2012/12/16(日)連射で段階露光
よく利用したのは風景写真を趣味にしている人たちです。リバーサルフィルムはラチチュードが狭いので、カメラの内臓露出計で適正露出が得られるとは限りません。オーバー・アンダーはつきものです。そこで、カメラが選んだ適正露出の前後も押さえておけば、助かる確率が高まります。
一般的には 1/2EV ずらして3カット撮影するやり方が主流です。基準の露出が大きくずれていなければ、どれかひとコマは使えるはずです。「適」がちょうど中間でもプラマイ 1/4EV の誤差で済むからです。
撮り慣れた人は 1/3EV ずらしていました。プリント用とスライド映写用で適正原板を2枚ゲットするのが目的です。「適」かアンダーぎみのはプリント用、明るめのほうが映写用です。
ネガの場合はもっとラフです。プリントするときにある程度補正できるからです。露光アンダーよりもオーバーのほうが助かる確率が高いので、カメラの「適」のほかに 1/2EV か 1EV オーバーで1コマ余分に押さえておけば、まず失敗はないでしょう。
ネガで AWB を使うことは稀です。同時プリントだと、同じような写真が3枚ずつ仕上がってくるだけだから無駄になります。
「酸化セリウム」の先生は AWB をほとんど使いません。プロは露出計を使って丹念に測り、適正露出を決めたらそのまま露出を変えずに撮り切ります。当たらずと言えども遠からず。ほぼ「適」で撮られたフィルムの一部だけを現像し、それを元に増減感を指示します。いわゆる「切り現」です。本番の現像は、大抵はそのままか、プラマイ 1/3EV 以内の修正で済むそうです。
仕事で使うフィルムの量は半端じゃないから、いちいち3段階露光していたら大変です。撮影の手間も時間も掛かります。AWB はアマチュア写真家向けの機能です。デジタル式になってから使わなくなった人もいるでしょう。
2012/12/15(土)連射よりも一発必中
例えば、ゴルフのスイングを撮るときは、クラブヘッドがボールに当たった瞬間の画像が求められます。画面の中にまだボールが残っているのが理想です。これを捉えるには、カメラの連射機能では不確実です。
「酸化セリウム」の先生は、女子プロゴルファーのカレンダーを撮影していた時期がありました。プロのスイングは速くて、モータードライブの連射機能は何の役にも立たないと言っていました。一発必中でないとダメだとか・・・
ある女子プロは、クラブを振り上げたとき一瞬クッと止まる癖があるそうです。そこでシャッターボタンを押すと、クラブヘッドがボールを叩く瞬間がちょうど写ると言います。プロは振り下ろすスピードが速いですね。当時はフィルムでの撮影だから、結果がわかるのは現像が上がってきてからです。
いろいろ試したうちの成功例を翌年の撮影に活かします。その女子プロの撮影は、ほぼ完璧にタイミングを合わせることができるようになったそうです。それが毎年仕事を取るのにつながります。生活が掛かっているから、この辺がアマチュアと違うところです。
その話を聞いていたので、ゴルフの撮影を頼まれたときは役に立ちました。クラブを振り上げたところで1枚、続けて2枚連射します。アマチュアのゴルファーならこのくらいのタイミングでちょうどです。どれかはそれなりに写っているはずです。最悪でもクラブを振り上げた瞬間のポーズは押さえてあります。
そのうち動画と同じ秒間 60 コマで連射できるようになると、カメラ任せで済むようになるでしょう。ゴルフのスイングは、スチール写真よりも動画のままのほうが喜ばれるかもしれません。動画機能は必要ないと言いながら、その機能に頼る日がいずれ来そうな気がします。
2012/12/14(金)下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる?
それを見ていた高校の先生が、「あんなにいっぱい撮れば私だってプロの写真家になれる」と、授業中に放言しました。それに噛みついたのが若かりし頃の「酸化セリウム」の先生です。大論争になって、その授業は潰れてしまったそうです。
「酸化セリウム」の先生の言い分は、写真の基礎知識やセンスのない者が、いくらたくさん撮っても作品にはならない、というものでした。使えそうな膨大なカットの中から最良の一枚を選ぶから、お金の取れる作品になるわけです。
学校の先生が言いたかったのは、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」という諺でしたが、下手な鉄砲はいくら撃っても当たらないと、生徒に反撃された形です。
デジタル一眼レフの連射速度をもっと上げるよう求める声があります。ミラーの上下運動とフォーカルプレーンシャッターを使っているうちは、フィルム時代と大して変わらないと思います。せいぜい秒間5~7コマ、業務用の特殊仕様でも 10 コマがいいところです。
ミラーの上下動をなくすために、半透過式のペリクルミラーを採用した一眼レフもありました。いまでいうトランスルーセントミラーみたいな固定式です。それでもフォーカルプレーンシャッターの制約は残ります。
店頭でデジタル一眼レフのデモ機を触っていると、いきなりシャッターがガシャガシャ音を立ててビックリすることがあります。前にいじった人が連射モードで試したからでしょう。いくらフィルム代が掛からないとはいえ、こんな忙しい撮り方をする必要があるのかしら?
下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる、という発想ですかね。「酸化セリウム」の先生によれば、下手な鉄砲はいくら撃っても当たらないそうです。もし当たったとすれば、それはまぐれ当たりなんだとか・・・