2011/07/28(木)APS が普及しなかった理由

 鳴り物入りで登場した APS フィルム規格でしたが、わずか 15 年ほどで姿を消すこととなりました。あまり普及しなかったのがフィルム終了の要因です。
 では、普及しなかった理由は何でしょうか?

 一番の理由は、アナログ式のフィルムだったということでしょうが、それを言ってはおしまいです。当時は、まだフィルム式のカメラが販売の中心でした。
 前回紹介したような「APS は扱わない」というカメラ屋もありましたが、理由はそれだけではなさそうです。

 マイナス要因のひとつはフォーマットサイズです。135 フルサイズよりもひと回り小さいフィルムサイズで、画質的な魅力はありませんでした。
 アナログ式のフィルムは、フォーマットが小さくなれば、粒状性も含めて画質が低下します。135 サイズに優る特徴は、フィルム装填が簡単なことと、途中で巻き戻して再装填できることくらいでした。それもその機能を備えたカメラでの話です。

 現像が終わると、カートリッジに収まった状態で戻ってきます。フィルムの画像を直接目で見ることはできませんでした。その代わり、インデックスプリントが必ずついてきます。
 フィルムシートと違って、コロコロしたカートリッジを保管するのは難儀でした。専用のカートリッジケースを無料で配ったりしたものの、インデックスプリントの番号とカートリッジナンバーを照合するのも面倒でした。

 プリントサイズは、ハイビジョン(H)、クラシック(C)、パノラマ(P)の3種類が選べます。実際にはハイビジョンサイズで撮影され、磁気情報でプリントサイズを記録して、プリント時に判断する仕組です。後からプリントサイズを変更することは可能です。

 プリント価格の問題もあり、ほとんどの人がクラシックで撮影していたと思われます。せっかくの新規格が生かされないまま使われていたようです。
 旗振り役のコダック・ニコン・ミノルタ(コニカ)は、数年後にはカメラの製造を打ち切りました。デジタルカメラの台頭を受けての判断です。

2011/07/27(水)遅すぎたAPSの投入

 今月終了宣言が出された APS フィルムは、デジタルカメラの黎明期に登場した規格です。小型のカートリッジ式で、フィルム装填が簡単にできるのが特徴でした。
 ソニーのマビカやカシオの QV-10 が、次世代のデジタルカメラとして話題を呼んだ時期に投入されました。コダック・フジフイルム・キヤノン・ニコン・ミノルタの共同開発です。

 写真をプリントで楽しむには、当時はまだ力不足だったデジカメですが、将来性は注目されていました。それに対して APS は、画期的と言えるほどの新鮮味はなかったように思います。デジタルへ移行するまでの中継ぎというか、延命策として捉える向きがありました。

 昔、何回か通ったことのある中古カメラ店は、店頭に「当店では APS カメラは扱いません」という張り紙をしていました。
 理由は、ポケットカメラやディスクカメラのように、APS も短命に終わるという予測です。メーカーに踊らされて、いままで何度も痛い目に遭ってきたとか・・・

 「扱わない」というのも極端な話ですが、こうした空気は業界の中に少なからずあったみたいです。業界こぞって新規格を盛り立てよう・・ということにはなりませんでした。
 この時点で、アナログ写真の行く末は見えていたのかもしれません。

 「短命に終わるのは APS だけじゃないかも?」と言いかけてやめました。偏屈オヤジの怒りをかってはいけません。小さな店でも一国一城の主です。ウンチクを語らせたら、なかなかのもんでした。
 長いこと顔を出していませんが、まだカメラ屋をやっているでしょうか? 今回の APS フィルム終了の話をしたら何て言うか、お説を聞いてみたい気もします。

2011/07/26(火)APS対応の負担

 ミニラボ店では、APS に対応するため、追加の設備投資が負担となりました。フィルムキャリアのほかに、インデックスプリントを出力する装置が必要です。既存の設備を改造するか、プリンターを買い換えるかの判断を迫られました。

 こうした設備投資は、パノラマサイズが登場したときも同じでした。このときは、プリンターの改造で済ませた店が多かったように思います。六つ切がプリントできる機械なら、89mm 幅のペーパーを使ってプリントできました。

 行きつけの写真店は、外注先のラボの請求書を見て、パノラマ改造しても元が取れると踏んだそうです。そのくらいパノラマプリントが増えた時代が一時期ありました。
 L判を2枚つないだだけなのに、1:3の横長のプリントはインパクトがあったみたいです。画質的にはポケットフィルム(110)をL判に焼いたのと同じくらいです。画質が悪いからパノラマでは撮らない・・という声が少なかったのは意外でした。

 APS への対応は、インデックスプリントが必須です。そのための専用プリンターも登場しました。ハガキサイズほどの昇華型のプリンターです。プリントコストが高いのが難点でした。
 プリンター自体を買い換えた店は、印画紙でインデックスプリントが出力できました。こちらはコスト的には有利です。135 サイズからもインデックスプリントが焼けました。APS が出たことで、従来の 135 ユーザーにも恩恵があったわけです。

 そうこうしているうちに、時代はデジタルへと大きく変わっていきます。デジカメからプリントできるように、再び設備投資が必要になりました。
 それでもデジタル対応機に買い換えられたのは、ミニラボ店にまだ余力があったからです。その源はフィルム現像の利益でした。それが急速に減少します。
 いまになって考えると、APS の登場は、結果的にミニラボ店に余分な設備投資を強要し、体力を奪っただけかもしれませんね。
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