2008/05/22(木)超広角と超望遠

 カメラ店の御曹司で、たまにレンズメーカーの後援で写真教室の講師をやっていた先生がいます。若いころに著名な写真家の弟子をやってたそうです。篠○○信の頭はカツラだ!なんて話も聞きました。

 この先生、講演会でのいつもの口癖は、「初心者は超広角・超望遠を使いなさい!」です。一般的によく使われる普通の焦点距離のレンズでは、写真が上達しないという言い分です。
 なかなか過激ですね。

 巷の写真教室では、標準レンズから始めて、徐々に広角・望遠レンズの使い方を教えていきます。135フルサイズ換算で24mmから300mmくらいまでですかね。
 この先生の論法でいくと、24mmよりも広角で、300mmよりも望遠のレンズをいきなり使わないと、写真が上達しないことになります。この先生の周りに集まってくる人たちは、比較的若い世代が多いので、間違った教え方ではないと思います。定年後に写真を覚えようというひとには、ちょっと刺激が強すぎるけどね。

 写真の醍醐味は、人間の視覚を超えた表現にあります。超広角・超望遠レンズのパースペクティブ(遠近感)は、初めてファインダーをのぞいたひとに新鮮な印象を与えます。
 「こんな世界があったんだ・・」という感動が、写真を撮る意欲を掻きたてます。若い人の感性を刺激するには、極端に誇張された超広角・超望遠は、うってつけでしょうね。

 超広角レンズを使うなら、初めはその極端なパースペクティブを活かして、遠近感を誇張した作画を心がけます。超望遠は逆に、遠近感が圧縮された効果を狙います。人間の視覚に近い標準レンズでは得られない効果を楽しむわけです。

 当時、スポンサーのレンズメーカーが宣伝していたのは、28-200mmのズームレンズだったので、メーカーの担当者が同席しているときは、やりにくそうでした。「このレンズの両端を使いましょう」なんて言い方でごまかしてましたね。
 本心は、「このレンズからはみ出た焦点距離で撮りなさい!」と言いたかったようですが・・・

2008/05/21(水)ワイドでメタボ予防

 何の目的もなくフラっと外に遊びに出るときには、単焦点レンズのカメラを持っていくことをお薦めします。ズームしか持っていないひとは、ズームリングをテープで固定します。一番ワイド側がいいでしょうね。

 写真が撮れる焦点距離(画角)が決まっているので、自分が動いてフレーミングすることになります。この制約が写真上達の極意です。
 望遠レンズは、いいとこ取りの「切り抜きレンズ」なので、メタボ解消にはあまり貢献しません。ワイドレンズは、フットワークがモノをいうので、メタボ防止にうってつけのレンズです。

 ワイドレンズ1本だけで写真を撮る訓練を積んだひとは、レンズの極意に一歩近づくことができます。「パースペクティブ(遠近感)」の概念を手にすることができるからです。
 私も学生時代に24mmの単焦点レンズ(当時は「超広角」なんていってましたっけ)で修業を積んだ結果、24mmが「標準レンズ」みたいになりました。

 もちろん、24mmと標準の50mmでは、長さで2倍、面積で4倍の違いがあります。初めのうちは、遠近感の誇張やディストーション(歪み)の面白さを誇張する作画に没頭していましたが、目が慣れてくると24mmで自然な描写ができるようになりました。
 広い範囲が写っているだけで、遠近感やディストーションは、標準レンズで撮ったみたいな表現ができるようになります。不思議ですね。

 広角レンズの描写には、「近いものはより近く、遠いものはより遠く…」という性質があります。要するに、遠近感が誇張されるわけです。
 ワイドレンズを使い慣れてくると、この「近い」と「遠い」の境を見切ることができるようになります。この狭間で作画すると、まるで標準レンズで撮影したかのような写真になります。28mmでも24mmでも、50mmの標準レンズで撮った世界が表現できるわけです。
 不思議なことに、写っている範囲は、標準レンズよりもかなり広いのにね。

 人の感性は、理屈や数字では割り切れません。ワイドレンズで練習するときは、初めは特性を生かした過激な使い方をするよう、お薦めします。遠近感を誇張する…すなわちディフォルメです。
 少し使い慣れてきたら、自然な描写を心がけます。35mmならすぐに慣れるはずです。28mmくらいで練習するのがいいでしょう。普通はせいぜい24mmまで、ですかね。20mmまでいったら大したもんです。

 なにせ超ワイドレンズは、暴れん坊のジャジャ馬ですからね。

2008/05/20(火)ズームレンズはメタボ

 ズームレンズ全盛の便利な時代に、あえて単焦点レンズ1本だけで撮影する提案です。単焦点レンズを持っていないひとは、ズームリングをテープで止めて固定して使います。

 なぜこんな提案をするかというと、ズームレンズはメタボ予備軍のレンズだからです。メタボ?? 何故メタボリックなのかというと、自分が動こうとせずに、ズーミングして画角を決めているひとが多いからです。
 単焦点レンズが主流の時代は、レンズを交換するか、それとも自分が動くかを考えてから写真を撮りました。ズームの普及で、人間ずいぶんズボラになりましたね。

 広場に車が1台停まってる場面を想像してみてください。レンズは28-100mmのズームレンズです。
 車が画面のちょうど半分になるように撮影します。まず28mmで撮影してみます。周りの風景も一緒に写っているはずです。
 次に50mmで撮影します。車がちょうど半分になるところまでさがります。さらにもっとさがって、100mmでも撮影します。背景が狭くなりボケて写っているはずです。

 28mm(広角)、50mm(標準)、100mm(望遠)と、焦点距離を変えて撮影した3枚の写真を並べて比べてみると、写っている車の大きさは同じですが、違いがよくわかります。
 最も大きく異なるのは、背景の描写です。そのほかにも、よく見ると車の形も違います。大きさは同じように画面の1/2なのにね。同じ被写体でも、撮影距離とレンズの焦点距離が変わることで、まったく別の写真になるわけです。

 この変化の楽しみをズームリングを回すことで放棄していたとは・・・ メタボリックの予防は、健康管理の問題だけではないようですね。
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