2011/11/09(水)最後の課題は写真の味

 ほんの少し前まで聞かれたフィルムの優位性を云々する声は、最近ではとんと耳にしなくなりました。もともとアナログ媒体であるフィルムの画素数がいくつかは、言ってみたところであまり意味がないように思います。

 ダイナミックレンジやラチチュードについても同様です。ネガとリバーサルではずいぶん違うし、同じリバーサルの中でも大きな差があります。
 フィルムの優位性を語りたい人の気持ちは重々わかりますが、要は得られた画像が納得できるかどうかです。

 数十人の集合写真に 135 サイズのフィルムを使う写真館は、まずなかったはずです。それがフルサイズのデジイチでもいいとなれば、ブローニーのカメラとフィルムの出番は次第になくなります。

 風景写真に Velvia 50 を愛用するアマチュア写真家は、まだ大勢います。ダイナミックレンジやラチチュードが広い方がよければ、アスティアを使えばいいし、ネガの S タイプならもっと広く撮れます。でも、あのベルビアの独特の「狭さ」がいいわけです。
 こういう人達に、だったら D レンジの狭いデジタルでもいいのでは?と言っても意味のないことです。狭さの中身が違うからです。

 フィルムかデジタルか?の不毛な論争で、最後に残されたのは「写真の味」ではないかと感じています。レコードか CD か?みたいなもので、これはもう論争のネタではないですね。音楽や料理と同じで好みの問題です。

 自分が納得できる味を求めるなら、RAW データを自分で現像するのが理想ですが、そういう人は少数派です。カメラ側に画像処理を任せて、出来上がった JPEG 画像を見て云々しているのが現状です。このあたりの事情も料理と似てますね。

 新しいタイプのフィルムが開発される可能性はもうないでしょうが、デジタルのほうはまだ発展途上です。現在主流のベイヤー配列の撮像センサーとは違う、新型センサーが生まれる可能性があります。新しい味の登場です。
 新しい味に押されて、いつか老舗の味を堪能できなくなる日がくるんでしょうか?

2011/11/08(火)デジカメのダイナミックレンジ

 写真の主流がフィルムからデジタル式に替わったときに、よく言われたのがダイナミックレンジの狭さです。デジカメの画像は、白トビ、黒潰れしやすいのが難点でした。

 実際には、画像情報をそのまま記録した RAW データのダイナミックレンジは、言うほど狭くなかったのですが、現像ソフトの出来具合もあったようです。
 とくにカメラ側で現像処理した JPEG 画像は、リバーサルフィルムと比べてもダイナミックレンジがかなり狭い印象を受けました。

 FUJIFILM が開発したスーパー CCD ハニカム SR Ⅱは、2つの素子を1素子とすることで、ダイナミックレンジを拡大できました。その代わり、画素数は半分になります。
 この CCD を搭載した FinePix S3 Pro の発表会で聞いた話では、感材部の連中は「デジタルもここまできたか」と驚いたそうです。プロ部(リバーサル部門)の人は、「それでもアスティアどまりだね」と言っていたから、ネガの広さにはまだかなわないとの評価でした。

 この技術は特許だそうで、他社は画素数を落として D レンジを広げる方法は採りませんでした。代わりに登場したのが、露出の違うコマを合成して D レンジを広げる「ハイダイナミックレンジ」(HDR)です。画素数を落とさずに広げられるのが利点です。
 難点は、時間差が生じるため動く被写体に不向きなことですが、連写速度の向上で、動きの激しい被写体でなければ、使えるようになりました。

 HDR 技術は RAW 現像するときにも威力を発揮します。Photoshop CS5 では、1コマの RAW データから白トビ・黒潰れのない画像を引き出す HDR トーンと、複数の RAW データを合成する HDR Pro が選べます。
 印刷段階でマスキングフィルムを駆使して行なっていた作業が、パソコンを使って個人レベルでできるのは、デジタル写真の利点のひとつです。

 デジタル写真はダイナミックレンジが狭い・・というのは、もう過去の話になりつつあります。解像度、高感度、連写速度と、フィルム時代を凌ぐ性能を獲得してきたデジタル写真が、ダイナミックレンジの次に超えるのは何でしょうか?

2011/11/07(月)RAWデータとホワイトバランス

 ホワイトバランスを手動で設定するのは、かなり面倒な作業です。ケルビン数を 5000K にセットする程度のことなら簡単ですが、いろんな人工照明が入り混じった場所でホワイトバランスをとるのは、かなり厄介です。

 結婚式の写真のような失敗が許されない撮影は、なるべく RAW データで保存するようお奨めします。カメラでホワイトバランスを設定するのも、後から現像ソフトで調整するのも、似たような作業ですが、決定的に違うことがあります。カメラ側で設定して撮った JPEG データがダメだったら、それで終わりだということです。

 画像ソフトである程度の修整はできるから、「それで終わり」というのは極論ですが、何百枚もの画像を後からネチネチ修整するくらいなら、現像時にまとめて一発で補正したほうが楽だし安全です。失敗してもやり直しが利きます。
 RAW データを現像するのは面倒な気もしますが、それができないようなら、カメラ側でホワイトバランスをきっちり設定するのは無理でしょう。RAW データさえ握っていれば、自分で現像できなくても業者に委託することも可能です。誰か詳しい友人に頼むとか・・・

 RAW モードでの撮影は、1コマあたりのデータサイズが大きく、メディアの容量を食うのが難点です。L判程度の写真でいいからと、画素数を落として撮影することはできません。保存容量を抑えたいなら、シーンによって RAW と JPEG を使い分けることになります。

 結婚式の撮影を請け負う業者は、JPEG モードで撮っているのが普通です。後処理に時間をかけたくないからです。画像データの総容量を抑えたいし、その場所で撮り慣れているという事情もあります。
 そんなプロの写真よりもいい仕上げにしたいのなら、やはり RAW で撮って後処理でしょうね。きっと、頼んでよかったと感謝されますよ。
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