2012/12/04(火)集合写真とガイドナンバー

 フィルム時代の室内での集合写真には、大光量のフラッシュ光が必要でした。AC 100V のコンセントがあれば、スタジオにあるような大型ストロボが使えますが、電源がない場合は充電式の大光量ストロボを用意しないといけません。
 数十人の集合写真は中判カメラで撮りました。写真館はブローニーフィルムの 6x9 判が定番サイズです。135 換算で 35mm 相当のワイドレンズでも焦点距離が 90mm にもなります。かなり絞らないと、被写界深度から外れてピンボケになってしまいます。

 絞りを F11 まで絞ると、距離 8m でガイドナンバー 88 、10m なら G.N.110 ないといけません。グリップ式ストロボの最大が G.N.56(ISO 100)だったから、ISO 400 の高感度フィルムを使ってやっとです。(感度4倍で G.N.112)
 2灯焚けば理屈の上では1絞り稼げますが、周辺光量の不足をカバーするために広く照らせば絞りはほぼ同じです。集合写真の人工照明は厄介でした。

 デジタルカメラを使うようになって、ストロボの光量は少なくても済むようになりました。フォーマットサイズが小さいので、絞り込む必要がなくなったからです。APSC なら F4~5.6 、フルサイズでも F5.6 以上絞れば十分です。クリップオンストロボで集合写真が撮れるようになりました。光量が足りないときは、少し感度を上げてやるだけです。

 理屈の上では、ISO 6400 程度に上げれば、カメラに内臓のストロボでも集合写真が撮れそうです。実際にやったことはありませんが、ノイズや発光する位置の問題があって、きれいには写らないと思います。ストロボは、レンズよりもかなり高い位置から光らせないと、影の落ち方が不自然になります。
 それと、小型ストロボのガイドナンバーは、光の約半分が周囲の反射で戻ってくる前提で表示されているようです。すっぽ抜けの場所では、計算どおりの G.N. にはならないと考えたほうが無難です。

2012/12/03(月)フラッシュのガイドナンバー計算

 フラッシュバルブ(閃光電球)の時代から、適正露出を求めるのにガイドナンバー(G.N.)が使われてきました。絞りと距離を掛け合わせた数字です。例えば ISO 100 で G.N.20 なら、絞り F4 で 5m の位置が適正露出になる距離です。F2 なら 10m です。実際には露光不足でも理屈の上ではそうなります。

 その時代のストロボには自動調光機能はなく、G.N. の計算はつきものでした。フォーカルプレーンシャッターの場合は、同調速度に制約があるのも同じです。ただし、ストロボは光量が一定でしたが、フラッシュバルブは閃光時間が数十分の1秒と長いため、シャッター速度によってガイドナンバーが変わります。箱に換算表が印刷されていて、それを参考に計算していました。

 いまでも手元に残してある GN ニッコール 45mm F2.8 は、ガイドナンバーがセットできる変り種のレンズです。薄型のテッサータイプで、いまでいうパンケーキレンズのハシリです。G.N. の数字を選んでロックすると、ピントリングと絞りリングが連動して動く仕組みになっています。距離が遠ければ絞りが開き、距離が近ければ絞り込みます。
 この状態だと、もちろんピントリングは無限遠まで回りません。フラッシュ光の届く範囲しかピント合わせができないからです。オートストロボが開発される前としては、画期的な「自動露出」でした。

 そのうち自動調光式のオートストロボが登場します。被写体からの反射光をストロボ本体のセンサーが受け、適正露光になったところで発光を止めます。コンデンサーに残った電気を放電して捨ててしまうバイパス式です。
 残った電気を捨てずに利用するサイリスタ式が開発されると、近距離での撮影では連射が可能になりました。電池も長持ちします。この変化は早かったですね。

 自動調光方式のストロボが普及した時点で、ガイドナンバーは最大到達距離を示す数字でしかなくなりました。その範囲内であれば、あとの露光調整はストロボがやってくれます。
 現在では、ストロボの自動調光はカメラ側で制御しています。レンズを通った光で調光する TTL 式です。デジカメの高感度対応で、感度まで自動設定になると、ガイドナンバーの概念はなくなるかもしれません。

2012/12/02(日)フラッシュバルブの色温度

 フィルムの感度が低かった時代は、室内での撮影にはフラッシュバルブが使われました。マグネシウムを封入した球を電気的に発火させるフラッシュガンを使います。もっと昔はマグネシウムの粉をグリップのついた台に載せ、手動で点火していました。それに比べれば簡易で安全です。
 難点は一発数十円のコストが掛かることと、1コマごとに球を交換しなければならないことです。使った後、大量のゴミが出るのもやっかいでした。(ポケットが廃バルブでいっぱいに・・・)

 ASA 100(現在は ISO 100)が高感度と言われていた時代です。当時のストロボはまだ登場したばかりで、光量が小さく、本体価格も高めでした。なぜか、白黒フィルムとカラーフィルムで、ガイドナンバーが違っていました。カラーフィルムは1絞り開けないと発色が悪いからだとか・・・
 フラッシュガンは手ごろな値段で手に入りました。シャッター速度を遅くすることで大光量が得られるのがフラッシュバルブの特長です。

 ストロボはクセノン閃光管の放電で発光するので、太陽光とほぼ同じ色温度です。一方、フラッシュバルブはタングステン光に近い色温度でした。モノクロフィルムはいいとして、デーライトタイプのカラーフィルムは色温度変換が必要です。球にブルーコーティングしたカラー用が開発されましたが、ブルーコートのぶんガイドナンバーが小さくなります。
 カラーフィルムが普及するにつれて、フラッシュバルブの優位性は薄れました。ストロボの光量が大きくなり、本体価格が安くなったのも影響します。ストロボの普及でフラッシュバルブは使われなくなりました。

 その後、フラッシュバルブが残った分野は、ポラロイドカメラ用とポケットカメラ(110)用です。ポラは 10 連発のフリップフラッシュやフラッシュバー、110 は4連発のマジキューブを使います。この時代になると、フラッシュバルブはブルーコートのデーライトタイプだけになります。

 もうひとつ残ったのは、集合写真に使う大光量の閃光電球です。22 番と呼んでいました。白熱電球と同じ形をした大きなフラッシュバルブです。口金もエジソンベースでした。現在は製造を打ち切っていますが、最後に買い溜めしたところが多かったせいか、ネット通販などでまだ手に入るようです。
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