2008/05/28(水)ニコンの外注ブランド

 このブログで「ニコンは頭が硬い」と何度も指摘しましたが、事情通ならよくおわかりだと思います。

 「酸化セリウム」の先生のところにころがっていたNikomat ELは、往年のニコンファンには特別な意味のあるカメラです。
 自社生産が当然と思われていた精密加工業界で、ニコンが自社生産したカメラにはNikon、外注生産品にはNikomat(ニコマート)のブランドが使われていたことは、有名な話です。普及機のNikomatは、発売元がニコンというだけで外注品でした。

 この原則を撤廃したのがEL2からです。ペンタプリズムのヘッドには「Nikon」のブランドが刻まれていました。
 先生のNikomat ELは、初期モデルですね。電子部品の耐用年数からして、もう寿命のはずですが、まだ動いています。先生も「さすがニコンだ!」なんて感心してました。

 レンズは、Nikkor(ニッコール)ブランドが自社生産品です。外注品には、Nikon Lensといった別の名称がつけられています。「Nikon Lens シリーズE」なんてのもありましたね。Wズームキット用の廉価版レンズです。
 自動焦点・自動巻きのコンパクトカメラが全盛を迎えたころには、ニコンもピカイチの愛称で何機種か発売しました。日東光学が生産を担当していたと思います。オリンパスも日東光学でしたね。

 カメラにはNikonの文字が入ってましたが、レンズにはNikon Lensの刻印が打たれていました。日東光学といえば、コミナーのブランドで交換レンズを出していたこともある技術力のある下請メーカーです。
 ニコンの検査基準の厳しさからみて、信頼できる出来栄えだったと思います。

 こうしたレアな情報を知らないユーザーは、「自分はニコンのコンパクトカメラを持っている」という優越感に浸っていたと思います。他社よりもいくらか割高だったので、ブランド代を払って購入していたことになります。
 NikkorでもNikon Lensでも、よく写れば区別する必要はないと思いますが、ニコン製だと思い込んで高いお金を払ったとすると、ちょっとね・・・

 デジタルカメラは、家電製品と同じで、すべて自社で賄うことはできません。CCDがどこどこ製だなんてことを問題にしてたら、購入するカメラは限られます。
 外注品かどうかを区別する意味は、もうありませんね。

2008/05/27(火)ニコン神話

 戦後カメラ史でニコンブランドは特別な意味を持っています。

 もともと三菱系の精密工業の会社で、戦前は戦艦などの大砲の測距儀や双眼鏡を作っていました。カメラメーカーとしては無名に近い存在でしたが、朝鮮戦争で使われたニコンSシリーズの写真が、アメリカの報道誌に掲載され、その切れ味と描写力が注目されました。
 モノクロ全盛時代の話です。

 ニコンブランドは、レンズのブランド=ニッコール(Nikkor)が牽引役となって浸透していきます。一時は、現像タンクで有名なナイコールから類似ブランドだとクレームがついたこともあったようです。
 当時は、日本光学(にっぽんこうがく)という社名でした。

 日本は「にほん」か「にっぽん」か・・という論議がされた時代がありました。正式には「にっぽん」だ、ということに落ち着いたようですが、その当時、ニコンに電話して「ニホン光学さんですか?」というと、「いえ!ニッポン光学です!」という返事が返ってきたことを覚えています。
 頭の硬そうな会社です。

 社風も堅いメーカーですが、権威には弱い会社でしたね。
 手元にあるNikon F2は、結納返しで義父から贈られたカメラです。保証書には当時義父が勤めていた〇日新聞社の社名が肩書きに入っていました。修理に持っていくときには、期限切れでもさりげなく一緒に付けて出したものです。
 待遇が一般のひととは全然違いましたね。VIP待遇です。

 こういう話は、例の「酸化セリウム」の先生も言ってましたね。
 若いアシスタントにF3の修理を持たせたら、けんもほろろの扱いだったそうです。プロならではの微妙な調整だったので、そこまで面倒を見れない!といったことだったようです。頭にきて、知り合いの新聞社の部長に電話を入れてもらってから行ったら、平身低頭で対応がまったく違ったそうです。
 「できるんなら最初からちゃんとやれ!」と息巻いてましたね。

 企業は人なり・・というように、生身の人間がやることですから、奢りや間違いはつきものです。〇〇タックスみたいに、ちょっと売れたら「後ろにつっかい棒をしてあげようか」と言いたくなるメーカーに比べれば、ニコンの人たちは堅物ではあるけど真面目で紳士でしたね。
 つっかい棒が必要な彼のメーカーも、吸収合併でブランド名を残すのみです。

 ニコンがんばれ! キ〇○ンには負けないでね。

2008/05/26(月)ニコンFマウント

 酸化セリウムを入手した先生には、写真学校に行っている御曹司がいて、最近Canon EOS-1DからNikon D3に乗り換えたそうです。
 先生本人は、デジタルカメラには全く興味がないので、Nikon F4からレンズ一式まで取られてしまったことを嘆いてました。机の上には、「人質」のEOS-1Dが虚しく転がってましたね。

 D3と一緒に買ったニッコール14-24mm F2.8 EDズームは、かなりいいと言ってました。実勢価格で20万円以上しますからね。悪かったら泣きです。
 もちろんフィルムでも写りますが、手元のF4やNikomat ELでは使えません。絞りリングがないからです。「絞りリングがないのはいかん!」とかいって怒ってましたが、最近発売のニッコールには絞りリングはありませんね。

 ニコンはFマウントを変えずに進化してきました。スクリュー式のプラクチカマウントからバヨネット式のKマウントに変更したPENTAXや、MDマウントからαマウントに変えたMINOLTAのようなリスクを負わずにきました。
 FDマウントからEOSマウントに変えたCanonは、右見て左見て青信号が点滅中に渡ったので、うまいことやりましたね。要領がいいというか、したたかというか、悪運の強いメーカーです。

 マウント変更のリスクを負わなかった代わりに、ニコンのカメラとニッコールの間には、複雑な制約関係が残りました。はまるだけで使えない組み合わせがあります。
 レンズにメーターカプラーの爪がないと使えないボディーは、ずいぶん昔の機種ですが、Ai以降のレンズでも対応しないボディーが増えました。AFボディーとAFレンズで、使えない組み合わせがあるのには戸惑いますね。

 いっそのことマウントが変わって、はまらなければ割り切れるんですけどねぇ。それはワガママで贅沢な言い分ですかね。
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