2011/11/18(金)先生がハッセルを売ったわけ

 既に商業写真から足を洗った「酸化セリウム」の先生は、現役時代にハッセルブラッドを使っていました。コマスタの定番カメラです。もちろん当時はフィルムでした。
 流通よりもポスターの仕事が多かったので、6x6 より原板の大きいマミヤ RZ も使っていました。

 ある日、両方使って撮影した原板をチェックしていて、驚いたそうです。ハッセルで撮った写真をルーペで覗くと、ただのグレーの服だったのに、マミヤのほうは黒と白の千鳥格子だったからです。「さすがアポだ」と、思わず唸ったとか・・・

 富士の GX680 を買い増してから、ハッセルは売ってしまいました。いい値段がついたみたいです。500CM 用のツァイスレンズは、コントラストは高かったものの、解像力の点では国産レンズのほうに分があったようです。
 プロにとってカメラは道具だから、自分の仕事に合ったものを優先的に使います。売却したのは、ハッセルの出番が少なくなったからだと思います。(懐の事情も?)

 ルーペで見て千鳥格子が見える原板は、印刷段階でモアレが出やすくなります。そんなことを気にしないのは、出力するのが一流の印刷屋だったからでしょう。アナログ時代は、モアレの除去は印刷屋の仕事でした。
 印刷屋の技術者と同席したときに、どうやってモアレを防ぐのか聞いたことがあります。その人は Y 版以外の角度を少しずつずらすようなことを言っていました。角度はケースバイケースだそうです。

 デジタル時代になって、モアレの除去をどの段階でするのかややこしくなりました。入稿時点でモアレがあるようでは、印刷段階で消すことは難しいと思います。便利になった反面、撮影者のする仕事がひとつ増えたようです。

2011/11/17(木)デジタル写真にモアレはつきもの

 ベイヤー配列の撮像センサーは、偽色とモアレ(干渉縞)が発生しやすいと言いましたが、モアレは三層構造でも出ます。整然と並んだ点で画像を構成する以上は、避けられない宿命です。

 デジタル写真に限らず、網点を使う印刷でもモアレは出ます。印刷物自体にモアレがほとんどないのは、製版段階で CMYK の網点を傾けるなどして、干渉縞が出ないようにしているからです。職人の腕の見せ所です。

 フラットベッドスキャナーで印刷物から画像を取り込むと、モアレが出ることがあります。大抵は「モアレ除去」の機能をオンにしておけば解消されますが、画像が甘くなるのが欠点です。製販段階でするのと同様に、原稿を傾めにしてスキャンすると防げることがあります。

 撮影段階でモアレが出やすいのは、服など布地を撮る場合です。織物は整然と並んだ網点と同じだからです。無地やランダムな模様のものは、あまり気にすることはありませんが、細かい縞模様や織目のはっきりしたものは、出る可能性が大です。

 防ぐ手段は、フィルムで撮ることです。少なくとも原板上でモアレが出るとこはないはずです。ただし、デジタルプリンターで出力したり、印刷物にしたりしたときに出る可能性があります。印刷物の場合は、印刷屋の責任ですが・・・

 商品の見本写真を配布する目的なら、フィルムで撮って、アナログ式の銀塩プリンターで焼くのが、間違いのない方法です。アナログ式はほとんどなくなったので、設置している店を見つけておかないと・・・

 結婚式の写真で、とくに注意したいのは新郎の衣装です。近ごろハヤリのシルバーグレーのタキシードなんかは、織模様がはっきりしていてモアレが出やすい代表格です。
 写真のことなど考えてないから、見た目の格好よさで選ぶ人が多いみたいですが、写真屋泣かせの衣装です。

2011/11/16(水)人間の眼に近づく日はいつ?

 空想の世界では、ロボットが人間と一緒に暮らしています。現実の世界では、HONDA のアシモが、やっと原発のバルブを閉められそうなレベルまできたところです。鉄腕アトムみたいなロボットは、まだまだ先の話ですね。

 眼の仕組みをおさらいしていて、フィルムよりデジタル式のほうが、人間の眼に近いような気がしてきました。光を電気に変えることで、物の色や形を認識するのは、眼の網膜も撮像センサーも同じです。
 デジカメは電子回路、人間は脳が画像処理をします。ハロゲン化銀で光を捕捉し、化学反応で画像を生成する銀塩方式は、眼の仕組みとは似て非なるものでした。

 4素子ひと組で三原色を捉えるベイヤー配列は、眼の構造とどこか似ています。網膜の視細胞すべてが三原色を同時に捉えているわけではないからです。RGB 別に役割分担しています。
 しかも、明るい光に反応する錐体は色を感知しますが、弱い光に反応する桿体は色を識別できないそうです。これらの情報を脳でミックスして、物の形や色を総合的に判断しています。

 眼にはマリオット盲点というのがあって、その部分では光も色も感じないはずです。では視界の中に黒い斑点があるかというと、何もないですね。周りの情報を元に、欠落した部分を脳が補完しているからです。(それ自体が見えないから盲点?)

 人間の眼は高性能ですが、見たいところ以外はぼやけています。眼をキョロキョロさせて全体像を把握します。写真の場合、多くは画面の隅までシャープさが求められます。人の視覚よりも厳しい条件をクリアしないといけません。

 写真が発明されてから約 170 年の間に、よくここまで進歩しましたね。デジタルカメラが世に出てから、わずか 20 年ほどです。人間の眼に近づく努力は、まだまだ続きます。
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