2012/01/28(土)本業以外の多角化

 昔、呉服屋が一斉に宝石を扱い始めた時期がありました。斜陽になった和装の売上ダウンを何とかカバーしようとしたのでしょう。
 着物と宝石は直接関係ないように感じますが、共通点もあります。掛率が似ていることです。

 掛率のいい(原価比率の低い)商品を扱っていると、利益率の悪い商品やサービスは、どうでもよいような感覚になります。呉服屋にとって宝石は、本業と同じくらい儲かるおいしい商材でした。ただし、売れればの話です。
 畑違いの商材をうまく取り入れられたところは少なかったみたいです。呉服業界と宝飾業界と・・・斜陽産業同士がコラボしたところで、活路は見出せなかったのでしょう。欲の皮一枚だけで商売はできません。

 スタジオ設備の件で呉服屋の相談に乗ったときに、デジタル写真集の話になって、こんな意見が出ました。「写真は儲からない」と言うのです。着物の商売と比べて、金額が低いし掛率も悪いんだとか・・・
 いったいどれだけ掛けているんでしょうね。折れて曲がるのは当たり前とは聞いていましたが、写真集よりも着物のほうが掛率がいいとは驚きです。

 後で聞いた話では、スタジオ写真を事業に加えて正解だったそうです。一番よかったのは、日銭が入ることだと言ってました。
 商品を仕入れてからお金に換わるまでに、着物の商売は時間が掛かります。撮影してすぐに現金回収できる写真の商売は、呉服屋にとって新鮮な驚きだったようです。

 ある呉服問屋によれば、写真スタジオを構えた店は、支払がよくなる傾向だと言います。資金繰りにゆとりが出たんでしょうね。成人式の前撮りが始まると、週末になるたびにレジに 10 万、 20 万の現金が入ります。
 掛率が似た宝飾品よりも、振袖のサービスとして始めた、儲からないはずの写真撮影が事業として定着しました。これも経営多角化のひとつのあり方です。

2012/01/27(金)撮影に転進組はいま?

 写真業界とひと口に言っても業態は様々です。一般的には、フィルム・印画紙などの銀塩材料を主に扱う業種を指すようです。ということは、写真業界はほぼ崩壊したと言っても過言ではないでしょう。

 昔は、カメラ店が DPE の受付窓口になり、総合ラボに現像処理を委託していました。メーカー系列の現像所が全国を網羅していきます。1970 年代はラボ全盛時代でした。
 そのうちミニラボ機が登場し、自家処理するカメラ店が現われます。それまで3割程度だった取次マージンが、一気に増大しました。銀塩写真が生む利潤は、総合ラボからミニラボへと移動していきます。

 利益率の悪い物品販売に見切りをつけ、DP に特化する小売店が続出します。屋号の「○○カメラ」は名ばかりで、実態は DP 屋でした。儲かる分野に「選択と集中」をしたわけです。
 これがのちにアダとなります。デジタルカメラの登場です。

 DP 店の多くは、利益の根源がフィルム現像にあることを自覚していませんでした。数百万円の設備投資をしたプリンターのほうが、稼ぎ頭だと錯覚していたようです。デジタルプリントを集めるだけでは、経営を維持することが難しい状況になりました。
 物品販売はとうの昔に放棄しているし、再開しようとしたところで商材もルートも変わっています。唯一残された道は、撮影分野でした。

 いまでも営業を続けている写真店の多くは、撮影に力を入れているところです。こども写真館に変身してしまった店もあります。思い切って業態変更した店のほうが儲かっているみたいです。
 多くの写真店には、まだ店頭に銀塩式のプリンターが置いてあります。これがあるうちは、業態変更したとは言えないでしょうね。

2012/01/26(木)濡れ手に泡だった銀塩写真

 いまでも写真業界の人と会うたびに、業界衰退の話が出ます。「見るも無残」とか「惨憺たる状況」とか、ここ何年かズーッと暗い話ばかりです。どこかに花の咲くような明るい話はないものかしら・・・

 その一方で、写真がデジタル化されたことで、一儲けした人がいます。それまで現像・焼付手段を持たなかった撮影畑の人たちです。
 フィルム代や現像料がなくなったことで、コストが大幅に削減されました。プリントの内製化で、こちらもコストダウンです。子供写真館に転進したある写真屋の駐車場には、自家用の高級車が何台も停めてあったとか・・・

 片や DPE で食べていた写真屋で、いまでも元気なところはほとんどありません。どこも寂れた感じです。既に廃業してしまった店のほうが圧倒的に多い状況です。
 こうしてみると、写真のデジタル化で衰退傾向にあるのは、銀塩写真(とくに現像プロセス)に関わっていた分野であることがわかります。明治維新後の武士階級みたいなもんですね。
 ということは、さしずめコダックは徳川家ですか・・・

 アカデミー賞の授与式は、ブロードウェイにあるコダック・シアターが定番会場です。2001 年に完成し、翌年から毎年使われてきました。コダックは命名権を買っているだけですが、これも今後どうなるのか予断を許さない状況です。
 それにしても 7500 万ドルも出して命名権を買うなんて、まだ当時は羽振りが良かったんですね。

 人は一度でも濡れ手に泡でぼろ儲けをしてしまうと、そこからなかなか脱却できないのが世の常です。これから伸びるとわかっていても、儲けの薄いデジタル部門よりは、高収益の銀塩部門のほうが魅力的だったんでしょうね。
 最後は溶けてなくなるのに・・・ ひょっとすると、完全にはなくならないと思っていたのかも?
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