2010/01/16(土)ポラとフォトラマ

 インスタント写真の元祖は、米ポラロイド社です。後発のFUJIFILMは、「フォトラマ」という商標で発売しましたが、プロの大半は「ポラ」と、ひと括りです。

 「酸化セリウム」の先生は、コマーシャル写真の仕事でインスタントフィルムを多用していました。常用していたのはポラロイド社のフィルムです。
 「発色は富士のほうがいいのに何故?」と、疑問に思って聞くと、それには深い訳があると言います。富士だと、テスト撮りのときにクライアントに渡した写真のほうがよく見えて、「結果が違う」というクレームにつながるんだとか・・・
 発色が独特の(というか見劣りする)ポラで撮ったほうが、無難だというのがその理由でした。違いがわかったうえで使ってたんですね。

 そんな話を富士のインスタント部の担当者にしたら、「誉められて喜んでいいのやら悲しんでいいのやら・・」とこぼしてました。使ってもらってナンボの世界です。
 この担当者、転んでもタダで起きないタイプで、巷では「あいつが通った後にはペンペン草も生えない」と言われたくらいヤリ手の男です。「その先生を紹介してくれ」と言うので、一緒に事務所に連れていきました。

 どんな話をするのか興味津々で、横で聞き耳を立てていました。カラーのFP-100Cを売り込むのかと思ったら、カラーの話は一切せずに、モノクロの説明です。
 白黒のFP-100Bなら、相反則不軌の影響がほとんどないので、タングステン照明でのブツ撮りテストには最適だと、データを出して説得していました。
 プロは、こういう話に弱いんですね。「早速試してみる」と、注文を入れていました。それ以降、モノクロはFP-100B一本槍です。

 先生からは「いい男を紹介してくれた」と喜ばれました。初めは、うさんくさそうにしていたのに・・・
 あの先生を手玉にとるとは・・「ペンペン草も生えない」と言われるだけのことはあったようです。

2010/01/15(金)インスタント写真とデジタル

 ピールアパートタイプのインスタントフィルムは、コマーシャルフォトのテスト撮り以外にも広く使われていました。証明写真です。
 デジタル写真が普及する前は、ほとんどがインスタントフィルムでした。今でも使ってる写真店があります。

 撮影してからの現像時間は、カラーが90秒、モノクロなら30秒と短いのが特徴です。常温での話ですが、実際には少し長めに現像するのが、安定した結果を出す秘訣です。
 現像といっても、特殊な加工処理をするわけではありません。フィルムホルダーから引き抜くときに、ローラーが薬液の袋を潰して、印画紙に自動的に塗布します。一般的なモノシートのインスタント写真と同じですね。現像後に、表面の紙を剥離するかしないかの違いです。

 撮影後、わずか1~2分でプリントが手に入るのは、デジタル写真よりも早くて便利なシステムです。デジタルに取って代わられたのは、コストの問題です。インスタント写真は、普通の銀塩プリントと比べてもかなり割高でした。
 証明写真のような付加価値の高いジャンルでも、デジタル化が進んでいます。駅やスーパーに設置してある証明写真ボックスは、すべてデジタル写真です。

 最初にピールアパートタイプのインスタントフィルムを見たのは、学生時代です。「酸化セリウム」の先生のアパートでした。
 おもむろに取り出した蛇腹式のインスタントカメラで、パチリと1枚撮ってもらいました。ポラのモノクロです。「この写真1枚が五百円札1枚と同じだ」とか言ってました。ずいぶん高いもんだなぁと思いながら、そんなに慌ててプリントにする必要はないのに・・と違和感を覚えました。
 先生は、当時から新しモノ好き・・だったんですね。

2010/01/14(木)モノクロFPとブツ撮り

 「酸化セリウム」の先生の話では、ピールアパートタイプのFPフィルムは、カラーのFP-100Cと一部を残してモノクロは中止の方向だとか・・・
 一般の人にはほとんど関係ない製品ですが、プロにとっては、フィルムでブツ撮りするときに不可欠の感材です。露出を決めるときのテストフィルムです。
 俗に言う「ポラ引き」ですね。インスタントフィルムは、富士製でもプロの間では「ポラ(ロイド)」です。

 カラーはほとんど使いません。コスト高という理由のほかに、相反則不軌の問題があるからです。タングステン照明での撮影は、露光時間が長くなります。デーライトタイプのカラーは色温度変換フィルターをかけるから、さらに露光時間が長くなります。
 相反則不軌による補正と、色温度変換による補正の両方を加味して露出を決めるわけですが、ピッタリ当てるのは至難のワザです。実効感度の違いもあるし・・・

 その点、モノクロのFPフィルムは相反則不軌の影響がほとんどありません。もともと色がないから色温度補正も不要です。12秒程度の露光時間なら、感度低下は無視してもいいそうです。ただし、FUJIFILMのFP-100Bの話です。
 あとは実効感度の違いだけ読み替えれば、ほぼドンピシャで露出が出せます。タングステンタイプのリバーサルフィルムを多用するプロにとって、モノクロのFPフィルムが製造中止なるのは、露出計が世の中からなくなるのと同じくらい重大な出来事です。

 とはいっても、コダックのEPYも中止です。タングステンタイプのブローニーフィルムで商品撮影するプロは、もうほとんどいないということでしょう。需要が少なければ、工業生産品は継続できません。
 まだメーカーのサイトには、今まで通りFP-100BもFP-500Bも現行品として載っています。すぐになくなるわけではないと思っていたら、この春には出荷が止まるみたいです。
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