2010/01/10(日)「消耗品が儲け」の世界

 「写ルンです」にしてもプリンターのインクにしても、詰め替え品が横行する原因は、その商品の付加価値が高いからです。利権を独占しようとするメーカーと、おこぼれに預かろうとする弱小業者の間で、イタチゴッコが始まります。

 もし「写ルンです」の製造原価の大半が、中身のフィルム代だったら、詰替え品は横行しなかったはずです。フィルムの原価は、一般ユーザーが想像するよりもはるかに安いのが実状です。発売時の小売価格が千数百円の「写ルンです Flash 」は、高付加価値の商品でした。

 ホームプリンターは、割高なインクが消費されることで採算が合う仕組になっています。コピー機とトナーの関係に似てますね。消耗品の原価は安いものです。墨やインクですから・・・
 このおいしいところだけ一口あやかろうと、いろんな業者が群がります。採算の悪い機械本体に手を出そうという者は、まずいません。

 ホームプリンターは、一定の水準まで普及して、成熟期に入りました。あとは買い換え需要を期待するだけです。市場のシェアと稼働率に変動がなければ、消耗品で食いつなげるでしょうが・・・
 耐久消費財の多くは、買ったそのときが一番稼働率が高いと言います。古いプリンターは、あまり使われなくなっているかもしれません。インク代は高いし、よく使う人は詰替えインクに走っていたりして・・・

 交換式のインクカートリッジを他社が製造販売することは、違法ではないというのが定説です。プリンターメーカーが争うのは、自社の特許を侵害しているかどうかに限られます。
 インクカートリッジは、今後ますます複雑化すると思いますが、それを掻い潜るサードパーティーは後を絶たないと予測します。おいしそうな匂いがするうちは、イタチゴッコが続くでしょうね。

 インクジェットに代わる新しいプリント方式が開発され、消耗品の価格が大幅に安くなれば、この構図は大きく変わると思いますが・・・

2010/01/09(土)写ルンですとインクの違い

 「写ルンです」の詰替え品を支えていたのは、写真店を回って使用済みの筐体を買取るヤミ業者でした。当時は1個10~20円が買取相場だったようです。
 一方、メーカーの回収ルートはラボでした。こちらは買取価格というのはなかったように思います。詰替え品の供給ルートは有料買取だったから、闇ルートに流す店はかなりあったみたいです。

 詰替え品に対する感材メーカーの対応はかなり強硬で、やがて市場から姿を消します。回収業者の転売先は次第になくなりました。それでもしばらく写真店を回っていたのは、業務用プリンターの転売が目的だったとか・・・
 回るテリトリーは業者ごとに決まっていて、「あそこの店はそろそろ閉めそうだ」といった情報が飛び交っていたようです。買取った中古のプリンターは、海外に輸出されました。ちょっとした小遣い稼ぎです。

 「写ルンです」に比べると、ホームプリンターのインクカートリッジは、詰替えインクも含めてメーカーの姿勢は柔軟に見えます。元々詰替えできないのが前提の「レンズ付フィルム」と違って、インクカートリッジは交換式です。交換インク自体が商品であることが関係しているみたいです。

 独占禁止法は、優位な立場を利用して消費者の自由な選択を制限することを禁止しています。表立って純正品以外を排除すると、独禁法に抵触する可能性があります。
 その代わり、あの手この手で社外品を排除する仕組を考えました。カートリッジを詰替えしにくい構造にしたり、ICチップを埋め込んでユーティリティーソフトで管理したりと、防止策には懸命です。

 それでも蛇の道はヘビで、独自のカートリッジを用意して、詰替えによるトラブルを回避するものが現われました。なかには純正品よりも高性能を謳う製品もあります。(「純正品と同じ」と謳うと特許侵害で訴えられる?)
 純正品よりもカートリッジのインク容量が多いのは魅力です。インクの色数が多いと、次から次へとインク切れで交換する手間が掛かります。容量が大きくなれば交換頻度が下げられます。(ついでにコストも)

 他社にできてご本家にできないはずはないと思います。プリンターメーカーは、もっとユーザー本位になってもいいのでは?

2010/01/08(金)写ルンですの詰替え品

 詰替えインクを調べていて、ひところ流行った「写ルンです」の詰替え品を思い出しました。FUJIFILMとしては、詰替え品は違法行為という立場で、訴訟も辞さないくらいの強い姿勢で臨みました。
 それでも次から次へと詰替え品が横行します。まるでモグラ叩きの状態でした。それだけ商品に付加価値があったということでしょう。

 FUJIFILMが最初に出したタイプは、ポケット判フィルムを採用していました。粒状性がよくなかったので、すぐに姿を消します。「写ルンです」がヒットしたのは、135フィルムを装填するようになってからでした。ポケット判と違って 135フィルムは、品種が豊富で汎用性があります。

 製品としてのジャンルは「レンズ付フィルム」でした。あくまでカメラではないという位置づけです。その理由は物品税でした。
 消費税が導入される前は、製品ジャンルによって異なる物品税がかけられていました。カメラとフィルムでは税率が異なります。中身が入れ替えられるならカメラだと見なされる可能性がありました。

 発売時点では税区分の関係で、メーカーに詰替え防止の義務がありましたが、次第に企業利益の確保へとその性格が変わっていきます。「写ルンです」は感材メーカーにとってドル箱商品でした。
 そのおこぼれに預かろうと、いろんな業者が詰替え品に手を出します。なかには写真の現像システムを知らずに、映画用のネガフィルムを詰めて、現像液にダメージを与えるものもあったそうです。

 「写ルンです」を筆頭に使いきりカメラは、リサイクルシステムが確立された商品です。メーカーが協同でリサイクル工場を運営していました。回収ルートは、全国を網羅していたラボの集配網です。
 回収した部品によって、次の生産計画が変わります。特価品の販売数が多ければ、回収品も自然と多くなるから、売れ筋の低価格品はなかなか製造中止になりませんでした。

 需要が急落したいまとなっては、訴訟のリスクを背負ってまで詰替え品を出す業者はないと思います。写真店を回って使用済みの筐体を買取る業者も目にしなくなりました。
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