2012/09/21(金)ミラーレス機と一眼レフの互換性

 光学式ファインダーをやめて EVF に一本化したソニーは、一眼レフの APSC とフルサイズの問題をうまくクリアしました。APSC 専用レンズを装着たときでも、ファインダー画面いっぱいに 135 換算の画角で表示できます。ユーザーはどちらのフォーマット用か気にすることなく、レンズ交換できるわけです。違いが出るのは画角ではなく記録される画素数です。
 APSC とフルサイズの関係はクリアしても、マウントの問題が残っています。A マウントと E マウントの互換性です。この点についてはキヤノンの EOS M はうまくクリアしました。

 素人考えでは、マウント規格がすべてわかっている同じメーカーの純正マウントアダプターであれば、互換性が確保されていて当然のように思います。でも実際にはそう簡単ではないようです。フォーマットサイズが違うだけでなく、コントラスト AF に対応していないとか、いろんな問題があるようです。
 いまソニーが抱えている問題は、E マウントのフルサイズ対応です。EOS M と同じ APSC フォーマットであれば、半透過ミラー採用の LA-EA2 で十分でした。フルサイズとなると一筋縄ではいきません。どうやって乗り切るか見ものです。

 それを解決する手段が、像面位相差 AF です。撮像センサー側で、コントラスト AF だけでなく位相差 AF もこなす技術です。これが実用化すれば、半透過ミラー(TLM =トランスルーセントミラー)は不要になります。
 カメラ愛好家は神経質な人が多いせいか、TLM の光量ロスとか、撮像センサーに AF 検出機能を組み込む弊害とか、ことさら気にする声を耳にします。それが許し難い欠点であるかのような論調も目にします。もし写真に与える影響が決定的であれば、その言い分の正当性はわかりますが、実際には問題になるほどの影響はないと思います。写真は理屈じゃありません。出てきた画で判断すべきでしょう。

 EVF の普及で光学式のファインダーが不要になり、位相差 AF のための TLM も不要になると、ミラー式の「一眼レフ」というジャンルはなくなるかもしれません。一部のプロユースでは光学式ファインダーは残るでしょうが、おそらく、一般消費者向けの民生機は姿を消すと予測します。ここでもフルサイズ一眼レフで普及機というのは、成立しないと思います。

2012/09/20(木)APSCとフルサイズの互換性

 フルサイズのデジタル一眼レフが増えてきて、いままで普及してきた APSC 機との互換性が混沌としてきました。単に「大は小を兼ねる」ではなく、逆のケースがあるからです。
 問題は、フルサイズに対応していない APSC 専用レンズにあります。APSC 機はどちらのレンズでも使え、フルサイズ機は APSC 用のレンズが使えない、というのが常識です。小が大を兼ねる、逆転した関係です。

 ニコン D800/E はクロップという方法で、どちらのレンズでも使えるようにしています。APSC 専用レンズを装着すると自動的に 135 換算の画角になるよう、撮像素子の中央部分を APSC サイズとして扱います。3600 万画素という高画素がそれを可能にしました。
 ニコンはフルサイズ機(FX)でも APSC 機(DX)用のレンズが装着できます。画面の周辺が写らない(あるいは使い物にならない)ということを知ったうえで、使う使わないの判断はユーザーに任せる形をとってきました。光学式ファインダーでは、画面の周辺がケラレたり暗くなったりしますが、真ん中は見たとおりちゃんと写ります。

 一方キヤノンは、APSC 専用の EF-S レンズをフルサイズ機には装着できないようにしています。ある意味では正当な選択であり、ユーザーに親切な方式とも言えますが、APSC 機のユーザーをフルサイズに誘導するのには不利に働きます。
 まさかこんなに早くフルサイズ化の時代がやってくるとは思わなかったのかもしれません。同じマウントで違うフォーマットサイズを兼用したツケが、いま回ってきた感じです。
 APSC のミラーレス機 EOS M は、マウントアダプターでどちらのレンズでも装着できます。フルサイズ化より先に、こちらを売り込む戦略が得策だと思いますが、ミラーレス機には及び腰の感じを受けます。

 デジタル時代になってから一眼レフを購入した人は、ほとんどが APSC フォーマットで、フルサイズは少数派です。EOS 5D や Nikon D700 が登場してからは、アマチュアにもフルサイズ機が使われるようになりましたが、ほんの一握りの人たちです。フルサイズを諦め、APSC で行くと心に決めた人が多いのではないでしょうか?
 これまでに購入した交換レンズは APSC 専用が多いはずです。フルサイズ対応のレンズは大きくて価格も高めだからです。こうしたユーザーをフルサイズの一眼レフに誘導できるかどうかは、現時点では微妙だと思います。

2012/09/19(水)フルサイズでもうひと稼ぎ

 2年に一度ドイツ・ケルンで開かれるフォトキナが、昨日開幕しました。フルサイズの普及機が登場すると鳴り物入りで騒いでた割には、実売価格は高止まりの雰囲気で期待外れでした。ボディーだけで 20 万円前後するカメラを普及機とは言わないと思いますが・・・
 いままで高値の花だったフルサイズの高級イメージをもうしばらく引っ張りたいメーカーの気持ちはよくわかります。普及機と言わずにミドルレンジくらいにアナウンスしておいたほうが、消費者の落胆が少なかったのでは?

 個人的には、フルサイズ一眼レフの普及機は、ビジネスとして成功しないと踏んでいます。ミラーレスのフルサイズ機で 10 万円を切る機種が出たら、そちらに流れる可能性が高いからです。
 低価格のフルサイズ機を求めるユーザーは、手持ちのレンズ資産を活かしたいのが本音です。フィルム時代のオールドレンズは、カメラ側の AF ではピントが正確に合わないことがあります。安物の光学式ファインダーよりもライブビューでピント合わせができる EVF やモニターのほうが実用的です。

 フィルム時代は、フォーマットサイズが大きいほど高画質とされてきました。粒状性や解像感は原板の面積が大きいほど有利です。135 サイズが汎用フィルムとして定着したのは、これが最低の妥協点だったからでしょう。カメラシステムのサイズやコストなども考えると、ちょうどいい落しどころでした。
 業務用途や趣味の風景写真には、もっと大きなサイズが使われました。ブローニーフィルムは、送り幅によって 135 フルサイズの3倍から6倍の面積が得られます。それでも足りない場合はシノゴを使えば 15 倍です。高画質が低コストで手に入るのが銀塩式の利点です。

 デジタル式で 135 フィルムと同程度の画像を得るのに、フルサイズの撮像センサーまでは必要ないでしょう。もっと小さなフォーマットで可能です。APSC よりも小さい 4/3 インチで十分、という人もいます。
 高画素化でフルサイズセンサーは、中判フィルムの領域までカバーする規格として注目されるようになりました。フィルム時代の 135SLR と同じ感覚で普及機を想定するのは、間違いの元かもしれません。
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