2011/08/28(日)ズームレンズは劣る?
オートニッコール・テレフォトズームの名称で、焦点距離は 85-250mm F4-4.5。「オート」というのは、自動絞りの意味です。普通絞りやプリセット絞りのレンズが、まだ現役だった時代です。
Nikon F につけた写真が載っていましたが、バカでかいですね。「ズーム特集」のものと比べると、約2倍近い長さです。
面白いと思ったのは、当時の解説書の中の文言です。「特に克明な描写を目的とする撮影には向きませんが・・」とか、「各焦点距離に対応する単独焦点距離のニッコールレンズに比べると周辺の描写が多少劣ります」と書いてあるそうです。
正直というか、ニコンらしいというか・・・
確かにその当時のズームレンズは、写りは単焦点レンズよりかなり劣ります。おまけに「高くて重くて暗い」の三拍子が揃っていました。金持ちの道楽か、報道関係などの仕事で使う以外には、ほとんど売れないシロモノでした。
コンピューターの発達で、複雑な光学設計が短期間にできるようになり、ズームレンズの性能は一気に向上します。方眼紙を複写するようなシビアな撮影でもない限り、ズームレンズの写りを云々する意味が薄れました。特集記事は、ちょうどそのころです。
1981 年の段階では、メーカーの広告で一眼レフにセットされているのは 50mm の単焦点です。その後、標準ズームに替わっていくことで生産数が増え、製造コストが安くなりました。
標準ズームと望遠ズームの2本あれば、ほとんどの撮影がカバーできました。その後、ダブルズームのセットで売られるようになってからは、低価格のレンズが主流になります。
高感度フィルムの登場で、F値の暗いレンズでも実用でるようになったのが、低価格化を後押ししました。売っても売っても儲からない、レンズメーカー受難の時代が、そのうちやってきます。
2011/08/27(土)ズームレンズ全盛時代
時代を反映して、特集記事は「ズームのメカニズムとテクニック」です。トップページには、TAMRON アダプトールⅡ 80-200mm F3.8-4 のカットモデルが、見開きで載っています。マウント部分を交換することで、各社一眼レフに自動絞りで使えました。
マウント交換式は、コムラー(三協光機)も出していましたが、この時点で既に姿を消しています。ズームレンズの設計に失敗したのが原因とも、労働争議で潰れたとも言われています。
倒産する前は、レンズメーカーとしては国内で圧倒的なシェアを誇っていました。ブロニカ用中判レンズのほかに、大判レンズも出していました。テレコンバーターのことを「テレモア」(コムラーの商標)と言う人は、かなりの年配者ですね。フィルム感度が「アーサー」(ASA)だったりして・・・
特集で紹介されている 114 本のズームレンズには、サードパーティーのものが数多く含まれています。いまでも健在のタムロン・トキナー・シグマのほかに、サン光機・オオサワ(大沢商会)が載っていました。
別枠で、マキノン(マキナ光学)の 35-105mm F2.8 が、「国内では幻のズーム」として紹介されています。このレンズは輸出専用でした。
トップマン(タカラ製作所)というのもあったはずですが、CAPA の特集には載っていませんでした。ほとんどが輸出用で、国内の販路が弱かったからでしょう。
テフノン(小堀製作所)が登場するのは、この特集より少し後のようです。キヤノンに OEM 供給していたのを切られたのが、国内販売のきっかけだとか聞いた記憶があります。(詳細は不明)
2011/08/26(金)AF一眼レフのハシリ
カメラ毎日は 1985 年に廃刊となりました。最後まで読んでいたはずですが、手元には1冊も残っていません。最終号くらいは残しておけばよかったですね。
新製品を紹介する「ニューメカニズム」のコーナーのトップは、PENTAX ME-F です。オートフォーカス一眼レフのハシリでした。専用レンズと組合せることで、自動的にピント合せができました。
それまでは、レンズに合焦機能を組み込んで AF 化していました。キヤノンとリコーから専用レンズが発売されています。
ボディーにピント検出機能を持たせたことで、専用レンズでなくても合焦位置がランプでわかるのが ME-F の利点です。
自動的にピント合せが可能な専用レンズは、35-80mm F2.8 です。レンズの下部に電池ボックスがあり、内蔵モーターを動かして AF 作動させていました。電池ボックスの膨らみで、下あごが膨らんだように見えたことから、「ペリカンレンズ」の愛称で呼ばれていました。
F2.8 のコンスタントFナンバーは、意欲的なスペックでしたが、そのぶん価格も高く、誰もが買えるレンズではなかったと記憶しています。
合焦速度は、お世辞にも「速い」と言えるものではありませんでした。ジーコジーコとモーターが回る音がして、行ったり来たりを繰り返すこともしばしばです。(手で合わせたほうが速い!)
目の疎くなったお金持ちの年寄り向きですね。ピントを検出する位置が、ファインダースクリーンのスプリットイメージ1ヶ所という点も不満でした。日の丸構図の写真になりがちです。
誰もが納得できるレベルの AF 機能は、3年半後に発売される MINOLTA α7000 まで待つことになります。創刊2号では、X-700 の発売がアナウンスされていました。プログラム機能搭載が特徴です。一眼レフの全自動化に一歩ずつ近づいていたのがわかります。