2012/08/13(月)スキャナー方式のデジタル写真

 「銀塩かデジタルか?」なんて論争が繰り広げられた時期がありましたが、いまや昔話です。10 年ひと昔とはよく言いましたね。既に勝負は終わっています。
 写真の味という意味では、銀塩素材の価値はまだあると思います。CD とレコードの違いみたいなもんですね。どちらがいいか優劣を争っても意味のないことです。

 複写の世界では、デジタル式が断然有利です。デジタルカメラにマクロレンズをつけて撮るのではなくて、スキャナー装置を使って読み取る方式が主流になりました。とくに大きな原稿は、スキャナーのほうが便利です。
 仮に A2 判くらいの古地図を複写するとして、デジタルカメラで撮る場合は、広いスペースと大掛かりな照明機材が必要です。レンズの収差もあるから、隅まできちんと写るかどうかは疑問です。印刷屋に置いてある大型のスキャナーで読み取れば、均質で歪みのない複製が手に入ります。

 印刷屋に置いてある高画質のスキャナーといえば、ドラム式を思い浮かべますが、最近ではフラット式が増えてきたそうです。昔ながらの職人さんが減ったのと、ドラムに巻けない素材のものは読めないからでしょう。ちょっとした立体物がスキャンできる機種もあります。数センチ程度の厚みのものなら立体画像が得られます。

 スキャナとカメラをかけて「スキャメラ」だそうです。京都の企業が開発しました。スキャメラは登録商標です。デジタルカメラで撮影した画像との違いは、被写界深度が深いことです。それと、きちんとライトを組んで撮影したわけでもないのに、質感や立体感があります。
 スキャナーに通る厚みのない商品は、写真スタジオでなくて印刷屋で「撮影」することになるでしょう。カメラマン受難の時代は、まだまだ続きそうな気配です。

2012/08/12(日)姿を消すクイックロードフィルム

 高画質が低コストで実現できるのが銀塩素材の強みです。シノゴなどの大判シートフィルムは、一定の需要があると思いますが、クイックロードタイプは順次販売終了となりました。特殊な「封筒」に 4x5 インチのシートフィルムを1枚ずつ装填したタイプです。

 専用のフィルムホルダーに「封筒」を差込み、タブを引くと封筒だけがホルダーの外に移動して、フィルムはホルダー内に残ります。露光した後、封筒を再びホルダー内に押し込み引き抜くと、フィルムが封筒に収まった状態でホルダーから外れる仕組みです。
 カットフィルムをホルダーに詰めるよりも割高でしたが、ホコリや被りの心配がないのが利点でした。風景写真が趣味のアマチュア写真家には、カットホルダーを何枚も持ち歩かなくて済むと好評でした。

 コスト高のほかに欠点がなかったわけではありません。撮影時には、ホルダーから封筒がはみ出す形になるので、野外での撮影では、風の影響を受けやすいのが難点です。風でゆらゆら・・・カメラぶれの原因になるのが悩みの種でした。
 そんな苦労も、そろそろ懐かしい思い出になりそうな雰囲気です。コスト重視のプロユースはカットホルダーだろうから、アマチュアの需要が激減したんでしょうね。

 手元にあるクイックロードホルダーは、ポラロイド用です。クイックロード専用との違いは、ケミカルを押し出すためのローラーがついていることです。レバーを倒すと、ローラーが圧着して、ポラフィルムに現像液を塗布できます。
 クイックロードフィルムを使うときは、このレバーを倒さずに使います。ポラロイドからは、この手のフィルムはもう出ていないから、レバーをテープで固定したほうが無難ですが、もうその心配も不要です。

 カットシースを使うクイックチェンジタイプは、ずいぶん前に姿を消しました。フィルムパックホルダーは持っていましたが、ほとんど使わないうちにお蔵入りです。仕事でシノゴを使うわけでもない素人が、手を出してはいけない代物でしたね。

2012/08/11(土)最後まで踏ん張るのは35mm判?

 前回話題のラピッドフィルムは完全な失敗例ですが、それ以外の規格でも早々に姿を消したものがあります。コダックが開発したディスクフィルムは、その典型例でしょう。円盤状の専用カートリッジフィルムを使うシステムでした。
 原板のサイズは、ワンテン(110)と呼ばれたポケットフィルムよりも小さなものでした。画質的にはかなり劣ります。いくらカメラが薄く設計できるといっても、こんな規格が生き残れるなんて、誰が思ったんでしょうね。

 銀塩素材を使った製品は、現像処理を伴います。円盤状のディスクフィルムは、ホタテ貝の養殖みたいに、ひもにでも通してタンクに沈めたんでしょうか? 当たらずといえども近からず(?) そんなやり方だったんだろうと勝手に想像しています。
 110 サイズのフィルムは、玩具カメラに採用されたりして、何度か復活のきざしがありましたが、ディスクフィルムは、浸透する前に頓挫したため、二度と日の目を見ることはありませんでした。

 デジタル時代のフィルムとして鳴り物入りで登場した APS(IX240)規格は、現時点でちょうど終焉を迎えた状態です。デジタル化の波を被る中で、よく持ち堪えたほうだと思います。
 結局、最後まで残るのは 35mm 判だと言われてきました。映画用フィルムと共通の規格だったのが、生き残れた理由のひとつでしたが、映画のデジタル化も進んでいます。どうなりますやら。

 銀塩素材の利点は、高画質が低コストで得られることです。大判シートフィルムの画質をデジタルで得ようとすれば、現在でもある程度の費用が掛かります。ついこの前まで、ブローニー程度の画質を得るのに、何億円もの投資が必要でした。
 35mm 判が最後まで残るかどうかは、まだ予断を許さない状況です。気がついたら、この世から 35mm フィルムが消えていたりして・・・
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