2008/09/24(水)向上する近接能力
レンズのスペックを拡大するのは、技術の進歩とコスト軽減の努力が必須です。70-200mmよりも、きっちり3倍ズームの70-210mmのほうが、かなりのコスト高になります。望遠側でたった10mmの違いが、設計者に想像以上の負担を負わせる世界です。
大きくて重くて価格が高くてもよければ、理想のスペックに近づけることは可能です。人工衛星に1個載せるだけなら、市販品を越えるスペックのレンズを作る意味はありますが、量産モデルは売れなかったらアウトです。
コストを抑えながら性能を向上させるためには、ある程度の時間が必要です。光学製品は、家電品のようにコロコロとモデルチェンジできる商品ではありません。
以前このブログで、タムロン28-200mmの初期モデル(71A)が最短撮影距離2.1mだったことを話題にしました。200mmはともかく、28mmで最短2.1mというのは実に使い辛いスペックです。
メーカーは、別売だったプロクサーレンズを添付扱いにして凌ごうとしましたが、別付けするのはかなり面倒です。近距離撮影が多いスナップ撮影には使えません。
それが最新モデルのA031は、最短撮影距離0.49mです。ここへくるまでに10年以上の歳月を要しました。
わがままなユーザーの要求を満たそうと努力を続ける設計者に、感謝しないといけませんね。
2008/09/23(火)望遠の最短撮影距離
しかし、実際には望遠レンズで至近距離から撮ることがあります。
プライベートなポートレート写真だと、被写体との距離は自由です。至近距離から部分アップで撮ろうとしたらピントが合わない!では、ストレスが溜まります。
風景写真でも、被写体は遠景とは限りません。目の前の草花にピントを合わせて、背景をボカす撮り方もあります。
昔のオートニッコール200mm F4は、最短撮影距離が3mでした。ボーリングのピンみたいな格好をしたレンズです。
途中でマイナーチェンジして、最短撮影距離は2mに改良されました。この1mの差は大きいですね。買い直すだけの価値があるスペック変更でした。
デザインと大きさは同じですが、ヘリコイドの前が銀梨地になっているのが旧タイプ、黒色になっているのが新タイプです。
200mmの望遠を近距離で使うならマイクロの200mmがある・・というのは、現在の話です。当時は、そんなマニアックなレンズはありませんでした。
マクロレンズ(ニコンでは「マイクロ」)は、もともと文書の複写などに使われていました。50mmから60mmの標準マクロです。コピースタンドにつけて文書を複写するのに適した焦点距離です。収差の補整も1:10(240×360mm)を基準にしていたメーカーが多かったですね。(PENTAXは1:4でした)
望遠系のマクロが売れるようになったのは、ネイチャーフォトの流行と関係しているようです。当時の望遠レンズは、至近距離での撮影には不向きでした。
最近のレンズは最短撮影距離が短くなったり、マクロ機能がついていたりします。自然界の動植物を撮るのなら、きっちり収差補整されたマクロレンズである必要はありません。
2008/09/22(月)大事な最短撮影距離
手元のミノルタアポテレズームは、最短撮影距離が1.8mです。ときどき合焦範囲を超えることがあります。ソニーの70-200mm F2.8Gに買い換えれば、最短は1.2mだから問題は一気に解決します。
でも、税別33万円というのは、レンズの目方以上に重たいですね。α用のレンズは、いつからそんなに高くなったの?
タムロンから70-200mm F2.8[A001]のソニー用(αマウント)が9月20日に発売されたので、買えるとしたらこちらですね。税別で10万円以下だし・・・
使っている特殊低分散ガラスの枚数は少ないけど、高いガラスをバンバン使えばいいというものでもありません。手が届かない価格のものよりも、1/3以下で買えるレンズのほうが親近感があります。
ちなみにA001の最短撮影距離は、0.95mです。これなら、ほとんどストレスなしですね。
PENTAX 6x7の300mm F4は、最短撮影距離が5mでした。ベローズでは機動性がないし、仕方がないので別に中間リングを買うつもりでしたが、手に入れてすぐに欲しいひとが現れて、結局は手放してしまいました。
いくら野外の風景写真でも、最短が5mじゃあね。すぐ手前の草花にピントを合わせておいて、背景をボカすなんて芸当はできません。
最短撮影距離も立派な性能のうちのひとつです。レンズを選ぶときには、必ずチェックすることをお奨めします。