2010/02/22(月)0円プリントの店はいま?

 一時は街のあちこちで見かけた「0円プリント」の取次店は、いまどうなっているのでしょうか?

 当時は、クリーニング店やタバコ屋などが多かったように記憶していますが、そうした店が写真を取り次いでいる様子はありません。フィルムをただ預かればよかった時代と違って、デジカメのプリントは店頭受付機が必要です。小さな個人商店には荷が重たい負担です。

 大元のラボがどうなっているか調べたら、まだ健在でした。ネットで注文を受けて、全国2万店の取次店で仕上りが受け取れるそうです。「送料無料」となっていました。どういう店が窓口になっているか見てみると・・・
 ドラッグストアが多いですね。チェーン店がそっくりそのまま窓口になっていました。個人商店らしい屋号も散見されますが、数としては少数派です。

 取次店を回っている大元のラボは、銀塩全盛時代に急成長を遂げた企業です。テレビの番組でも紹介されました。
 集配コースをきめ細かくチェックして、右折を少なくすることで時間を短縮するなど合理化を進めている・・といった内容です。もちろん、低価格プリントを実現するためのノウハウとして紹介していました。

 写真店の組合役員をしていた人から、このラボの本社に陳情に行ったときの話を聞いたことがあります。安売りの5円プリントをやめてほしいという陳情です。
 先方が言うには、5円でやっても十分利益が出ているので値上げしてくれと言われても・・との返事だったそうです。「あなたがたの努力が足りないのでは?」と切り返されて、言葉が出なかったとか・・・

 その後、温泉を掘り当てて、そちらの事業に移行するかと思っていましたが、いまでもラボ業をやっています。メーカーラボが疲弊して、その取引先の集配業務も請け負っているそうです。呉越同舟ですね。

2010/02/21(日)0円の伏線はオイルショック

 一世を風靡した0円プリントが登場する伏線は、オイルショックまで遡ります。当時は、自家処理店は少なく、総合ラボ全盛の時代でした。写真店の大半が「取次店」だったわけです。

 オイルショックでガソリン代が高騰します。総合ラボは、各店を車で回って集配していたから、コストが一気に上昇しました。
 プリント価格を上げればいいわけですが、消費者にも店側にも抵抗感があって、なかなか思うようにはいきません。そこで抵抗感の薄い現像料を値上げしてしのぎました。

 当時から消費者への価格訴求は、「プリント1枚○○円」という表示が定着していました。ガソリンスタンドの価格表示と同じですね。プリント価格の値上げには、強い抵抗感がありました。
 写真店の多くは取次店だったから、利益はマージン制です。プリント価格の表示を変えずに利益が確保できたので、現像料の値上げに応じました。

 それ以降、コストの変動があるたびに、現像料をクッションにする商習慣が定着しました。その後、ミニラボ機の登場で自家処理店が増えていきます。現像料は、自家処理店の大きな利益源となりました。
 500円玉の登場で、それまで400円前後だった現像料は、ワンコインの500円が主流になります。プリント価格の競争が激しくなるなかで、消費者の抵抗感が薄い現像料は、上昇の一途をたどりました。

 そして、とうとう0円プリントが登場します。現像料は650~700円まで上がりました。ゼロ円は景表法上の問題があるという理由で、フィルム1本いくら・・という総額表示にしていた店もありましたが・・・

 高くなりすぎた現像料は、デジカメの登場で写真店からの消費者離れを招きました。デジタルデータを扱う「基本料金」なるものを考案しましたが、消費者の反発を受けて、すぐに姿を消します。
 写真業界に利益をもたらした現像料は、業界崩壊の要因でもあったわけです。

2010/02/20(土)昔懐かし 0円プリント

 タダとかゼロ円といえば、銀塩写真全盛時代に「0円プリント」というのがありましたね。同時プリントすると、各1枚のプリント代がタダになると謳う商法です。
 最近ではとんと目にしなくなりました。ここまでフィルムの需要が減ると、ゼロ円を訴求する意味がなくなったということでしょう。

 0円プリントは、取次店から広まりました。0円になる前は、プリント代は5円程度だったと記憶しています。取次店のマージンは2割程度でした。現像料を500円とすると、24枚撮の代金が620円、利益は124円となります。宅急便の荷物を1個預かるよりは、少し儲かる商品でした。

 そのうち、DPの利益源が現像料にあることに気づきます。プリント代に比べて現像料に対する消費者意識が低いことも体得しました。
 現像料を150円ほど値上げして、プリント代を0円にしたほうが儲かることに気がついたわけです。売上が650円、利益が130円となり、消費者に安さを訴求する一方で、利益を確保できました。一石二鳥です。
 仕入価格が1枚4円のまま、取次店側で勝手に0円プリントを打ち出すところもあったとか・・・

 こうした商法は、自家処理のDP店にも波及していきます。ボールペン1本で商売できる取次店と違って、自家処理店は原材料費と自動現像機の償却(リース代)があります。0円プリントは、厳しい商売でした。
 プリントのコストを下げるために、逆輸入ペーパーに切り替えたり、ケミカルをコストの安いものにしたりと、涙ぐましい努力が続きます。

 ドル箱のフィルム現像がなくなって、デジカメからのプリントが大半になりました。現像料がなければ、0円プリントは成立しません。プリント価格のボリュームゾーンは1枚35円前後のようですが、もっと安い価格で勝負している店もあります。
 Eメールで「デジカメプリント1枚9円」なんて広告が送られてきました。こんな価格で採算が合うのでしょうか?
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