2009/06/03(水)婚礼写真の価値感
式典そのものよりも、写真にお金をかけるところもあるそうです。インドでの結婚式では、儀式と一般の人を招いての披露パーティーでは、スチール写真とムービーのプロカメラマンが、しっかり張り付いていました。
アジア圏は総体的に写真にお金を掛ける風潮があります。以前から、台湾・韓国は婚礼写真の盛んな国柄です。いま流行りのブライダルアルバムのルーツは、こうしたアジア圏で、もともとは「輸入品」です。
30年ほど前に、日本の写真館が台湾へ視察に行くのが流行った時期がありました。日本の婚礼写真とは まるで違う・・という話でした。
写真スタジオと美容院が同じ建物のなかにあり、必要な設備が揃っています。エレベーターで階を上がるごとに衣装を着替え、背景やセットを変えながら撮影します。新郎新婦は、まるで映画スターみたいな扱いです。
当時視察に行った写真館の御曹司によれば、写真はよかったが、アルバムが貧粗だと言います。フリー台紙の市販アルバムに、四つ切の写真が何十カットか貼ってあるだけでした。日本なら、専用の多面台紙を用意するところです。
こうした交流のなかで、商品内容のレベルアップが進みます。やがて重厚な表紙の立派なアルバムが登場しました。いまのデザインアルバムの原形です。
日本の写真館は、お高くとまっているところがありますが、海外の写真館はユーザー志向が強くサービス精神が旺盛です。お客が求めるものを提供することで、商売が発展するという考え方を持っています。
写真撮影の世界でも、こと商売に関しては、アジア圏の国々は先輩格でした。ただし、せっかく視察に行っても、そこを学んできた写真館は少なかったようですが・・・
海外のスタジオをヒントに登場したのが、いまの子供写真館です。日本のブライダル市場は、式場・ホテルと専属の写真スタジオでガッチリ固められているから、利権の及ばない子供写真の分野を狙ったようです。
少子化で、子供は「金になる被写体」です。両親と双方のジジババ合わせて、6つ財布があると言われています。
2009/06/02(火)国が違えば結婚式も変わる
男と女が契りあって夫婦になるということは同じです。そのための儀式もお披露目のパーティーを催すことも同じです。でも、インドでの結婚式は、日本とは趣が全く違いました。
結婚するということの意味あいや、家族同士のつながりのあり方が、現代の日本よりももっと前の時代に近いと思います。お見合い結婚が多数派を占めることを見ても、明治・大正から昭和初期の日本の価値観に近いものがあります。
デリーみたいな都会と違って、マイナーな地方都市では、外国人観光客そのものが珍しい存在です。
私たちが泊まったホテルでも、どうして応対したらいいのか、従業員が戸惑っている感じを受けました。チップを求めて寄ってくるわけではなく、避けて通っている印象です。観光地とマイナー都市の差が歴然としています。
ヒンズー教徒の儀式は、結婚する二人と祈祷師(バラモン?)の3人で執り行うもので、両親や親族は周りで見ているだけ…というものでした。平服でもいいと言われていた意味がわかります。
大事なイベントで、遠い国から来た人を立てようと、ゴマを二人に配る役を与えたり、儀式に協力した人にご祝儀を渡したりと、いろいろ気を使っていました。荘厳な儀式でありながら、みんな勝手に談笑していたのは意外な印象を受けました。
その夜催されたパーティーは、日本では見られない光景でした。今日はメーデーか?というような人出です。
電飾で飾られた雛壇に新郎新婦が座り、二人に祝福を伝える人たちの列が延々と続きます。例えは悪いですが、著名人の葬式で焼香の順番を待つ人の列に、何となく似ています。
インドでの挙式は、もう少し後で落ち着いてから紹介するつもりです。今回は、かなりのカルチャーショックでした。
2009/06/01(月)結婚式の「輸出」
たまにテレビの特番でも紹介されます。日本式の披露宴は、リッチな階層にはウケがいいという話です。あらたまった席にゲストを招いて、豪勢にもてなすのが新鮮なんだと思います。
昔、台湾に行ったときに現地のガイドがこんな話をしていました。
女の子が生まれると、招興酒を仕込んで庭に埋める習慣があります。その子が結婚するときに掘り出して、客に振舞うためです。たまたま晩婚だったら、「この酒はよく熟成していて美味い!」と、酒をめでるのが礼儀だとか・・・
吉凶禍福世としてこれなきはなし・・人生すべて塞翁が馬・・歴史と文化のある民族は おおらかですね。
近隣皆こぞって結婚を祝福する・・そんな風習が残っている国へ、ビジネス化された日本式の披露宴を「輸出」するのは、どうかという気がします。
経済が急発展した影響で、貧富の差が拡大しています。富裕層は、先進国の真似をしたい気持ちが強いから、それをアテこんでいるのでしょうが、古きよき風習が廃れていくのは残念です。
日本の結婚式がいまの形になったのは、そんなに古い話ではないようです。互助会をはじめ、ブライダル専門の式場が登場してからだと言います。新たに刊行されたゼクシィを筆頭に、ブライダル誌がこぞって特集を組み、式場間の競争を煽りました。
かつては3年ほど続いた新規オープンの魅力は、いまでは1年程度だと言います。誰かが利用したら、その周りの人達の間では、もう終わりなんだとか…
結婚式場も使い捨ての時代です。絶えず改装してリニューアルしないとお客を獲得することができません。短期間に元手を回収しなければならないので、料金は高くなります。悪循環ですね。
結婚を皆で祝福するという原点に立って、消費者自身が考え方を変えない限り、虚飾のブライダル市場は変わらないと思います。