2011/07/04(月)スカイライトでブツ撮り
印刷屋のビルの一室を間借りしていました。天井の梁が邪魔で、使いにくいスタジオだった記憶があります。スカイライトの位置が限られていたため、それなら短いレールで吊るか・・という話になりました。
1m 程の短いレールを2本天井に固定して、パンタグラフでスカイボックスを吊下げました。例のH氏がコルツ管に替えてくれた PROPET の薄型スカイです。
天井高が 3m 程度しかないのにパンタで吊ったのにはワケがあります。いっぱい下まで伸ばすと、ちょうどテーブルトップの撮影にいい位置でした。人物用のスカイボックスをブツ撮りに流用しようという作戦です。ちょっとした撮影には便利でした。
先生によれば、写真館向けの照明機材で役に立ったのは、このスカイくらいだと言います。あとのものは、コマスタでは使い道がないか、使い辛いかのどちらかだそうです。
写真館でブツ撮りをしているところは少ないから、スカイボックスをテーブルトップの撮影に流用する発想はないでしょうね。メインライトを俯瞰で使うくらいしか想いつかないはずです。トップ光で商品撮影することすら知らないかもしれません。
先生の自宅のプライベートスタジオは、天井にアール状の傾斜がついているので、レールは使えません。スカイボックスは納屋に大事に仕舞ってあります。
H氏が改造してくれたコマスタ向けの特別仕様だから、写真館には売らないでおこうね・・というのが、二人の間の暗黙の了解です。
2011/07/03(日)写真スタジオのレール組み
レールの素材はアルミです。断面がH型のレールを 90°寝かせた状態で天井に固定し、その下側にランナー金具をかませて、移動用のレールを取り付けます。
ストロボのヘッドは伸び縮みするパンタグラフで吊下げます。メインライトは、上下左右に動かすことができるようにするのが一般的な設置方法です。
写真館は、人物の記念撮影がほとんどだから、このやり方が有効です。床にライトスタンドなど邪魔なものがないので、スタジオが広く使えると、全国に普及しました。
実際には、ライトの位置を動かすことはほとんどないみたいです。言ってみれば過剰設備ですが、天井にレールを組むことが写真館のステータスになったようです。
一方、コマーシャルフォトがメインのスタジオは、レールを組むことはしません。撮影内容に応じてライティングが大きく変わるからです。普段は機材庫に仕舞っておいて、仕事が入ったときだけライトを組み立てます。撮影が終わったら、すべて片づけるのが決まりです。
「酸化セリウム」の先生はコマーシャル系だったから、レールやパンタグラフとは無縁でした。その代わり、傘立てみたいなラックに、ライトスタンドが何本も並んでいます。頭上にライトを吊下げるブームスタンドなんてデカイのもあります。
撮影のときは、ライトやレフ板が林立して、足の踏み場もない状態になります。一般の人が利用するわけではないから、これでいいのでしょう。
「写真館のあのレールは理解できん」と、よく言っていました。人物撮影でもライトの組み方が写真館とはまったく違います。フロントライトを使うことは、ほとんどないみたいです。
人物と背景は別々にライトを組むのが、コマスタ流のライティングです。レールから吊下げられたライトでは、自由がきかないということでしょうね。
2011/07/02(土)ストロボ屋の強者所長
KAKO ストロボは、当時は日立コンデンサーの系列でした。ストロボ事業からの撤退で、社員は日立グループに分散しました。PROPET 再生時に当地の責任者に赴任したH氏は、日立家電に在籍していたそうです。
どうしてもストロボの仕事がもう一度したいと、日立を退社して馳せ参じたと聞きました。骨のある人ですね。
そんな経緯を知って、H氏には好感を持つようになりました。あまり接点はなかったのですが、会う機会があれば、親しく話をする間柄でした。
キャンセルになったジェネを処分するときに、声を掛けて貰ったこともあります。今使っている 1250Ws のジェネや 800Ws のジェネは彼の斡旋です。写真館など業者に処分話を持っていくのは、支障があったからかもしれませんね。
顧客のためには骨身を惜しまず積極的に動いた人でしたが、無理が祟ったのか脳溢血で倒れてしまいました。病院に見舞いに行ったときに、口はきけないけど何か言いたそうな表情だったのが印象に残っています。
奥さんの献身的な看病にもかかわらず、とうとう帰らぬ人となります。彼の後を継げる人はいないだろうと皆言います。同じように働けば、また同じ運命を辿ることになりかねません。それほどよく動いた人でした。
「酸化セリウム」の先生も懇意にしていました。H氏に頼まれて、理容店の写真セミナーの講師を務めたことがあります。機械製造の技術者に撮影技法のレクチャーをしたこともありました。彼の情熱に押されて、損得抜きの付き合いでした。
先生の手元にあるフラットタイプのスカイライトボックスは、閃光管がコルツ管に替えてあります。写真館向けの仕様では、コマーシャル撮影に耐えられなかったからです。役に立たないものは売れないと、H氏が自分の裁量で閃光管をすべて交換しました。
こういう強者は、もう現われないかもしれませんね。ご冥福をお祈りします。