昔、呉服屋が一斉に宝石を扱い始めた時期がありました。斜陽になった和装の売上ダウンを何とかカバーしようとしたのでしょう。
着物と宝石は直接関係ないように感じますが、共通点もあります。掛率が似ていることです。
掛率のいい(原価比率の低い)商品を扱っていると、利益率の悪い商品やサービスは、どうでもよいような感覚になります。呉服屋にとって宝石は、本業と同じくらい儲かるおいしい商材でした。ただし、売れればの話です。
畑違いの商材をうまく取り入れられたところは少なかったみたいです。呉服業界と宝飾業界と・・・斜陽産業同士がコラボしたところで、活路は見出せなかったのでしょう。欲の皮一枚だけで商売はできません。
スタジオ設備の件で呉服屋の相談に乗ったときに、デジタル写真集の話になって、こんな意見が出ました。「写真は儲からない」と言うのです。着物の商売と比べて、金額が低いし掛率も悪いんだとか・・・
いったいどれだけ掛けているんでしょうね。折れて曲がるのは当たり前とは聞いていましたが、写真集よりも着物のほうが掛率がいいとは驚きです。
後で聞いた話では、スタジオ写真を事業に加えて正解だったそうです。一番よかったのは、日銭が入ることだと言ってました。
商品を仕入れてからお金に換わるまでに、着物の商売は時間が掛かります。撮影してすぐに現金回収できる写真の商売は、呉服屋にとって新鮮な驚きだったようです。
ある呉服問屋によれば、写真スタジオを構えた店は、支払がよくなる傾向だと言います。資金繰りにゆとりが出たんでしょうね。成人式の前撮りが始まると、週末になるたびにレジに 10 万、 20 万の現金が入ります。
掛率が似た宝飾品よりも、振袖のサービスとして始めた、儲からないはずの写真撮影が事業として定着しました。これも経営多角化のひとつのあり方です。