婚の儀(結婚式)では、報道陣は写ルンです 800 から抜き取ったフィルムを使ったそうです。

 報道関係の要望もあり、翌年にはフィルム単体での発売に踏み切ります。報道用パックに続いて単品も市販されたことで、一般ユーザーが自分のカメラに詰めて使えるようになりました。
 実は、ISO800 のネガカラーが発売される 10 年も前に、HR 1600 が登場しています。コダック Gold1600 やコニカ GX3200 もありました。報道陣は、なぜそちらを使わなかったんでしょう。わざわざ写ルンですをバラさずに済んだのに・・・

 恐らく画質でしょうね。いまの NATURA 1600 なら使ったかもしれませんが、当時の超高感度フィルムはかなり粗粒子でした。いまだと高感度ノイズ出まくりのデジカメといったところでしょうか?
 他社より少しでもいい写真を狙う気概がないと、報道写真のプロとは言えないのかもしれませんね。

2011/11/29(火)高感度カラーフィルムの登場

 ピッカリコニカ(C35EF)登場の翌年に、FUJICOLOR F-Ⅱ400 が発売されました。従来の4倍の感度があり、ストロボ光が倍の距離まで届くという画期的な商品でした。C35EF の弱点を補う製品が、商売敵の富士から出されたのは皮肉な展開です。

 実際に使ってみた感想は、粒状性が粗く、サービス判でもザラつき感がありました。日中屋外での使用は、割高な F-Ⅱ400 を選ぶ意味がなかったように思います。
 たまたま参加した宴会の集合写真をその場で頼まれ、手元の機材で撮りました。小型ストロボしか持っていなかったので(とはいっても GN 40)、フィルムは 400 を使うことにしました。

 ASA400(ISO400)だと GN 80 相当です。計算上は、絞り F8 で 10m となりますが、ちよっと危ない気がします。1/30 秒のほかに、スローシャッターのコマも撮っておくことにしました。
 「動かないで下さいね!」と声を張り上げ、何回かシャッターを切りました。結果はスローで切っておいて正解でした。

 スローシャッターのコマが、露出もよく粒状性が目立ちません。ストロボと蛍光灯のミックス光源ですが、このころから演色性はよかったみたいです。
 高感度フィルムは、まず大きな粒子で光を捉え、次に小さな粒子で間を埋めていきます。露出不足だと隙間のあいた大きな粒子だけの画像となり、ザラつき感が出ます。実質的には ISO400 より低めに見ておいたほうが無難なフィルムでした。

 1983 年に登場した HR400 は、大きな粒子と小さな粒子を別々の層にすることで、実効感度と粒状性を改善しています。その後も改良が進み、HG 発売のころから始まった "400" の普及作戦で、常用フィルムの感度は ISO400 が定着します。(国内の話です)
 ちょうどカメラ内蔵レンズのズーム化で開放 F 値が暗くなり、ISO100 での室内撮影が厳しくなっていた頃です。高感度化は、カメラの発展に貢献しました。

2011/11/28(月)フラッシュ内蔵カメラの登場

 フィルム時代に、馴染客に写真をプレゼントするためにホステスさんたちが愛用していたのは、ストロボ内蔵式のコンパクトカメラでした。いまでは当たり前の機能ですが、カメラにストロボが内蔵されるようになったのは、比較的新しい出来事です。

 初めて登場したのは 1975 年。コニカから発売された「ピッカリコニカ」です。型式は C35EF。実売価格は約3万円でした。C35AF は後に発売されたオートフォーカス機で、これもコニカが一番乗りでした。その名も「ジャスピンコニカ」。実売価格は約4万円だったと思います。
 このカメラが、その後のコンパクトカメラの原型になります。値段の割にスペックは、いたってシンプルなものでした。

 38mm F2.8 単焦点・自動絞り、シャッター速度は 1/60 と 1/125 秒の自動切換(C35AF は 1/250秒も追加)と、いまとなっては何の変哲もないカメラです。これが爆発的なヒット商品になりました。

 ピッカリコニカが登場したとき、「カメラが早く壊れる」とか「外付けのストロボのほうが明るい」とか、否定的な意見もありました。いつの時代でも、斬新な商品が開発されると、同業他社からバッシングされるのは同じです。
 とはいっても、GN 14 のストロボで 1/60 秒 F2.8 では、室内で撮れる範囲は 5m 程です。当時のカラーフィルムは、今の規格でいうと ISO100 でした。

 結婚式では、心臓の強いオバさんの勝ちです。披露宴会場は広いから、被写体の目の前まで出て行って撮らないと、露光不足でシャビシャビの写真になってしまいます。
 当時、結婚式の記録写真は、業者に依頼するものと決まっていました。あつかましいオバさんは、そんなに多くはなかったようで・・・
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