2011/11/12(土)ベイヤー配列はフィルムの規格?

 デジタルカメラの撮像センサーに使われている特許を調べていて、ベイヤー配列はフィルム用に開発された・・という記述を見つけました。名前の由来が、開発者であるコダック社のベイヤー博士というのは周知の事実ですが、まさか 50 年も前の特許とは思いませんでした。

 まだデジタル写真が全く認知されていない時代の話です。カラーフィルムに応用するために考え出された方式のようですが、多層化技術の発達で、実用化されずにお蔵入りになったそうです。
 日の目を見たのは、デジタル写真が実用段階を迎えてからでした。既に特許は切れていたみたいで、各社がこぞって撮像センサーに採用しました。

 一方、三層構造の撮像センサーは、FOVEON が特許を握っています。こちらはまだ切れていないから、早く実用化したいとなったら特許を買うしかないでしょう。自社開発するには、莫大な費用が掛かります。
 このところ三層センサーで各社から出願されているのは、周辺技術の特許に過ぎないようです。

 フィルムと同じように、1点で三原色を取り出せる撮像センサーは、デジタルカメラを大きく変える可能性があります。高感度に弱いとか、画像処理が難しいなどの問題を抱えていますが、これらがクリアされれば大化けするかもしれません。
 そんな目論見から世界市場の制覇を狙って、各社とも積極的に開発を続けています。

 FOVEON 社は、現在シグマの傘下にあります。O社は変な医療関連会社の買収に多大な資金を投入するくらいなら、FOVEON 社を買収しておけばよかったのに・・・ (え?買収劇の目的が違う?)
 自社が撮像センサーのメーカーでないとしても、投資する価値は十分あったと思います。ひょっとすると過去の損失がチャラになったかも?

2011/11/11(金)業務用途の撮像センサー

 スナップ写真では、ベイヤー配列の欠点があまり気にならないのですが、商品撮影などのプロユースでは、その欠点が致命傷になることがあります。偽色とモアレ(干渉縞)です。
 被写体が動かない商品撮影では、三原色(RGB)別に露光することで、高画質を実現しています。2000 万画素の撮像センサーであれば、RGB 各色 2000 万画素の画像が得られます。

 初期の段階では、一次元センサーが使われていました。フラットベッドスキャナーやフィルムスキャナーに使われているような、一直線に撮像センサーが並んでいるタイプです。
 被写体ではなくビューカメラの結像面を移動させ、画像を読み取る方式でした。当時は1回の露光に数十分かかったそうです。(一次元センサーはいまでもあります)
 こんなまどろっこしいことはしていられないと、二次元(平面)センサーで多重露光する方式に変わり、現在では1回の露光でも実用できるレベルまで画質が向上しています。

 業務用の VTR カメラは、RGB 別に3枚の撮像センサーを使い、画像合成する方式を採用しています。いわゆる3板式です。
 ハーフミラーやプリズムで光路を3分岐するため、バックフォーカスの長いレンズが必要です。ミラーボックスのある一眼レフには不向きです。光のロスが多いのと、製造コストが高いのが難点です。
 今月発表されたキヤノンの映画用 VTR カメラは、単板の CMOS を採用しています。PL マウントタイプのほかに EF マウントの機種があるのは、単板式だからできたのでしょう。

 業務用途の撮像センサーは、単板式で1回露光が主流になってきました。あとはベイヤー配列でない、新しい方式が開発されるのを待つばかりです。

2011/11/10(木)三層構造の撮像センサー

 現在、フィルムみたいに1点で光の三原色を記録できる撮像センサーは、シグマが採用している Foveon センサーだけです。その他は隣りあった4素子で三原色を拾っています。このタイプが撮像センサーの主流です。
 R(赤)と B(青)に G(緑)2素子を加えて計4素子です。G が2倍なのは、人間の色彩感覚や輝度感覚に近づけるためと言われています。いわゆるベイヤー配列です。

 では 2000 万画素のセンサーは、1/4 の 500 万画素、あるいは 1/3 しかないかというと、形の上ではちゃんと 2000 万画素あります。隣にある単色の情報を頼りに、擬似的に足りない色を各素子に割り振っているからです。
 こうしたベイヤー配列は、もともとない情報を補完して画素数を稼いでいる関係で、偽色が発生するのはやむをえない構造です。それを軽減するためにローパスフィルターで光を散らし、わざと画像を甘くしています。せっかくシャープなデジタルの特性が、もったいないですね。

 ライカ M 9 や PENTAX 645D は、敢えてローパスフィルターを採用せず、シャープネスを上げています。当然、偽色やモアレ(干渉縞)が出やすくなりますが、RAW 現像の際に撮影者が手を加えてちょうだい・・というスタンスです。
 対象にしているユーザー層を考えれば、悪い選択ではないと思います。

 最近話題の裏面照射型センサーは、受け取る光の量が増えるだけで、ベイヤー配列はそのままです。高感度対応には有利ですが、偽色やモアレが出やすいことに変わりはありません。
 デジタルカメラの画像の味が大きく変わるのは、やはり新しい構造の撮像センサーが開発されてからでしょうね。

 特許情報を見ていると、ソニー・東芝・パナなど各社が三層構造型センサーを研究開発しているのが推察できます。FUJIFILM は、有機半導体を使い、一つの素子から中間の G を抜き出したあと、残りの情報から R と B を分離する方法を模索するなど、各社各様に開発しています。
 実用段階はまだ先のようですが、FUJIFILM X10 に採用された独自配列の撮像センサーは東芝製という噂だし、協業の成り行きによっては意外と早いかも?
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