2017/08/02(水)想い出に残る独創の卒業アルバム
やはり、ここ数年の間に両親が介護の末に亡くなったとか、経済面で身内の協力が得られず苦労したとか、波乱万丈の日々を送っていたみたいです。ようやく落ち着いたところだと言ってました。学校写真を抱えているから、家のことで自分が抜けると卒業アルバムに穴が開きます。手抜きをしない男だから、親の面倒を見ながら仕事をこなすのは大変だったと思います。
最近制作した卒業アルバムを見せてもらいました。よくあるお定まりのパターンとは違い、生きた人間の学校生活を捉えた秀作でした。教師は一般的に生徒と一緒に集合写真に納まっているのが普通ですが、このアルバムでは一人ずつスナップの効いたポートレート風に撮られています。卒業アルバムと知らなければ、学校の先生とは思えない、あたかも個性豊かな俳優みたいな扱いでした。
とはいえ、卒業アルバムの主役はやはり生徒です。少子化で一学年の人数が少なくなったこともあり、手書きの文章や習字・絵画のカットも含めて生徒一人に1ページを割いていました。ここでもスナップ風に撮られた生徒は皆、表情豊かに笑っています。日ごろからカメラマンとの人間関係ができているから撮れるカットです。
最後の方の写真がランダムに並べられたページに、校長が生徒に卒業証書を渡すカットがありました。「そのアルバムをもらう生徒の写真なんだわ」というからビックリです。生徒一人ひとり別のページを作って差し替えて製本しているそうです。少人数で印刷部数が少ないから、製作コストはどうしても割高になります。その上に生徒ごとに原稿を作って差し替えるとなると、コスト的にかなり無理が生じます。
でもこの先生はそんなことはお構いなしです。言い出したら聞かないのを印刷屋の担当者もわかっているから、「ま、なんとかしましょう」ということになるんでしょうね。それにしても校長が卒業証書を渡すシーンをひとり残さず全員撮るのは根気がいる作業です。失敗は許されないし、卒業式後にページを編集するのは時間的にも大変です。
「この卒業アルバムをもらったときにみんなが喜んでくれたらいいんだ」と言います。写真を撮るのは技術じゃない、想い出を記録に残すひとの心のあり方なのだということをあらためて教えてもらった気がします。